81話 進軍
翌日の正午。
私とフリッツさんの目の前には総勢50人を超える人が集まっていた。その全員がDランク以上の冒険者であり、騎士であり、戦闘のエキスパート達である。
その全員がおばあさんが連れてきてくれた騎士の先導で移動を開始した。今回のこれだけの大人数ということでその統率を取る人物が必要になる。それをかって出てくれたのが彼ら騎士だった。
「民を守るのは我ら騎士の役目、指揮官がいないとのことなれば引き受けさせて頂きましょう」
と彼らの隊長が言っていたので引き受けて頂いた。他にこれだけの大規模な部隊を率いたことはなかったので本当に助かったのだ。
フェリさんやおばあさんは戦えないからと見送りに来てくれたけど、彼女たちの事は絶対に忘れない。
それからの移動はかなり速かった。時間がないこともあったのだけれど、それだけ皆が急いでくれたからというのもある。
私たちがリッター村からここに来るまで4日かかったが、この大人数でも同じくらいの時間で戻ることが出来たのは驚異的といってもいい。
道中はケルベロスの集団の影響か住処を追われた魔物との戦闘になったが、それでもこれだけの実力者が集まったのだ。向かってくる敵は瞬殺され、時にはそのまま次の食事になって出てきていた。
私も調理等をして、かなり好評なようで嬉しかった。それに魔道具店で買った物を使ってあげる機会があって嬉しかったのを覚えている。
そんな道程が終わり、もうそろそろ村に到着する頃になるとかなりの魔物が現れるようになっていた。後少しでリッター村に到着出来そうだが、中々進むに進めない。
「このままだと厳しいかもな」
私はフリッツさんが言ったのを聞いてそちらを見るが、その顔は険しい。
「そうなんですか?」
「ああ、こうやって止まれば止まる程多くの魔物が集まってくる。だからもうすぐBランクや突破力に優れた者を集めて、強行突破で村を目指すはずだ。先触れは送っているハズだから村の受け入れもある程度は出来るだろうからな」
「なるほど」
フリッツさんがそう言ってから本当に騎士の一人がフリッツさんを呼びに来た。
「フリッツ殿。至急最前線に来ていただきたい」
「分かった」
「あの、私も少しはお手伝い出来ます」
「そうなのか? 分かった。来ていただこう」
もしフリッツさんの言うように突破を図るということであるのなら、私の防御魔法がきっと役に立つはずだ。
そうして私たちは急いで前に行く。とはいっても50人しかいないので直ぐに到着する。そこにはフリッツさんの言っていたようにBランクの人達や全身を鎧で固めた人達が集められていた。
そして隊長さんが話し始める。
「そろったな、詳しく説明している暇はない。今からこのメンバーで強硬突破を行ない急ぎ村に侵入する。異論は?」
「「「「「……」」」」」
大量の言葉に反対意見を述べるものは誰一人としていない。他の人達としてもこの状況がまずいと分かっているのだろう。今でも少し前の方からは魔物と戦う音がする。
「それでは行くぞ。今回付与術師は一人しかいない。援護は期待するな」
「了解」
「いつものことさ」
「あの程度なら問題ない」
彼らは口々にいうが私は彼らに怪我をして欲しくない。だから提案する。
「私の防御魔法を皆さんにかけてもいいですか?」
「ん? クロエ嬢か。しかしここにいる8人に掛けるのか? それとも前線の中央を張る数人にかけてくれるのか?」
「8人であれば大丈夫だと思います」
「分かった。貴方の言葉を信じよう。頼む」
「それでは。プロテクト×8」
私はいつも以上に集中し、彼らの無事を祈り魔法をかける。体の中から魔力が減っていく感覚があるが、これくらいならば問題ない。
前線を担当する8人にかけ終わって一息つく。
「ふぅ、終わりました」
「「「「……」」」」
「あれ? どうしました?」
なぜか全員が黙って私を見つめている。かかってないと思われてしまったのか?
「一度に8人も掛けたのか?」
「はい、そうですけど」
「普通1人ずつだと思っていたのだが……」
「俺のパーティの付与術師はそうだな」
「俺も聞いたことがない」
「あれ? そうなんですか?」
勇者パーティにいた時の付与術師のディーナは基本的に3人にいつも同時に色々上昇するのをかけていて、その上から他の効果もかけていたからそれが当然かと思っていたんだけど……。
その空気をフリッツさんが壊してくれた。
「それならそれでいいじゃないか。彼女の魔法の実力が確かだと言うことなんだ。今はリッター村に行く事を優先しよう」
「確かに、それもそうだな」
こうして彼らと前線に向かう。
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