100話 これから
それからはほとんど人に出会うことなくおばあさんの家に着いた。家の近くには馬車が止まっていてその2台にはあまり物が積まれていないが大丈夫なのだろうか。
「ばあさーん! 野菜持って来たぞー!」
「ああー!? 何だって!?」
「野菜持って来たって!」
「今日はそんな日だったか!?」
「いいから上がるぞ!」
大声で言っているので外の他の人にも聞こえそうで怖い。フリッツさんもそう思ったのか家の中に入り込む。
そして家の中で何かやっていたおばあさんにフリッツさんは声を押さえて話しかける。
「ああ? アンタ何しに来たんだい!?」
「ばあさんが来いって行ったんだろう」
「そんなこと言ったっけねぇ?」
「クロエ」
フリッツさんが近づいてばあさんの耳元で囁く。
その一言を聞いたおばあさんは何も言わずにどこかに行くみたいだ。
フリッツさんは何も言わずに彼女について行く。途中、階段を降りるような下に向かう感じがした。
「ここで降ろしな」
さっきまで叫んでいたようなおばあさんの言葉とは思えない感じだ。ハッキリとしているし、あんな大声でもない。
「クロエ、静かに出てくれ。それと野菜は今からどかす」
「はい」
フリッツさんが私の上に載っている野菜をどかしてくれる。
ほとんど無くなったのを確認してから私は籠から出た。そこはほとんど明かりのない部屋だった。何がどこにあるか分からないので歩けない。
「ここは……?」
馬車に乗っていくと聞いたんだけどここはどう見ても違う。
「馬車なんかで行ったら絶対にバレちまうだろ? こっちから行くのさ」
声をした方を向くと、おばあさんがこちらを見ていた。その目は優し気だ。
「クロエ、アンタには感謝するよ。この村が無事だったのはアンタのお陰だ。村の人間は他の冒険者の人達の世話で忙しかったりしてね。直接言いに来れないことを許してほしい」
「そんな。気にしないでください。魔物に畑を荒らされたり大変なのは分かっていますから」
「ありがとうね。やっぱりアンタみたいな子に家を継いで欲しかったが、仕方ない」
「すいません」
私が謝ると彼女は手を振ってそれを止める。
「勘違いしないでおくれ、もしここを継いでくれる気になったらいつでもおいで。ただそれだけさ。それで、村の外に出るんだったね?」
「はい。捕まると大変なことになるような気がするので」
隊長の話を聞いている感じ悪いことになるとは思えないけど、それでも出ていくのは恥ずかしかった。
「食われるようなことにはならんと思うがね。まぁいいよ。アンタが望むなら手伝う」
「ありがとうございます」
「この道を降りて真っすぐ進みな。それで到着するよ」
「ありがとうございます」
そう言って示された道を見るが、真っ暗で怖い。
私は明かりを出して一応聞く。
「あの、明かりつけても問題ないですよね?」
「ああ、問題ないよ。それと、出た先で待っていておくれ」
「後から追いつくからな。待っていてくれ」
「フリッツさんは来ないんですか?」
この前一緒に旅に出ようと言ったのは何だったのか。
「だから待っててくれって言ったんだ。このまま俺がここから出てこなかったら怪しまれる。だからここから出て、俺がばあさんの護衛としてダラスまで向かうんだ。その途中でクロエを拾ってそのまま出る」
「なるほど」
「わかったらサッサとお行き、あんまり中に入ってると怪しまれるかもしれないからね」
「はい。ありがとうございました」
「無事でいるんだよ」
「はい」
そして私は明かりをつけて暗闇の中を進んだ。
******
「あいた」
暗闇の中、明かりをつけているといってもそこまで大きいものではない。だから頭とかを不注意でぶつけてしまう。
「当然だけど狭いなぁ」
その道は道と言っていいのか分からないくらい狭い。私はそこまで問題なく通れるが、男の人だったらかなり厳しいだろう。
そんな道を進むこと1時間。
「どこまで続くんだろう……」
景色は一向に土、土、土。四方八方土で時々零れて来て外套はかなり汚れてしまっていた。その汚れ自体は気にしないのだけど、本当にこのままで合っているのか分からなくなる。
「せめてどれくらいか聞いておけば良かった」
そのまま歩くがその道もただひたすら真っすぐだ。それから2時間位は歩き続けただろうか。
「明かりが、明かりが見える~!」
私は思わず駆け出していた。ここまでずっと暗かったこともあって、精神的に早く解放されたいという思いがあったのだ。
そして私は外に飛び出した。
「あー! 空だ……空気が美味しい」
そこはどこかの崖沿いに掘られた洞穴だった。外からは直ぐに見つけにくいようになっているし、その前には森が拡がっている。ここに入るには直ぐには本当に運が良くないと見つけられないだろう。
私は少し歩いて木の傍に腰を降ろす。
「どれくらい待ってればいいのかな?」
私がそうして待っていると数時間後に誰かが歩く音が聞こえた。
フリッツさんかな?
私はそちらの方をそーっと見ると。
そこにはフリッツさんが歩いていた。その顔は誰かを探すようにキョロキョロと見て回っている。
私はその彼の後ろに誰か居ないのを確認して私はそこから出ていく。
「フリッツさん!」
「クロエ。無事だったか?」
「はい! 途中何時まで続くのかわかんなくなって怖くなりましたけど、何とか出ることが出来ました」
「そうか、良かった。ばあさんがこの先で待ってくれている。すぐに行こう」
「はい!」
私はフリッツさんの隣を並んで歩く。その背は見上げるように高い。
「どうしたんだ?」
私が見ていたことに気付いたフリッツさんが気付く。
「いえ、高いなーって」
「羨ましいのか?」
「んー高すぎて悩んでる子もいたのでそこまで欲しいとは思わないんですよね」
「前の院の話だったか?」
「はい、着る服がないーって言って残念がってました」
「そうだったのか。それなら今のままがちょうどいいかもな(俺も今くらいが丁度いい)」
「ん? 何て言いました? 途中から聞き取れなかったんですけど」
フリッツさんの顔が赤い気がする。暑いのかな?
「気にするな。そう言えば、ケルベロスとの戦いで使ったあの強化は何なんだ? 見たことも聞いたこともない強化だった」
「え?」
私は驚いて足を止めてしまう。
フリッツさんも私に合わせて止まってくれた。
「どうした?」
「本当に知らないんですか? この国の子供でも知ってると思うのですが」
「ん? ああ、俺の生まれはこの国じゃない。隣の帝国の生まれだ。だからこの国の話とかはあんまり知らない」
「……」
え? ほんとに? 隣の国でも知っていると思ったんだけど……。もしかして院だから教えていたとかそう言うことがあったのかな? それなら有り得る……の?
「それじゃあ一体どういう力なんだ? 今まで使ってなかったし、秘密の力なのか?」
「そうですよ。私の秘密の力なので、誰にも言わないで下さいね?」
「俺に説明位してくれてもいいんじゃないのか?」
「ふふ、その時が来たら私も教えて上げますね?」
「そういうのはずるくないか?」
「そんなことありませんよ!」
「全く……はは」
「いいじゃないですか……ふふ」
私たちのお互いに秘密を抱えた旅はこれから始まる。だけど、私は何の不安もなかった。
Fin
これで1章は終了となります。ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。
その、何と言いますか、勇者パーティーについては2章で決着をつけるというか、ハッキリさせる予定です。2章はほとんど書き終わっていますので、是非読んでいただけるとありがたいです。
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