45話 一方勇者はその頃④
その日の晩に勇者パーティ一行は見張りであるハブルール一人を残して、他の者達は眠りについていた。
「ふぁ~ぁ。早く街に帰りてえなぁ。それかランドもどっちか分けてくれればいいのに」
その肝心のハブルールもランドとサラとディーナが眠るテントに視線を向けていた。
ランドはその内といっていたが、その気配は一向に感じさせていなかったのだ。クロエを襲ったのも色々男としての我慢が限界だったためだ。彼は一向にどちらか回してくれないランドが悪いと思っていた。
そんな事を一人考えているハブルールの首は一瞬で切り落とされた。
「はっ」
彼は何が起こったか気付くことなく絶命する。
彼の首を落としたのは全身黒ずくめの人型をした何かだった。体型は多少大柄と言えるかもしれないが、それだけだ。その彼はハブルールが絶命したことを確認すると視線をテントに向ける。
そして気配からテントにそれぞれ3人と1人が別れていることを確認すると、安全に行くために1人が入っている方に足を向けた。そして、テントを開けようと手を伸ばした所で。
「はああああ!!!!」
「っ!」
中から気迫の声とともに剣を振り下ろして来るルーカスの姿があった。彼は鎧こそつけていなかったものの、皮の胸当てなどはしていて最低限は守っている。
黒ずくめはルーカスの一撃を大きく飛んで躱し、そのまま森の中へ姿を消した。
「クソ……何だってんだ。ランド! 起きろ!」
ルーカスは警戒を解かずに黒ずくめが消えた後を見つめるが、誰かが来る気配もない。それどころかランド達も起きてくることすらない。
「こんな時に何やってんだあいつらは!」
彼は腸が煮えくり返るのを気合いで押さえて、3人が眠るテントを開く。
「うっ」
中からは強い性の匂いがして、さらに中には3人が布を被っているが、その下はほぼ裸で絡まって気持ちよさそうに寝ていた。
「貴様らこんな時にまで何をやっているんだ!」
「うお!」
「何……?」
「煩いわね……」
ランドは飛び起き、他の2人は目を擦りながらゆっくりと起きだす。しかし、その体を隠そうともしない。
「ちょっとルーカス。勝手にテントに入ってこないでよ」
「そうよ。そんなに溜まってたの? 女の魔族でも攫って好きにすれば?」
「ふざけている場合か! ハブルールが死んだんだぞ!」
「何だって?」
「どういうこと?」
「嘘でしょ?」
「御託はいい。いいから外に出て来い。装備もつけて来いよ」
彼はそれだけ残すと最大限に警戒をする為にテントを出た。
残された3人はお互いに顔を見合わせたものの直ぐに着替えて外に出る。そして、焚き火跡の近くで、驚いた顔のまま地面に転がる彼の首を発見した。
「そんな」
ランド以外に言葉はない。ルーカスの言葉は今を見れば明白だからだ。
「ランド。こんな調子では魔族に勝つ等到底無理だ。一度引くぞ」
「はぁ? 逆だろうが! ハブルールがやられたんだぞ! その報復に行くのが仲間ってもんじゃねえのか!」
「じゃあお前らはこいつが切り殺された時に何か気付けた奴はいたのか? おい。俺が開けるまで気付かなかったお前らが。また同じ奴が来た時にどうする? 今回は偶々追い払えたが次は俺もどうなるか分からん。どうするんだ?」
「そりゃ……お前が見張ってればいいだろうが」
「1日中か? 出来ると思うか? 今回気付けたのもハブルールの気配が消えたからだ。もし最初に俺が殺されれば気付くことなど出来んぞ」
「……」
「ハブルールはお前が誘ったからな。大切に思う気持ちはわかる。わかるさ。だがな。このままじゃ俺達まで死ぬぞ。それでもいいのかお前ら」
「「「……」」」
ルーカスの言葉に返せる人間は誰もいなかった。それほどに相手の手際が良すぎたといってもいい。
「一度撤退だ。そうでなければ勇者だろうが死ぬぞ。相手を見誤るな」
「……分かった。一度撤退しよう」
「ああ、それがいい」
こうして彼らは公的に仲間2人を失い、逃げ帰るという大失態を犯すことになる。
とある森の中、ある男が周囲を警戒していた。彼は魔法を使い念入りに確認してから一息つく。
「ふぅ……。追ってはこないか……。しかし、あれが勇者パーティーという奴か? いくら何でも弱過ぎる……。俺は罠にかかっていた……? 分からん。それに聖女の気配も感じなかった。討ち取ったという話も聞いていない。やはり一度調べる必要があるか……」
その声を聞くの者は誰もおらず、木々の間に消えていった。
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