第三章<自意識過剰>
もしかして春樹ってば嫉妬?
…な訳ないわよね。
でもでも、私と親しくして睨むとかって春樹しか考えられないのよねぇ。
それに今も不機嫌だし。
なので私は思わず悪戯っぽくカマをかけてみた。
「ちょっと春樹ぃ。
あんまりあからさまな嫉妬とかやめてよね!」
さぁて、どんな反応があるかしら?
が、反応は以外にも鳩が豆鉄砲をくらったような顔だった。
「お前、いよいよ頭が馬鹿に支配されたのか?
俺が嫉妬だと?
お前ちょっとは自分を客観的に見つめた方がいいぞ。
冷静に考えろ。
俺は、普通に当然言うべき事を述べただけだろうが。」
うん、私もそうは思うんだけどね。
「でもじゃあ、最近の若い男性の刑事さんが言ってた事は?
君と仲良くすると、睨まれるからって。
睨んでるのって、春樹でしょ?」
と言ったら、即座に深い深い溜め息が始まった。
「はぁぁぁぁ。
そうか、俺が悪かった。
俺がさっきお前に冗談を言ったから変に意識したのだろうな。
あのな、確かに俺はよく睨んでるよ。
だがな。
それはお前が他の同僚にとんちんかんな事を言ってだ。
迷惑をかけやしないか心配しているだけなんだよ、こぉのドアホぅが!」
ちーん…。
今、確かに私の頭の中に意気消沈の鐘が鳴り響いた。
「あの、一般人の見学者は認めていません。
それと、雑誌グラビアの撮影中なので騒ぐのは御控え下さい。」
私達が騒がしくした為、控えめな美人が現れて注意してきた。
「あ、すみません。
ただ私達は見学者じゃないんです。」
と腰を低くしつつ、私は女性に警察手帳を見せた。
「あぁ、貴方がたですか。
アブジーの刑事さん達ですよね?
わたくしはsprintersのマネージャー、八神 咲子と言います。
貴方達の事は社長からお聞きしていますので、どうぞ楽屋へ。
新、さっさと動いてよもう!」
なんだか随分と気の強そうな女性ね。
で、咲子さんに叱られておずおずとやってきたのは、中性的な見た目の美少年だった。
「すいません。」
なんだかなぁ。
見た目は凄く可愛らしいのに動きがトロくて、苛々する。
って、私が苛々してるんだから春樹はもっとかな?
と後ろを振り向いて見上げたら案の定、春樹は渋い顔をしていた。
「えとぉ。
そのぉ。
僕は新藤 新って言います。
うちの芸能プロダクションでサブマネージャーをしてます。
その…、よ、宜しくです。」
あぁもう!
おどおどして、なんか常に頭を掻いてて自信なさそうで上目づかいで…。
なんだか思わず私まで渇を入れてあげたくなっちゃう。
とか思ってると、私の出る幕はないみたいだ。
「自己紹介はいいの。
だらだらしてないで、さっさと楽屋まで案内する!
ほら、ぼさっとすんな!」
うーん、前言撤回。
こんな男性のお守りやってたら、そりゃついつい声もはりあげちゃうわよね。