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吸血鬼犯罪捜査官 美紅  作者: 城島 剣騎
<第4章>悪の華は夜に咲く
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第四章<~プロローグ~>


PM19:00

京都タワーの展望台


「ふぅ。

そろそろ本部からの招集があっても、可笑しくない頃あいかしら。」

あたしは美夜。

この京都の夜の世界を取り仕切る吸血姫。

闇組織ブラッディマリアから任された幹部の1人である。

苗字はないわ。

何故なら人類吸血鬼連合政府などに既存する、上条家をあたしは見限ったのだから。

そして、それに対してあたしはなんの未練もない。

勿論、上条家に執着もない。

人間に歩み寄る吸血鬼だなんて、考えただけでもおぞましいわ。

ましてや食事の対象でしかない人間を襲わずに、人工血液なんて不味いものを飲むなんて。

わたし達は吸血鬼。

恐怖と魅惑によって人間を陥落させる、甘美と悦楽の支配者。

つまりは捕食する者とされる者。

支配する者と支配される者なのよ。

人間は、あたし達が品定めをして眉目秀麗と認めた者にだけ、死徒として生きる権利が与えられる。

つまり、人間なんて家畜同然。

食材としてのみ、生きる価値がある。

それが本来の吸血鬼と人間の有り様なの。

共存?平和?博愛?

そんなもの有り得ない。

だって人間なんて、くだらない生き物だもん。

本当にとるにたらない、低能で野蛮で恩知らずな生き物。

受けた恩をアダで返す。

地球に育まれ、育ち、発展してきた人間が何をしてきたのか。

そう、自然破壊よ。

人間は自分達の事だけしか考えていない、愚かな存在。

そんな人間と共存とか繁栄なんて有り得ない。

吸血鬼世界連合政府は、いつから人間に毒されていったのかしら。

全ては、真祖のドラキュラ伯爵[ヴラド・ツェペッシュ]に背く行為なのではなくって?

ま、彼は小説でのフィクションだから、本当の人物がどんなものかなんて知らないけどね。

闇組織ブラッディマリアは、人間の血液を売買し、様々な武器の密売をしている。

だから闇マフィアだの、闇ブローカーだの、死の武器商人だの呼ばれている。

でも本来のあたし達の目的は他にある。

全ては今の狂った平和社会に反旗を翻す為。

反乱分子と呼ばれる吸血鬼を統合して、この世界を本来あるべき姿に戻す事が真の目的。

そう。

全ては、本来あるべき夜の姿に戻す為に…。

吸血鬼が愛だの正義だの平和だのを歌わない、恐怖の支配者に戻る為に…。

そして、その時はそんなに遠い未来じゃない。

その最初の手始めに日本を。

もうじき来られるのよ、あのお方が。

ブラッディマリアの首領である、あのお方が…。

そうね。

せっかくだし、私がどうして闇に目覚める事になったのか。

その追憶のお話でも聞かせてあげましょうか?

でも、その前に。

「いい加減、姿を見せなさい?

あたし尾行されるのって、好きじゃないの。」

うふふっ。

アブジーの関西支部の刑事さん達、か。

ひぃふぅみぃ…。

人間が2人に、パートナーである吸血鬼が2人か。

これはかなり、やっかいかしら?

「おい、気付かれちまった。

お前達、全員今すぐ顕身しろ!」

あら、命令口調?

あたしは、こういう傲慢なタイプの人間は大嫌い。

なのに、パートナーとなった吸血鬼のアブジー隊員は怒りもせずに次々と顕身していく。

このあたりは、凄く謎だわ。

ふぅ~ん。

流石にあたしも、有名になったって事かしら。

死徒とはいえ、かなり手強い陣容じゃない。

アサンボサム(ガーナ)

アサンボンサムとも呼ばれる吸血鬼。

ガーナ南部のアシャンティ族やトーゴの人々の間で信じられている。

森の奥深くに住むアサンボサムは、森の中に入った人間を木に吊り上げて殺し、その親指から血を吸うといわれている。アサンボサムの姿は人間に似ているが、歯は鉄で、脚には鉤型の突起がついている。

磯女/濡れ女(日本)

 海岸の波打ち際に現われる女の妖怪で、磯姫、海姫とも呼ばれる。

美しい顔立ちをしており、人間を誘惑し、近付いてきたところで長い髪で捕らえ、海に引きずり込んで血を吸うといわれている。

その姿をよく見れば、全身水浸しで、長い髪は地面につくほど伸びており、下半身がぼんやりとしている。

「アサンポンサムに濡れ女。

貴女達は何故、あんな偉そうな人間に黙って従うの?

思いだしなさい。

貴女達が闇の顕族であった事を!

そしてもう一度、血の味と渇望に酔いしれるのよ。」

ふふっ、動揺しているわ。

あたしには、わかる。

吸血鬼は、その力が強ければ強い程、血への渇望と誘惑が強い。

ほんの少し、あたしの魅了[チャーム]で理性をはずせば…。

「落ち着け!

俺達は正義を守るアブジーの…、うわぁぁ!」

まずは1人。

「落ち着きなさいってば!

私達、今まで仲良くやってきたじゃ…、きゃあぁぁ!」

これで2人。

なんだかとっても、あっけなぁ~い。

ふふっ。

うふふふふふっ。

「あの娘もいずれは目覚めさせてあげなくては、ね。

待っててね、美紅。」

不意にエレベーターが開いて、あたしの背後から1人の男性が姿を現した。

「美夜。

貴女の予想通り、藤田 春樹と美紅様は共にアブジーの一角を担っております。」

やっぱり、ね。

美紅がアブジーに就職したのは知っている。

でもまさか、あのあたしを拒んだ春樹が美紅のパートナーになっているとは…。

「少々やっかいな事になりそうね。」

あたしは思わず舌打ちをした。

「ともかく、御苦労さま。

うふふっ。

あたしの可愛い下僕、裕仁。」

照れ屋ではにかんだ顔があまりにも可愛くって、思わず私の下僕にした彼は、俯きながらあたしを視線の外に移した。

「僕は永遠に貴女の下僕としてつき従うと、約束しました。

貴女が僕を必要として下さる限り、僕は貴女に全てを捧げる覚悟です。

あの、出来れば芸名の長田 裕仁で呼ぶのはやめて頂けませんか?

貴女には、本名である愛河 恋人と呼んで欲しいのです。」

彼はそう言うと、片膝をついて頭を垂れた。

「可愛いわね、恋人。」

うふふっ。

私は御褒美をあげる為に、彼の首筋を指でなぞって牙を突き立てた。




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