第三章<芸能プロダクションからの依頼>
げっそり…。
アブジーの特務捜査課の課長からはめいいっぱい怒られるわ、春樹は春樹で刑事失格だ!
なんて…。
やっぱ私ってこの仕事、向いてないのかなぁ。
なんだか、流石に今日はへこんじゃうわ。
「はぁ。」
すると、背後から誰かが近づいてきた。
「何よ、春樹。
まだ何か言いたいって訳?」
後ろから来たのは、春樹だった。
夕日に照らされた春樹は、悔しいけどやっぱり綺麗。
「おい、アホぅ。
涙なんぞ流すくらいなら、明日からはちゃんと定刻通りに出勤してこい。
まぁ俺も多忙だったから、いつものように起こしてやれなかったのもあるがな。」
春樹はそう言うと、軽く頭を掻いた。
そっかぁ。
春樹も本当は言い過ぎたって思ってるのね。
「ごめんなさい。
明日からはちゃんと目覚まし時計を倍に増やして必ず起きるわ。」
それを聞いた春樹は、びっくりするくらい優しい目で、私の頭を撫でた。
「ほら、人工血液でも飲んで元気を出せ。
この程度で気持ちが萎えるなぞお前らしくはないぞ?」
と、春樹は人工血液缶を投げてよこした。
「うん…。」
私が短く応えると、春樹に笑顔を見せた。
「ま、俺が四六時中いつも一緒にいるなら問題はないのだがな。」
えっ?
今なんて言ったの?
ドキドキ。
ちょっ!ちょちょちょっ!
それって、まさかプロポーズ?
きゃ~っ、嫌だ私ってモテ期なのかしら?
「じゃあ、ちゃんと大事にしてよね。
あ、それと朝は魅惑の王子様の…。」
って言いかけて気付いた。
これは多分、私の早合点なんだろうなと。
だって春樹って頭脳は明晰なんだけど女心がまるでわかってないし。
「美紅。
お前、怒られすぎて熱でもあるのか?」
ほら、ね?
春樹がそんな気の効いたプロポーズなんてする訳ないのにね。
って…。
「どれ。
熱はないようだな、ならいつものお馬鹿まるだしの暴走か?」
はははは、春樹ったら。
今度は本当にドキドキが止まらないじゃないのよ!
春樹は私のおでこに自分のおでこをくっつけて熱を測ってきたのよ。
「ちちちちち、近い近い!」
私は思わず顔面真っ赤になって春樹を突き飛ばした。
「ふん、アホぅが。
そんだけ元気なら、今からの捜査も大丈夫そうだな。」
へ?
「えっと、捜査って?」
と私が聞き返すと、春樹は力なく肩を落として溜め息を吐いた。
「捜査依頼だよ。
しかも今度はアイドルの芸能プロダクションから、な。」
「むぅぅ。」
それを聞いて私はぶぅたれた。
仕事が嫌という訳ではない。
少しは私の事を個人的に気にかけてくれてたって思ってたのに、そうじゃなかったから。




