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前世も今世も日日是好日  作者: とみやま象


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3/3


 卒業パーティーから半年が経った。


 眠い。暖かい居間でソファに身を委ね、睡魔に抗えずゆらゆらと舟を漕ぎながら、わたくしは今日までを思い起こす。


 いやはや、怒涛の日々であった。


       ******


 あの日、うちに帰ると玄関でお父様が待ち構えていて、ジュール様に天気を問うた。


「アルカ島でキャンセルが出たので、空きを押さえた。5日後の正午だ。エスタジ湖の畔のヴィラを3カ月貸し切っている」


「アルカ島周辺はこの先1週間快晴です」


 スキルが『お天気お兄さん』のジュール様が週間天気予報を伝えた。


「では、出発は明朝5時だ」


「お父様は明日から3カ月もアルカ島に行かれるの?」


 急な仕事でも入ったのかと訊ねるわたくしの頭を撫で、お父様は「いいや」と首を横に振った。


「先刻使者が来てな、父さんは明日、王宮から呼び出されているのだ」


「まあ、それは……」


 間違いなく、婚約の結び直しについての話だろう。


「だからな、父さんはこれから夜食だ」

「夜食?」

「うむ。ひとりでカリャイパーティーだ」


 なんですと?


「迎えが来たとて王宮へ赴いて話し合いなどできん。仮病を疑って医師を寄こされても、実際に腹が下ってドンドンピーヒャラ大騒ぎの容体を診れば、あきらめて帰るだろうさ。母さんは愛する夫を案じて泣きながらの看病要員だ。目薬の準備も抜かりない」


「ええっと……」


「ともあれ、卒業おめでとう。お前は疲れているだろう。ゆっくり風呂に入って、今日はもう休みなさい」


「おやすみ、マレーネ。また明日」


 わらわらと現れた侍女たちに囲まれて湯殿へと連れ去られていくわたくしに手を振り、ジュール様はお父様と共に執務室へと入っていった。


 重いドレスと装飾品から解放されて髪を下ろし、全身まるっと洗われた後に寝支度を整えてベッドに放り込まれたわたくしは、目を閉じてジュール様と過ごした三年間に思いを馳せた。


 出会いは入学から暫く後、通学時に学院の馬車停まりで。小雨の降るその日はお父様と同乗しており、わたくしを学院で降ろした後に馬車はそのまま西の峠を越えて商談先のオヴェスト村へ向かう予定だった。


「行ってきます。お父様もお気をつけて行ってらっしゃいませ」


「うむ。土産にはマレーネの好きなオヴェスト銘菓の『まろまろマロンタルト』を買って帰るからな」


「ふふっ、秋果実茶オータムティーを用意してお母様とお帰りを待って……?」


「あの、お話に割り込んですみません。オヴェスト村へ向かわれると聞こえたのですが、これから雨脚が強くなり雷も発生しますので、峠道を走るのは危険です」


「おぉ。君は、天候が分かるのだね?ご親切にありがとう。回り道でもクルヴァ街道を通って行くことにするよ」


 お父様は素直に忠告に従い、近道の峠越えをやめた。


 結果、天気は荒れて峠道は土砂崩れと落雷による倒木で塞がれ通行不能になり、馬車数台が山中で立往生。けが人が出る事態になったと後に知った。


 お父様は「命の恩人をうちの婿殿に!」と張り切ってお礼の菓子折(まろまろマロンタルトプレミアムVer.)を持ってヴァレ公爵家に突撃し、めでたくジュール様とわたくしの婚約が調った次第である。


 侯爵家への婿入りに備え、騎士科だったジュール様は領地経営学科に転科してくれた。ありがたいことだ。


 普通、格上の公爵家に日参して熱烈息子クレクレ攻撃を仕掛けたりはしない。うちのお父様、ちょっとオカシイ。後に公爵閣下に聞いたところによれば「愛と責任を持って必ずや幸せにいたしますので、息子さんをください!」とか宣っていたらしい。いや、誰が?うちのお父様、かなりオカシイ。でも、その可笑しさが公爵閣下の壺に嵌まったようだ。


