74話 ギルさん
コンコンコン
「今使っているわ」
「フリッツさんはいらっしゃいませんか? 大至急というリッター村の方が来ているんですが」
この時に私たちの中で嫌な予感を感じなかった者はいない。
「いいわ、入って貰って」
「はい」
キィと扉が開いて、中に入ってきたのは受付にいたシスターとリッター村でギルドを管理しているギルさんだった。
「ギルさん?」
「フリッツ! 急いで戻ってきてくれ! 本当は手紙を出したかったんだが、そんな余裕は全くなかった。今はリッター村に残っている冒険者とドンさんが持ちこたえているが、どこまで持つか分からない!」
彼はそう捲し立てながらフリッツさんに縋りつく。以前会った時のような落ち着いた優し気な雰囲気はかけらもなかった。
「ギルさん。何があったか最初から話してくれ」
「あ、ああ。あれはフリッツがダラスに向かってから数日位経ってからだった。常駐してくれてる冒険者がいるだろう? その人たちがやたら多くの魔物を見つけて、討伐していると報告があったんだ。最初は気のせいだと思ったんだが、討伐数を聞いても有り得ないほど多い。そこで君の師匠であるドンさんに頼んだんだ。何かが起こっているかもしれないから見てきて欲しいと」
「ドンさんは何て?」
「任せろと言って見に行ってくれたんだが、彼は傷だらけになって帰ってきた。そして、そこで巨大なケルベロスを見たと」
「「!?」」
まさかこんなに早く来られるなんて。どうしよう。助けたい、でもどうすれば出来るのだろうか。私が勇者パーティに居れば皆は助けてくれただろうか。
私は先生を見るが、その顔は険しく歪んでいる。
「避難は出来なかったの?」
「魔物に囲まれていて出来なかった。それに体の悪い人もいる。その為の馬車が足りていない……」
「そう……。村の周囲にはどれくらいの魔物がいるのか分かる?」
「村の周囲……EランクやFランクの魔物達だけだが……。貴方は?」
「私は司祭をやっているわ。それと、この子の先生ね」
「おお、それでは教会の援助も受けられると?」
「その確約は出来ないわ。私は私で仕事がある。でも、出来る限りの事はすると約束しましょう。貴方もそうしたいのでしょう?」
「先生……」
先生は私を見て困ったような顔をしている。それでも先生は助けてくれると言ってくれた。
「まずは依頼を出しなさい。私がここに来るまでに連れて来た冒険者に受けるように言っておくわ」
「分かりました」
「分かった」
「貴方達、時間だけが勝負よ。今のうちに集められるだけ集めなさい。明日には出発する。私は他の所にも声をかけてみるから。くれぐれも焦って一人で行ってはダメよ。それと、ちゃんと依頼を大勢に向けて出すこと」
「分かってる」
「ギルさんよね。それでいい?」
「え、ええ。村の蓄えも使える分は使っていいと聞いています」
「それじゃあ行くぞ」
「はい」
「分かりました」
私たち3人は冒険者ギルドへ向かう。
先生も部屋から出て、私たちと別れた。
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