繰り返される一週間 2
放送されるのは一週間前と同じプログラム。和志は考え込んで、部屋を歩いて回る。朝美の方は逐一内容をチェックして、中身が同じであるのを確かめる。
時計が午前の11時を告げる。時計の針は、やや進んでいるのか、テレビの時刻と五分ほど差がある。時計のチャイムを合図にして和志は、朝美とともにテレビの前に陣取る。
午前11時。それは朝美達が暗殺に失敗した時間帯だ。
現実味に乏しいが、もし時間が逆戻りしているのなら、暗殺未遂事件が報道されるはずだ。和志は疑心暗鬼になりながらも、事実をしっかりと受け止めようとしている。
「いよいよだな」
朝美はコクリと頷くと、両掌で口元を覆い、両膝を太腿につく。
「そうね。これではっきりするわ」
午前11時15分頃、その時が来る。情報番組が、突如として切り替わり、緊急特番が組まれる。慌ただしい様子のキャスターが原稿を読みあげる。
キャスターの声は衝撃を伴い、朝美と和志の耳に響く。
「ここで予定を変更して緊急ニュースです。池袋での遊説中、高橋首相が何者かによって狙撃されました」
「やっぱり!」
大きな声をあげる朝美を和志は制する。
「いや、まだ分からない」
その和志を差し置いて、キャスターは淡々と原稿を読み上げる。
「銃弾は防弾ガラスに阻まれ、首相は危うく難を逃れました。直後に政府は声明を発表し……」
「何てことだ」
和志は困惑して考えが散り散りに乱れているようだ。彼らしくなく、言葉が飛び飛びになる。
「時間が逆行? ……まさか! いや。それにしても。タイムスリップ? SF映画じゃあるまいし」
「とにかく『何か』が起こっているのは間違いないわ。和志」
何とか気を静める朝美と和志。だがキャスターは声は慌ただしく響く。
「警察は、犯人捜索に全力をあげると声明。尚、池袋の巡回コースは関係者以外には伏せてあったため……」
和志は動揺を抑える。だがこの信じられない事実を前にしては、和志も当惑せざるを得ない。和志の声の抑揚には、動揺が滲む。
「俺達だけか? それともこの街だけ。それとも日本中、いや世界中が……、こんな事に?」
和志は駆り立てられるように立ち上がる。
もう一つの可能性、テレビがただ単に再放送を繰り返しているだけ、ということを視野に入れる。
「麗華の住民と話をしてくる。会話のニュアンスで何が起こったのか分かるはずだ」
だがそれを朝美は、両掌を広げて止める。
「待って。和志。もし時間が本当に逆戻りしていたら? 私達はこの時間帯には、まだこの家には着いていないはず。街の人と話をしたら、何が起こるか分からないわ」
「くっ! どうしたらいい」
朝美は何とか和志を宥める。
「もうしばらく、せめて私達がこの家に着いた時間帯まで様子を見ましょう?」
「あっ!」
和志はやや苛立たしげに、左手を大きく振り上げた。
手があるのに打てない。思い付いた行動を取れない。手段を限られた和志は唇を噛み、無為な時間を過ごすしかない。
時間は刻々と過ぎ行き、和志と朝美は流れるニュースを、黙って見つめてほかなかった。