 天候は相場を動かす。晴なら大胆に、雨は慎重にと、人の感情や経済活動に影響を与える天の動きを把握しているジュール様のスキルは尊い。王家の姫と年齢が合えば取り込まれていただろうし、グラナータ公爵はローザ様と娶せたかったのに第二王子を押し付けられて相当に不満を抱いていた。確かに幼馴染同士で結ばせてもいいねと話したこともあったから、王家の横入りはヴァレ公爵家にとっても残念だったが、だからと言って、もしもの時のためにジュール様を誰とも婚約させず娘の婿候補としてお取り置きしておいてくれという身勝手な要望には思うところがあったそうで、王家もグラナータ公爵家も同等に不快だと仰っていた。それなら愉快なトラン侯爵家と縁づきましょうと、割とノリノリでプロポーズ(お父様の)が受け入れられた由。うちの評価は面白れー枠なのか。それでいいのか、トラン侯爵家。


 公爵閣下は味方でも、四家が揃うと圧倒的にうちだけ格下。分が悪い。


 カレーで腹を下して召喚無視の時間稼ぎをしたところで、無駄な抵抗だと思うけれど……まあ、なるようにしかならないわ。


 寝よ。



「お嬢様、起きてくださいませ」

「ほえ?」


 翌朝、まだ薄暗いうちに揺り起こされ、軽やかな旅装を着つけられて朝食も摂らぬまま馬車に放り込まれた。


「食事処に着いたら起こすから、寝ていればいいよ」

「……はあ」


 頭がまったく働かないので、向かいの座席で微笑んでいるジュール様に勧められるままクッションに倒れ込んで二度寝。


 起きたら港にいて、馬車5台分の大所帯で移動していることに気づいた。侍女8人に従僕4人、下男3人、一台は丸々荷物で、護衛は馬に乗った3人と御者台に2人。


 港町の食事処で遅めの朝食を摂ったら、停泊している客船に荷物を積込み、乗船した一行はアルカ島へ。馬車と下男を乗せた馬3頭は戻っていった。


 アルカ島で下船したら貸馬車と馬が待っており、お父様が手配したヴィラへ向かう。


 お父様じゃなくわたくしたちが行くのか。


 貴族社会は恐ろしい。弱い立場のわたくしが各方面からの『説得』に煩わされないように暫く潜伏していろということだろう。


 エスタジ湖は青く澄んだ水面に木漏れ日を映してきらめいていた。


 ヴィラのスタッフやうちの使用人たちが荷下ろしや部屋の支度で慌ただしく働いている間、わたくしとジュール様は湖にせり出して設えられたウッドデッキに並んで座り、以前の宿泊客の忘れ物らしき竿を見つけて釣り糸を垂らした。


 時折モロコのような小魚が見えるが、餌を付けていない糸に掛かる筈もなく、端から釣る気もなかった。ただ二人で黙って水面を眺めている時間があまりにものどかで愛おしかった。


「これって、卒業旅行ですね。少し感傷的になってしまいます」

「卒業旅行か。うん、今はそんな時期だね」


 湖畔のヴィラで卒業旅行。ボートに乗ったり、温室の花をスケッチしたり、読書室のソファに背中合わせで座り、お互いに凭れ合って本を読み、読んだ本を交換して感想を述べ合ったり。


 婚約の卒業にもなるかもしれないけれど、悲しいだけではなく、一瞬一瞬がエスタジ湖の水面のごとくきらめく青春の良き思い出となって、いつかのわたくしを慰めてくれることだろう。


 楽しい毎日をのんきに過ごしていたわたくしだったが、5日目の早朝に叩き起こされ、侍女たちにボビンレースが幾重にも連なった重厚なドレスを着つけられて目をしばたたいた。


 なんすか?コレ。


「ああ、ピッタリ。先代の侯爵夫人がご使用になった『糸の宝石』のドレスを、わたくしどもがこの5日間、不眠不休でお直しいたしました。女神のごとくおきれいでございますよ、お嬢様!」


 むせび泣く完徹ナチュラルハイの侍女たちによって馬車に放り込まれたら、色気で人を殺せそうな礼服姿の淫魔……じゃなくて婚約者が座っていて、魂を抜かれたわたくしがポカン、と見つめている間に、アルカ島に一つしかない聖堂に到着した。


「今日の君は、いつにも増して美しいね」

「は?」


 いや、どの口が言う?美しいのはそっちじゃろ、ジャロってなんじゃろ……と、パニックに陥っている間に粛々と式典は進み、促されるままに結婚誓約書にサインを入れたら、リーンゴーンと鐘が鳴って、鳩が飛び花弁が舞う中、色気ダダ漏れの男に横抱きにされて見知らぬ島民たちの拍手と指笛と祝福の声に送られつつ馬車に乗せられヴィラへ戻った。


 わたくしがいない間に仮眠をとったのか、幾分か冷静になった侍女たちに取り囲まれてドレスを脱がされ、風呂に入れられ、凝った肩や首に香油を揉み込まれつつ、果実水を渡されたり、フルーツの甘煮を口に運ばれたりと、至れり尽くせりの世話を焼かれ、ガーゼ生地の柔らかな部屋着を着つけられたと思ったら、今まで使っていなかった2階の部屋に案内されて「おやすみなさいませ」と両開きの扉を閉ざされた。


 いや、まだ夕方ですけど?


