91話 出陣
「攻勢が始まったぞ! 急げ!」
「ひゃい!」
「寝ぼけるな! 急げ! 一刻を争う!」
「はい!」
それからどれくらい寝たのか。そこまで休んだ感じはしないから2,3時間だと思う。部屋に斥候の人が入ってきて起こしてくれた。
私は急いで外に出ると既に日は落ちていて真っ暗だ。そこにはフリッツさんが待っていて、私を見るなり走り出す。
「行くぞ!」
「はい!」
私たちが集合場所に到着すると、既に全員が準備万端で待っていた。
「遅くなりました!」
「すまん!」
「そんなのはいい! クロエ嬢直ぐにかけてくれ!」
「はい!」
私はそこにいる、9人に魔法をかける。いつも以上に、集中して、絶対に死なないように……。
「プロテクト×9」
ぱあああっと全員の体が光って魔法がかかったのが分かる。
「大丈夫です!」
「よし! 行くぞ!」
「「「おおおお!!!」」」
私たちは走り出し、あらかじめ決められていたルートから村の外に出る。そこは魔物の数が少ないと言われていた場所だったが、それでも3匹は存在した。
「消し飛べ!」
「おらああ!」
しかし、前の2匹が一瞬で瞬殺されると、もう一体は慌てて逃げて行った。
それを追おうとした人がいたが。
「放っておけ、今は他に狙うべき相手がいる」
「そうだったな。すまん」
「こっちだ。行くぞ!」
そういう隊長について私たちは走り出す。
それからの私たちは出来るだけ静かに少し迂回をするような形でケルベロスを狙う、ということしか聞いていない。
だからどれくらいでケルベロスまで辿り着くのか、そう言ったことも一切わからない中でも行軍は予想以上に精神的にきつかった。時間が過ぎるのが本当に遅い。
少しだけあった洞窟を通り抜けると、隊長が声を上げる。
「そろそろ着くぞ」
「順調過ぎるな……」
そう、誰かが言った時、私たちは洞窟を抜けて視界がばっと拡がった。
そこには。
「誘われていたのか……?」
「こりゃまいったな」
「今なら撤退出来るか?」
そこには100体位はいるのではないかというほどの魔物がいた。その奥にはケルベロスがいやらしそうな笑みを浮かべているのが分かる。きっと奴らが仕組んだことなのだろう。
魔物はケルベロスの配下だからか狼のような姿をしたものが多く、時々グリズリーベアの様な獣もいるといった感じだ。
後ろを振り返ってみるが、そこは崩されて下がることはできない。更に魔物がご丁寧に塞いだ前に待ち構えている。しかも頑丈さが売りの魔物の為、直ぐに突破することは困難な様に思われた。
「逃げるなど出来ん。行くぞ」
そう言ったのはドンキホーテさんだ。彼が抜いた剣はその鎧に相応しく白金で暗闇を切りはらうような神々しさを讃えている。
「先陣は任せてもらおう。突撃!」
「「「おお!!!」」」
私たちは陣形を維持したまま突撃を敢行する。勝てるか分からないという言葉は誰も口には出さなかった。
面白かった、続きが気になると思っていただけたなら、ブックマーク、下の評価をお願いします。
星1個でも頂けると、小説を書く励みになります。




