閃き 2
午後。和志は、朝美と協力してネットにあげる記事を完成させる。「中々の出来栄えだ」と和志も得意げだ。
あとはタイミングを見計らい、ネットに上げるだけ。
和志は満足して微笑むと、朝美と二人で、ネットやテレビの様々な情報、玉石混交、種々雑多でありながら、和志達にとっては何一つ見落とせない情報を集めていく。
和志達の情報収集とともに、時間は瞬く間に過ぎ、その日の夜、もう一度増川から連絡が入る。
すぐに携帯を取ったのは和志だが、和志の返答振りを見ると、増川は朝美に電話を代わってもらいたいらしい。
和志は一言、「朝美、増川さんだ」とだけ告げると、朝美に携帯を手渡す。朝美は電話に出る。
「はい、野宮です」
増川は慎重な口振りだが、やはり少し和志を疑っているようだ。朝美にもしっかりと状況を確かめたい。そんな口調だ。
「朝美か? 言いにくいが和志は、大丈夫か? 暗殺が未遂に終わって、少し気が動転しているとか、そんなことはないか?」
朝美は落ち着いてそれをやんわりと否定し、和志の言葉に嘘はないと、増川に今一度念を押す。
信じてもらえないか。やはり。この荒唐無稽でさえある話を。
朝美の心に一瞬だけ不安がよぎるが、朝美の話を聞いて、増川は少し安心したようだ。あらためて二人の話を信じる気持ちになったらしい。
増川は状況を告げる。
「そうか。昨日事実を知らされて、不破さんの動きを監視している。だけど特別怪しいところはない。反戦グループの士気をあげる理想的なリーダー。それそのものの姿を見せている」
朝美は増川の話へ真剣に聴き入る。不破さんは簡単には足を出さないか。分かっていたことだ。だが増川は思いもよらぬ単語を口にする。
「だがどこか……、和志と朝美、君達二人の話を聞いたせいだろうか。『浮薄』な印象もする」
「浮薄」
朝美がそう言葉を重ねると、増川は不破の様子を詳しく伝える。
「野党議員が暗殺に関わったと認める。そんな虚偽の事態が進んでいるというのに、激しいアクトも言葉も見られないし、何かプランを立てるということもしない。まるでこの状況を容認しているかのようだ」
朝美はその状況の不自然さ、不可解さが、手に取るように分かった。だからこそ増川にこう伝える。
「そうですか。それは、不破さんがこの展開を初めから知っていたのだから、特別何も感じていない。その証拠だと思います」
「証拠。やはり、そう考えざるを得ないか」
そう返事をする増川はやや幻滅気味だ。反戦グループのリーダーの裏切り、背反。
それはあり得ることであっても、増川はその事実に落胆していた。増川は気分を入れ替えて、自分自身を鼓舞すると話を終える。
「分かった。沈んでいる場合じゃない。君達の話が本当ならば、いや本当だともう信じるしかないが、一週間がリセットされるまで、あと四日しかないんだ。やれることをやろう」
「お願いします」
朝美の頼みに、増川は「もちろんだ」と返し、こう最後に告げて、電話を切る。
「引き続き不破さんの監視を続ける。また連絡するよ」
通話を終えた朝美は、和志に携帯を手渡し、軽く頷く。和志は朝美の話し振りで、増川が何を話したか、おおまかに分かったようだった。和志は携帯をポケットに仕舞う。
「そう、確かに悔しいことだ。俺だって信じたくはない。だが信じざるを得ない。そして高橋首相の戦争を止める手立てを考えなければならない」
そう和志は口にして、テレビを点ける。テレビでは、朝美と和志の心情と裏腹に、賑やかなバラエティ番組が流れている。
和志はその様子を見て意を決する。
「何度一週間が繰り返されるようと、俺はやるさ」
和志の言葉を耳にして、朝美は祈るように手を一度合わせる。その姿には朝美の強い願いが映し出されていた。
一週間。短い時間だ。だが朝美達は挑戦するしかないと知っていた。




