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疑惑の目

────俺は洞窟を進んでいた。

階段を降り、岩の裂け目を抜ける。


 若造があのゴブリン女やゴブリンどもと残った場所。

ここには戦闘の傷跡が至るところに残ってる。


「…………」


 俺は背負っていた相棒を構えた。

全力で振り抜くと共に引き金を絞る。


 前回来た時と違って爆炎を気にする必要もない。

紅蓮(ぐれん)の炎を盛大に燃やして俺の相棒(つるぎ)(うな)りを上げる。


 俺の一撃が壁を削った。

深さは50センチ程度、長さ1メートル強の斬擊痕(ざんげきこん)が残る。


「比較にもならねぇか。そりゃそうだよな」


 床から壁、そして天井まで。

まるで巨大な斬擊そのものが意思を持って這い回ったかのような亀裂を見て呟いた。

深さも規模も俺の全力と比較して桁違い。

そして似たような戦闘の爪痕がそこかしこに点在してやがる。


 この中を若造は生き延び、時間を稼いで無事逃げおおせた。


「できるか? んなことが」


 少なくとも俺には無理だろう。


「そもそもこの傷をつけたのはなんだ?」


 ブルー・ゴブリンはもちろん、あの女ゴブリンがつけたものとも思えない。

何かがいた。

現れたはずだ。

俺達がいなくなったあとに、とてつもない力を持った何かが。


 さらに疑問なのがあのゴブリン女。

あのゴブリン女は魔物が人間に化けていたとギルドに報告が上がってるが、あれはどう考えても逆だ。

人間がゴブリンになっていた。


 若造は何か隠してる。

俺はその証拠を集めて回ってた。

最初から何か普通じゃない、そう思って近づいたが……。


「あいつが街に来たその日に巨大なウルフ種の襲来。あいつが受けたギルド試験でドラゴンが全く新種の魔物に変化。そして今回のゴブリン女だ」


 改めて口に出すと怪しいことこの上ない。


 俺の相棒に魔物の素材が使われてるのを見抜いた理屈も不明だしな。


 武器と言えばあいつの剣の意匠(いしょう)が気になって調べた結果、あいつが聖騎士団に所属していた事まで調べはついた。

だがきな臭いのは公的な資料であいつの情報がほとんど残されてないことだ。

しかも団を追放されたのは1度じゃない。

最初の追放はすぐに前団長サマのじいさんが取り消していた。

そしてまた今の団長サマに代わって最初の大規模混戦のあと、即座に騎士団を追放されている。


 俺はにやりと口角を吊り上げて言う。


「どんなに隠そうとも必ず尻尾を掴んでやる」







「ハティ! 尻尾、尻尾出てる!」


「へ?」


 ハティが肩越しに自分のお尻を見た。

パーカーの裾から尻尾の先が覗いて、歩く度に左右に揺れている。


「気を付けろよ。見られて正体がバレたら困るんだぞ」


「だいじょーぶよ、だいじょーぶ。気にするやつなんていないわよ」


 文句を言いながらも尻尾をしまってくれるハティ。

だけどこんな様子ではいずれフランやアイゼンさんにバレてしまう。


 俺に秘密があるかもと疑ってるみたいだし、アイゼンさんの前では特に注意しないとな。

あとはフランがうっかり騎士団の事とか言わないでくれるといいんだけど。

今のところ俺が元聖騎士だってことも、王国騎士を目指していることやその理由も教えてない。


 俺は街の門をくぐり、広野に出た。

ここから半日歩いて依頼のあった森に向かう。


 クエストは霊薬の採集。

魔物の多い森の奥に自生する花を摘んでくるのが今回の依頼だ。


 アイゼンさんが出掛けてるからB+までの任務しか受けられなくて、得られる実績とハティの腹具合を考慮してこのクエストを選んだ。


 そこなら魔物もいるし、人目にもつかない。

ハティの食事にちょうどいい。


「食事と言えば」


 スコルは何を食べてるんだろ。

ハティのように魔物や闇を食べてる感じはしない。

そもそもお腹の空くハティのが特殊で、魔物であるスコルは食事を必要としないのかも知れないけど。


 歩いていると徐々に周囲が緑に覆われ、次第に木々もまぼらに増えてきて。

そしてようやく森の入口へとたどり着いた。

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