14
ケンジのギルドをあっさりと倒した俺たち、金をかっぱらいにきびタウンを旅立った。
そして4日を馬車で過ごし、ついに魔王城へとたどり着いたのであった。
魔王城。周りの土地は荒れ果てており、生物が生存できるような環境ではない。
草木は枯れ果てて、莫大な敷地。周辺には、マグマが顔を見せているせいか、妙に温度が高い。
そびえ立つ魔王城の前には、道も橋もなく、断崖絶壁だ。
一歩下を覗くと、紅の大地、下に落ちてしまうと、生きては帰れないだろう。
マリオのクッパ城も、リアルになるとこんな感じだろうか。
そんなことを思いながら、アメリア達と魔王城への行き方を考えていた。
「空を飛べるのは私だけですか…… そうだ! 馬車を私が持ち上げながら城まで行きましょう」
アメリアが提案をする。しかし、いくらアメリアが力持ちでも、そんなことはさせたくないなあ……
「アメリア↑、テレポートあるから別にいいのよ? 先にタスク↑を送り出してから様子を見るってのはどうよ?」
「俺はモルモットじゃねえんだぞ」
といいつつも、俺はウォーキング・ザ・シュライン(寺の模型)を着た。
「そういうところ↓、潔くて何よりだわ」
「危険なところに、女の子二人を先に行かせるのは男としてはな…… それよりも早く来いよ」
いくら物理攻撃が食らわないとはいえ、単独で突入するのも怖いなあ……
ユウが地面に魔方陣を書いていく。
「はい↓、ここの上に立って息を止めて」
言われるがままに魔方陣の上に乗り、息を止めた。
ユウは続ける。
「意識を魔王城の入り口↑に」
正面の魔王城を見つめる。
すると意識が加速していく。
「テレ↑ポォオオオオオット!!!」
ユウの独自の訛りとネイティブな訛りにより、必殺技を打っているような感じだ。
もちろんそんな必殺技は、この世界にはどこにもありませんけどね。
気づくと魔王城の前にいた。
「うおお、魔王城でけええええええ!!」
凄まじい存在感を放ち、目の前に立つ魔王城。夢の国のお城の5倍ぐらいの大きさだ。
城ではあるが、ところどころ禍々しいオーラが漂っている。
「よいしょっと、これはおっきいですね」
アメリアとユウが来た。
「これ↑は、でかい」
目の前には石垣の大きな扉があり、相当な力が必要だ。
「じゃあ扉壊しますね!」
アメリアが拳を撫でながら言う。
「おし↓、ばっこり頼むよ」
バコーン! と大型トラック同士が衝突したような音が響いた。
アメリアの打擲で石の扉は壊れ、3人は魔王城の中へと入っていった。
中は以外にも綺麗で、外国にありそうなお城の中って感じだ。
正面には階段があり、周りには廊下へ続く仕切りが沢山あった。
「アメリア様、久方ぶりです」
こちらの登場を待っていたように、階段の一番上で、一人の男性が階段に腰を掛けていた。
顔はこちらを見るやいなや、にやけている。右手に等身サイズの黒の十字架を肩にかけている。
服は白のスーツのようなものを着ており、外見から騎士ではないのかと思ってしまうほどだ。
「誰だ!?」
魔王城、最初の敵か。この容姿を見て、相手は魔王直属の四天王と言ったところだろうか。
「四天王直属…… いや今は、マイ様に与えられた、堕四星と呼ぶべきでしょう。
堕四星、二番星。アルル・マルセイユ35歳。ちなみに彼女はいない童貞です」
すっと右手の人差し指を、口に当てながら言う。
妙にカッコつけているところが似合っており、とりあえず腹がたった。
堕四星…… なんだその中二臭い位は……
とりあえず四天王ということは当たりらしい。だがその風貌で童貞っていうのがちょっとおかしい。
「アルル…… 本当にアルルなのですか? なんと言うか…… 変わりましたね」
「ウチ↓、チャラ男とかマジ↑で無理」
「お前ケンジのこと好きだったじゃん、あれって普通にチャr」
おっと、顔の前を凄まじい勢いで拳が飛んできたぞ。
「アメリア様、前の私よりも、強くなった私を見てほしい。私と決闘をしましょう」
このニヤけヅラ…… 腹立つわあ……
「いいでしょう…… あなたを倒さない限り、魔王の元へはたどり着けないようですし。その決闘を受諾します」
かつてアメリアの部下であった相手……
アメリアは腰からエクスカリバーを抜いた。
「アメリア…… できればでいい、無理はしないでくれ」
仕草については腹が立つが、間違いなく今までとは違い、相当に強い相手だと、ピシピシと伝わってくる。