「お疲れ、マレーネ」

「お疲れ様です」


 だだっ広い部屋だ。2階層のすべてがここのプレジデンシャルスイートになっているらしい。


 リビングルームの革張りソファに座ったジュール様に隣をポンポン、と叩かれ、30cm程の間隔を空けて腰を下ろした。


「結婚誓約書の写しは早馬で義父上に送っておいたから、敵への牽制に使えるよ」


「……敵?」

「そう、敵」


「ローザ様のことは」

「ん?」

「よろしいのですか?」

「誰に何を言われた?」


 誰に何を……と思い返せば、まあ多人数にいろいろと。皆わたくしが「愛されていない」前提の話だが、実にバリエーション豊富であった。


 曰く「愛されていないのに、いい気になるなよ」という戒め。曰く「愛されていないのだから、身を引いて他の縁談を探すべき」という助言。曰く「愛されていないくせに、なぜ愛し合う幼馴染同士を苦しめるのか」という叱責。曰く「愛されていないあなたを、お気の毒で見ていられない」という憐憫。もっとわかりやすく「愛されていなくても、自分が婚約者だ!と声高に主張してジュール様に縋りつき、ローザ様に赤葡萄ジュースをかけて平手打ちを食らわせてやるべき」という破滅要請等々。


 皆様お暇なのね……と脱力しつつ、一頻り話を聞いて、笑顔で「○○家○○様からの貴重なご意見ありがとうございます。必ず父に伝えて婚約の今後について検討いたします」とか「思い至らず恥ずかしい限りです。○○家○○様からジュール様のご心情を伝え聞いたので今後は身の程をわきまえますねと、本人に謝罪します」などと返していたら、顔色を変えて「ごめんなさい誤解でした何卒ご内密に」と逃げていき、同じ人は二度と来なかった。いちいち本当にチクったりはしていない。面倒くさいもの。


「マレーネ?」


 ああ、はい。何を言われたかですね?魅惑の公爵令息に「愛されていない」ことを思い知らせようと絡んできたご令嬢たちは、皆様共通に、わたくしをこう評されるのよ。


「ポリッジにレイピア女と言われました」


 ポリッジはパン粥。レイピアは刀身の細い剣。前世日本の諺では「糠に釘」「泥に灸」「豆腐にかすがい」「暖簾に腕押し」等に相当する。要は手ごたえがなくて空しいという意味ね。


「なぜ得意満面なのかな?」

「誉め言葉かと思いまして」

「そんなわけなくないか?」

「一目置かれているのかと」


 わたくし、頭の中はお喋りなのに省エネで無口だから、鬱憤晴らしに嫌味をぶつけても何も言い返せない気弱令嬢に見えるようだ。


 ところが、ねたそねみを晴らそうという目論見が徒労に終わった皆様は「ポリッジにレイピア女ヤバイわあぁぁ」と壁際でガックリ座り込み、チクられて自分の家にトラン侯爵家やヴァレ公爵家からの抗議状が届いたらどうしよう……と、令嬢人生の終焉に怯え震えていらっしゃったのだとか。


 侯爵家子飼いの密偵がサムズアップして「今回もお嬢の勝利ッス」と笑ったものだが、わたくし、何かの勝負に参加した覚えは一切ない。勝手に突撃してきて勝手に沈没したご令嬢たちの惨めな末路を、女形が得意なそばかす少年の密偵に身振り手振りで面白おかしく報告され続けた三年間。今思えば、芸人の身近な人モノマネみたいで、ちょっとした娯楽だったわね。


「身の危険は感じていないね?」

「心身ともにNOダメージです」


 物理的ないじめはない。婚約問題に相関関係がある四家の中では格下でも、侯爵令嬢のわたくしは、学院内の大抵のご令嬢より高位なので。普通に考えれば、言葉だけでもわざわざ絡んでくること自体どうかしている。


