ゴブリンの勇者
『アハハ! ズイブント貧相ナ、ゴブリンダワ!』
マザー・ゴブリンが俺の生んだ魔物を見て嘲笑った。
誇らしげに自分の生み出したゴブリンキングを示す。
『魔物ヲ生ム力ハ、私ノ方ガ上ノヨウネ。サァ矮小ナゴブリン共々、アノ男ヲ叩キ潰セ!』
マザー・ゴブリンの指示を受けてゴブリンキングが動いた。
その手に握る、絢爛な王笏と人骨を思わせる戦斧が融合した武器を振り下ろす。
その一撃は岩の地面から壁、天井までを斬り裂いた。
走り抜けた衝撃が遅れて突風を巻き起こす。
ゴブリン・ロードナイトはひらりと跳んでその一撃を回避。
同時に地面に転がっていた鉈を拾い上げ、ゴブリンキングへと斬りかかった。
だが錆びついた鉈なんかではゴブリンキングにダメージは与えられない。
甲高い音を上げて弾かれる。
ゴブリンキングはロードナイトへと追撃。
周りなんて関係ない。
他のゴブリンも巻き込む軌道で斬撃を放つ。
ロードナイトは肩越しに背後を横目見て。
恐れに震えるブルー・ゴブリン達の姿を確認すると、その身体でゴブリンキングの斬撃を受け止めた。
構えた鉈は粉々に消し飛び、身に纏う鎧と兜には深い亀裂。
ボタボタと滴り落ちる紫色の血潮。
ブルー・ゴブリン達を庇って深傷を負い、ロードナイトは片膝を着く。
『私ノ勝チネ!』
マザー・ゴブリンが叫んだ。
勝ち誇ったように俺を見る。
「まだだ」
ゴブリン・ロードナイトはまだ負けていない。
傷は負ったが、その能力を発動する条件を満たした。
『チョウドイイ。コノママ一緒ニ雑魚モ殺シテ素材ニシマショウ』
マザー・ゴブリンが言うと、再びキングゴブリンが戦斧を振りかぶった。
ロードナイトもろともブルー・ゴブリン達も殺すつもりだ。
だけどゴブリン・ロードナイトはそれを許さない。
ブルー・ゴブリン達を背に立ち上がった。
同時に受けた傷が、塞がっていく。
鎧と兜が修復され、全てのダメージが消えていく。
再び襲いくるゴブリンキングの超重な一撃。
ロードナイトは再びそれを受け止める。
しかも先ほどよりもダメージは少ない。
鎧と兜は大きく砕けたが、本体へのダメージはわずか。
そしてその傷も塞がる。
『────』
兜の下から蒸気のような息を吐いて。
ゴブリン・ロードナイトは手斧と鉈を拾い上げた。
ロードナイトの身体から闇が立ち上ぼり、両手に握る武器から錆と腐食が剥がれ落ちる。
『ナニヲヤッテルノ! 早クソイツヲ殺シナサイ!』
マザー・ゴブリンが苛立たしげに叫んだ。
その視線の先でロードナイトがゴブリンキングへと向かっていく。
ゴブリンキングが続けざまに戦斧を振るった。
幾度となく衝撃が走り抜けて。
だけどロードナイトの歩みは止まらない。
闇を纏った鉈と手斧でゴブリンキングの攻撃を斬り払う。
『ナニガ起ッテイル……?!』
困惑するマザー・ゴブリン。
まぁ分からないだろう。
ゴブリン・ロードナイトの鎧の下の素のステータスはグリーン・ゴブリン並。
だけどこいつには他の魔物の特性を改良して組み込んである。
ロードナイトへと羨望の眼差しを向けるブルー・ゴブリン達。
身を呈して彼らを守ったことで『ロード』としての権能が発動していた。
『ロード』の権能はゴブリンの統率。
そしてもう1つの権能『ナイト』。
これがロードナイトの真の能力。
支配下にあるゴブリンが存在する限り、その肉体は何度倒れても復活する。
そして支配下にあるゴブリンの数だけそのステータスを上げる事ができる。
ここにいるブルー・ゴブリンの数だけでもその能力はすでにゴブリンキングを超えていた。
ゴブリン・ロードナイトがゴブリンキングへと肉薄し、その巨体を嵐のような勢いで斬り刻んだ。
肉塊と果てるゴブリンキング。
能力を発動すれば圧倒的。
そしてより多くのゴブリンを配下に置けばその能力は今とは比べ物にならないほど上がるだろう。
ロードナイトがマザー・ゴブリンの首に刃を突きつけた。
「お前の負けだ。個人の強さも。生み出す魔物の力もな」