「佑、これは私がどうしても倒さなければならない相手なのです…… 私とサシでやらせてください」
アメリアから決意をしたような表情を感じ取れる。
これは無理をしてでも倒さなければならない相手なのだろう……
「わかった、絶対に勝ってくれ、そして魔王を倒そう」
アメリアの性格上、何を言っても無駄とは分かっていた。
「はい!」
澄み渡った笑顔で答える彼女。
アメリア…… 頑張ってくれ。
「ではいきましょう! アルル!」
「「勝負!!」」
初動、アルルという男は燕のごとく、凄まじい脚力で上空へ飛んだ。
上空で十字架を上に構え、落下のエネルギーと彼本来の力で、アメリアに等身大の十字架を叩きつける。
アメリアはそれを避けもせず、エクスカリバーで迎え打った。
アメリアの立っていた床は、衝撃に耐えきれず壊れていく。
「強くなりましたね…… アルル」
凄まじい一撃によろけもせず、アメリアは間合を開けるため、アルルに蹴りを入れる。
「あなたこそ…… 僕の一撃を耐えるだなんて、流石はアメリア様だ」
アルルは体制を立て直す。
彼女の部下だったためか、尊敬の眼差しでアメリアを見ている。
「何このヤムチャ視点、ドラゴンボールじゃないんだぞ」
「確か↓に、何言ってんのか↑わからないけど、同じ感覚だわ」
今までとは違い、全く別次元の戦闘が繰り広げていた。
「これはどうでしょうか?」
アルルが腰を下ろし、両手を地面につけ、今にでも突進しそうな格好をとった。
瞬間、凄まじいパワーで地面を蹴る。地面に足を着ける度にアルルは加速していく。
アメリアの懐までくると、凄まじい速さで十字架を振った。
「くっ!」
反応が遅れてしまったのか、情態を後ろに倒し、間一髪で避けるアメリア。
バック転をして、体制を立て直した。
わずかに掠っていたのか、へその上から服が切れている。
「はぁっ!」
今度はアメリアが切りかかった。
体の横から振り切られるエクスカリバー。
振ると大きな風が吹き荒れるほど、力は強い。アルルはそれを十字架で身を塞いだ。
威力が凄まじいのか、アルルは攻撃を受けた15メートルぐらい離れたところにいる。
地面にはアルルの衝撃痕があり、どれほど攻撃が凄まじかったかわかる。
「流石の威力…… ではこれはどうでしょうか?」
一瞬にして、アルルがアメリアに近づく。十字架をふりかかった。
一撃、二撃、三撃。凄まじい速さでアメリアに攻撃を仕掛ける。
アメリアは全ての攻撃を防ぐ。アメリアの右手首、左腕、肩。すばめのような剣撃に掠り傷が増えていく。
アメリアは現状を打破すべく、右腕を狙う攻撃に、カウンターを仕掛けた。
上手く決まったのか、アルルが吹っ飛んだ。
しかし致命傷には至らず、十字架にカウンターの後のような砂煙。
「このままだと埒が明きませんね」
苦笑気味にアメリアが言う。
「僕とアメリア様は、同じパワータイプですからね」
アルルは笑みを漏らす。アメリアと戦えて本当に嬉しいらしい。
「抜き打ちといきましょう」
「同じことを考えていました」
アメリアとアルルはお互いの武器をしまい構える。
一気に決着を決めるらしい。
お互いから隠しもしない殺気が溢れ出る。
「ッはあっ!!」
「うおおお!!」
同時にお互いが動き出した。
その瞬間、凄まじい爆風が両者から噴き出した。
「ぐはっ! さ、流石はアメリア様……」
アルルの右肩から左の脇腹にかけて切られた跡があった。
十字架を投げ、アルルは仰向けに倒れる。
俺の気づかないうちに決着がついていた。
「そこの佑と言ったな…… どうかアメリア様を幸せにしてあげてくれ」
アルルは俺にそう言い終わると、口から血を吐いた。
それから満足そうな笑みを浮かべている。
「アルル……」
アメリアは彼の横で腰を下ろした。
アルルはアメリアの顔を見るとこう言った。
「私は戦うアメリア様が大好きでした…… でも今は別のもの、いや人ができたのでしょう……
私は生まれ持っての特異体質。所詮は戦うしかできなかった人生。
そんな私のわがままに付き合わせてもらいありがとうございます…… 彼と幸せに」
彼の体が結晶となっていく……
やがて彼は、散り散りに大気中へと帰っていった。
消える瞬間まで見ていたアメリア。
下を向き、両手を握りしめ、立ち上がった。
「では佑、魔王を倒しに行きましょう」
決意を改めたように、彼女の表情は澄み渡っていた。
「おう!」
「おっけい↓1」




