11.ナス。それは至高の野菜。
茄子を食っていたら書きたくなった。別に悪気はない。
私はエルフ村についてしばらく滞在していた。そして貧乳達に囲まれて部分的には優越感に浸っていた。この村でなら私は巨乳といっていいのだ。いいのだがすこぶる居心地が悪い。食事は問題ないですよ。新鮮なバターがあるから味付けはそれなり。ホワイトソースも作れる。あとエルフはご多分に漏れず魔法が使えるので色々技術が進歩していてイノシシ肉や鹿肉の燻製などまであった。
私はアイテムボックスがあるから保存は問題ないけど、熟成とか燻製とか時間をかけることには向いていないのだ。闇魔法で熟成を促進する事はできるのだがあくまで促進でその場にいなければいけない。10倍の速度で促進できたとしても10年もののワインを作るのに1年かかる。その点時間の感覚が人間と異なるエルフはそういうことに向いている。歓待してもらうのに平気で50年もののワインとか出てきた。温度管理なんかも魔法でできるのでエルフの酒は世界でも高級品とされているのだ。パン用の酵母なんかも売ってもらった。本当に助かる。一日一日新たな発見があるのでしばらく滞在したい。
しかしこの村は全員エルフである。すなわち男女ともに顔面偏差値がやたらと高い。そういう連中に囲まれて過ごしていると自分は珍獣になった気分になる。モー子さんにそのへんのことをどう思うか聞いてみたところ、全く美に対する価値基準が異なるのであまり気にならないとのこと。ドワーフがエルフに欲情したりしないような感覚らしい。人間というのは良くも悪くも多種族とよく交わるがこういう弊害があるとは盲点だった。
とりあえず村にいる間にやっておくことはまず王様とのアポ取り。森の国、エルフの王様はハイエルフらしい。エルフやエルフの紹介なら割と気軽に会えるそうだけどあくまで他の国と比べてということ。最低限の連絡は必要なので先触れを出して了解を貰う必要がある。留守でも困るしね。
村から王宮まではエルフの足で一週間ほど。普通の人間なら倍はかかるという。なので2週間待機。王宮の近くの街で待機してもいいんだけど、急ぐ旅でもないしね。燻製小屋とかも場所によっては管理が厳しいらしいし、国外との交流も多く割と気さくな国境近くの第一エルフ村のほうが現場学習には都合がいいのだ。
第一発見エルフはすっかり私担当を自認している。彼女のきのこ欲は相当のものがあるらしい。なので彼女のことはエノコと読んでいる。貧乳だけど周りみんなそうだからね。山田村で山田さんを呼んだら10人中8人が山田さんで困ったようなことになるのと同じ。貧乳エルフでは差別化が出来ないのだ。なのでエルフときのこをあわせてエノコになった。
で、最近はエノコとモー子さんとでシチューやグラタンを作っている。バターもあるしベーコンとか茸もあるからね。これはこれで美味しいのだが食べていると角煮とか生姜焼きとかが食べたくなる。やはり醤油の開発を急がなければならない。そのためには大豆だ。ということで待っている間に大豆の耕作地の拡大をお願いした。ちなみに生姜は水の国で確保してある。
生姜と醤油で思い出した至高の野菜ナス。待っている間に村で発見した。夏からtを抜くとナスになる。夏野菜の代表格。スーパーにいけば一年中買えるがやはり新鮮な旬のナスは別格。旬のナスは焼いておろし生姜と醤油だけで至高。その上麻婆茄子、味噌炒め、天ぷらetc。夏といえばナスなのである。
同じ夏野菜であるキュウリなどほぼ水分。野菜としての格が違うのだよ。でもってうまく食べるために必要なのがやはり醤油と味噌。キュウリ用にマヨネーズは割と直ぐにできるが味噌と醤油はそうは行かない。長命種のくせにナスの味噌炒めも食ったことないとか寿命の無駄遣いだろ。なんという無駄な人生。いやエルフ生。ろくに栽培もせず塩もみくらいでしか食ってないとかアホとしか言いようがない。
「この世界のエルフって本当に馬鹿じゃないの?」
思わずそんなことをつぶやいたら、エノコを含めて周辺のエルフに囲まれた。
「聖女だかなんだか知らないが、人間風情がエルフの村でエルフを馬鹿にするとはよくぞ言ったものだ。無事に帰れると思うなよ。」
仕方ないので天ぷらを作って振る舞ってやった。醤油がないので天つゆは作れない。仕方ないので塩をそえて出してやった所全員が土下座した。
「うまいナスの食い方も知らずに長生きするとかただの苦行でしょ。愚かにもほどがありますよね。」
そう言ってこの村で堂々2位の巨乳を張って言うと第1位のモー子さんも同意した。
「確かに加熱すると甘みがましてしかも油との相性が抜群ですぅ。これを知らずに生きているとか愚の骨頂も良いところですぅ。」
「ナスと油の相性は抜群。ここに味噌や醤油が加われば更にドン。麻婆茄子ドン。それを知らずに生きているとか意味がわからないよ。」
「本当に申し訳ありませんでした。我々はナスを甘く見て、いいえ、妙に癖のある微妙な野菜としか思っておりませんでした。自らの不明を恥じるのみです。」
この程度で不明を恥じるとか更にわからせてやらねばなるまい。
ということで滞在期間を延期。味噌の発酵期間は10ヶ月から1年程度。闇魔法で10倍の速度で発酵しても1ヶ月はかかる。たまり醤油も1年程度。とりあえず1月半の滞在で実験してみるとなんとかそれなりの形になった。ここからはさらに研究を進めてもらって美味しさに磨きをかけてもらいたい。
私が見ていれば発酵も進むがそれだと私はこれにつきっきりとなってしまう。とりあえずエルフの王宮で権利を確保したらエルフ村で作らせて一部を搾取もとい特許料として現物で納品させる予定だ。
ついでにイノシシ肉で角煮とチャーシューを作って塩と味噌と醤油でラーメンを作ってエルフ共に食わせてやっった。そして焼肉のタレ。玉葱に薩摩芋、椎茸そしてやっぱりナス。にんにくと生姜をおろしたものに焼肉のタレ。それで鉄板焼きをやって振る舞った。
結果私は聖女から神に昇格することになった。今では王族であるハイエルフより尊敬されている。
「ハイエルフが聖女様の味噌・醤油の製造方法、また椎茸栽培の特許を認めないならば我々はエルフ王国から独立します。なんなら聖女様の側仕えになります。お気軽に下僕と呼んでくれて構いません。」
そんなことをエノコが言っている。彼女だけでなくこの村のエルフの総意らしい。
まあ一度知ってしまったレベルの違う食品に魅了されたらそうなるか。長命種だけに食事の回数も多いしね。椎茸でのだしの取り方とかも教えたしいまさら椎茸の栽培法は秘密ですということも出来ないだろう。それが多少の金銭や労力の支払いで手に入るのであれば殴ってでも手に入れたいのも当然。今更もとの生活には戻れない。
そういうことでエノコが交渉役になりエルフの王都に向かうことになったのだった。
ちなみに私はナスの味噌汁はそれほど好きじゃない。やはりナスは炒めものが基本よね。それと麻婆茄子を作ったことでついでに豆腐を作成、麻婆豆腐も作ってやった。大豆は偉大だ。
作者の一番好きな野菜はナスです。
次点で大根かな?




