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吸血鬼犯罪捜査官 美紅  作者: 城島 剣騎
<第3章>アイドル恐喝殺人事件
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第三章<~エピローグ~>


春樹の話はとても端的で、でも大事な要点をきちんと抑えた話だった。

私の姉との、なれそめ。

そしてかつてのパートナー、鳴海 総一郎さんの事。

斬妖剣[紅蓮]の事。

まぁ、妖刀については私の実家の家宝だったので詳細は知っているんだけどね?

当然、それが危険な諸刃の剣である事も…。

春樹が使う刀が斬妖剣[紅蓮]と知った以上、私はもう二度と春樹に妖刀を使わせたりしない。

だからこれからは、私がもっと強くならなきゃ。

でも春樹の寿命は一体、どれぐらい妖刀に吸い取られたんだろう。

それを思うと私はより一層、姉を許せなく思ってしまう。

「これが、俺の知りうる美夜にまつわる邂逅だ。

さて俺の話もこれで終わったし、撮影スタジオへと行くぞ。」

私はまだ複雑な思いを胸に抱いたままであったが、春樹の言葉に従って楽屋を後にした。


撮影スタジオに入って事の仔細を全員に話すと、私達は物凄い質問攻めをうけた。

それを春樹は端的かつ、詳細に語って全員を納得させた。

流石にこういうのって、春樹の独壇場よねぇ。

「なんだか悲しい結末ですね。

なんか八神 咲子さんには正直、同情しますよ僕は。」

実に撮影カメラマンの須藤 純さんらしい意見ね。

勿論、私だってそう思うわよ。

でもだからって桜庭 優さんを殺害した事実に変わりはない。

「確かに情状酌量の余地はあると思います。

でも、だからといって手錠をはずすなんて出来ないから…。」

言ってて心が痛い。

だって彼女を吸血鬼にしたのは、私の姉なのだから。

「無罪には、なりえないと思うけど…。

でも、事情が事情だけに刑は軽くなりますよね?」

「多分、ね。」

ごめんなさい、須藤 愛さん。

はっきりとした返答をしてあげたいのは山々だけど、私には今は何も言えないから。

なので、私はあえて言葉を短くして誤魔化す発言をした。

「しっかし、まさか優のやつがマネージャーとデキてたとは驚きだなぁ。

いや、過去を消して整形してるんだからわかんねぇよな。」

香山 良治さん、貴方って意外とデリカシーのない人だったのね。

ちょっと幻滅かな。

「ふん。

全く最初から最後まで後手後手にまわった挙句、うちの大事な金の卵をむざむざと!

貴様達、どこまで役に立たないごくつぶしなんだ。」

芸能プロダクション社長、須貝 幸司氏の罵倒にも、私は何も言えなかった。

反論したい事は沢山ある。

でも、結果的に桜庭 優を守れなかった責任は私にあるからだ。

「社長、もうそれぐらいで。

刑事さん達だって、桜庭 優を守り切れなかった自責の念でいっぱいのはず。

それに、八神 咲子さんの考案したトリックも二人は見破ったんですよ?

これ以上彼らを悪く言うなら、移籍も考慮します!」

sprintersのリーダー、長田 裕仁さんの言葉に社長の怒声もやんだ。

有難う、裕仁さん。

もう会えなくなったとしても、私は貴方のファンはやめませんから。

ふと外の窓を見上げると、もう夜は白み始めていた。

「それでは皆さん。

案件も一応片付いたので、我々はここで署に帰ります。

もうすぐ警察が来ますので、その際の事情聴取は宜しくお願いします。」

春樹ったら、本当にどんな時でもクールなんだなぁ。

私達は玄関前に立つ警備員さんに一礼をして、出口のドアを開けたようとした。

「待って!」

声をかけてきたのはsprintersのリーダー、長田 裕仁さんだ。

「なんでしょう?」

私はなんの気なしに振りかえったら、そこにはもう裕仁さんが目の前にいた。

「刑事さん。

もう貴女と会える機会はないのでしょうか?」

どういう事かしら?

「警察なんかとかかわるような事件、もうない方が良いでしょう?」

と私は微笑んだら、裕仁さんは哀しそうな顔で私を見つめた。

ふと横を見れば、春樹はいかにも不機嫌な顔つきで、とっとと玄関のドアを開けて外へと出た。

「どうもこんな大勢の前で告白するのって凄い恥ずかしいんですが…。

僕と付き合って下さい!」

ええっ?

いきなりの告白で、私は思わずのけぞった。

そして、しばしの沈黙。

「ごめんなさい。

貴方には沢山のファンがいるもの。

とても私1人で独占するなんて、出来ないわ。」

それが精一杯の、今の私に言える答えだった。

裕仁さんはしばらく思いつめた顔をしていたが、やがていつもの爽やかな笑顔に戻った。

「うん、そうだね。

僕はこれからも芸能活動に力を入れるからさ、応援してて下さい。」

少し、はにかんだ笑顔が今の私には眩しかった。

だから私はあえて口に出さずに、めいいっぱいの笑顔と手を振ってお別れした。

「おいアホぅ。

本当にいいのか?

逃した魚を、一生涯悔んだりするのではないのか?」

玄関のドアをあけて外に出るなり、春樹はそんな事を言った。

ふん、本当は少し嬉しいくせに。

などと言ったら春樹の事だから、猛反論するんだろうなぁ。

「いいの。

今の私には恋をする余裕なんかないし、そんな暇もないから。」

と言ってやったら、春樹はそれには何も答えずに顎で無人パトカーに乗れ!と指示してきた。

まっったく、可愛いくないんだから春樹ってば!

私はやや不機嫌になりながらも、無人パトカーに乗り込もうとした。

「あら、何かしらこの包み。」

綺麗な包装紙に可愛らしいリボンをつけて、それは私が本来座るはずの座席に鎮座していた。

「ふん、いいから開けてみろ!」

なんだろ?

怪訝な面持で春樹の顔を覗きこみながら、私は中身を取り出した。

「これって!」

中身は私が以前から欲しがっていた、ウニクロの吸血姫専用のおしゃれなマントだった。

「馬子にも衣装というからな。

それを纏えば少しはお前もましになるだろう。」

ぷっ!

春樹ったら無理しちゃって。

顔面真っ赤じゃないのよ。

「有難う、春樹ぃ!」

私は無性に嬉しくなって、思わず春樹に抱きついた。

「ま、あれだ。

お前の誕生日に捜査依頼がきたんで、不憫に思っただけだ!

いいから抱きついてくるな、うっとおしい。」

とか言いながら!

春樹ったら、益々顔が真っ赤になってるじゃない。

ほんっっとうに!

素直じゃないんだから。

私は春樹にプレゼントされたマントを身に纏って、ファッションショーのように華麗に踊った。

「事件は待ってはくれないのだぞ!

乗らないというなら、容赦なく置いていくだけだ。」

ちょっとちょっとぉ。

私は春樹に放置されそうになったので、慌ててパトカーに飛び乗った。

顔面真っ赤にした、クールでニヒルなパートナーを帰りの道中でからかいながら。




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