 結局、わたくしが妬まれるのはジュール様が無駄に美男子なせいだ。この男が悪い。


 元凶を睨んでいると、座る距離を詰めて首を傾げられた。近いな。


「なら、先刻の質問は何かな?」

「先刻の質問って何でしたっけ?」


「この期に及んで『ローザ様のことはよろしいのですか?』って、どういう意味だろう」


「言葉通りの意味ですが」

「じゃあ『よろしい』よ」


「はあ」


「私は君と婚約を結んでから一度たりとも、グラナータ公爵令嬢との間を誤解されるような不実な行いをした覚えはないが」


「はあ。ジュール様は常に婚約者のわたくしに誠実に接してくださったと思います」


「そうだね。誠実な私は、ちまたに流れている『愛のない婚約』という根も葉もない噂を払拭するため、良好な関係を周囲に知らしめようとしたのに、君に『蹴りますよ』と拒絶されてショックだったな。割と根に持っているよ」


「根に持たれても困ります。さすがに、学院内で0(ゼロ)距離のスキンシップは非常識でしたわ。婚約者としての節度は保っていただきませんと」


「そうだね。時に、ここは学院内ではないし、私はもう君の婚約者ではなくなったが……マレーネ、覚悟はできているのかな?」


「はい?」

「そうか。それは良かった」


 ニッコリと悪い笑顔で立ち上がった無駄美男子は、わたくしを肩に担ぎ上げ、問答無用で運んでいく。


 いや、違う。待て待て待て。今の「はい」は聞き返しの「はい?」であって、肯定・同意の「はい」ではない。疑問符をどこへやった?おいコラ、どこへ行く?


 プレジデンシャルスイートのリビングルームの先は、ベッドルームだった。




 無茶苦茶に愛された。




 次の日の昼近くに重い目蓋を開けたら、やけに清々しい笑顔が横にあった。


「おはよう、マレーネ。感傷的な卒業旅行は昨日まで。今日からは、めくるめく新婚旅行だね」


 この男……いつか絶対、蹴ってやる。


 わたくしは心に固く誓い、無言のまま目蓋を閉じて二度寝したのであった。


       ******


「……ジュール様」


 うたた寝から覚めたら、夫がソファの隣に座り、わたくしの頭を撫でていた。

「雪が降りそうだから、マレーネが風邪をひかないよう温度チェックに来た。この部屋、執務室より暖かいね」


「サボりにいらしたのね」

「そうとも言う」


「お疲れ様です」

「うん、疲れた」


 夫は体をずらせて横に倒れ、わたくしの膝に頭をのせた。


 卒業して2年後の予定だった婚姻を即座に結んでから半年。夫は侯爵家の婿として執務に励んでくれている。


 結局、お父様が召喚をのらりくらりと躱し続け、ジュール様とわたくしが3カ月も行方をくらませたことで、婚約見直しの話は立ち消えた。


 グラナータ公爵家としては、賠償の一環として、ジュール様とローザ様を婚姻させるという王命の発令を王家に要求するつもりであったようだ。その場合、息子を辺境にやってむざむざ死なせたくない王家としては、余ったトラン侯爵家の婿の座にカファール第二王子をねじ込んできたことだろう。


 だが、わたくしたちトラン侯爵家側の抵抗によりグラナータ公爵家の思惑が進まない事態は、王家にはむしろ僥倖となった。


 王太子夫婦にはまだ赤ん坊とはいえ王子がいることから、スペアを残すのはあきらめ、賠償金と慰謝料の一括支払い及び第三王子をグラナータ公爵家の婿に差し出す案を提示したところ、ローザ様本人から、カファール第二王子との婚約を継続し、公爵家預かりで様子を見て、更生すれば婿にしてもいいと恩赦が出たのだとか。


 良かったね、第二王子。まあ、前世で言う「昼休みに缶コーヒーの一本も買えやしない」と嘆きつつ妻の尻に敷かれて尻を叩かれ馬車馬のように働くげぼくになるとしても、バイオレンス開拓編年史の即死キャラよりはきっと幸せ。そして、いつか信頼を取り戻してローザ様といい夫婦になれるといいね。


 世の中、なるようになるものだ。


 わたくしは膝の上で目を閉じている夫の蟀谷こめかみを揉み、手のひらで目元を覆った。


 わたくしのスキルは『ゴッドハンド』だ。学業や仕事には大した役に立たないはずれスキルだが、疲れた夫のマッサージをしたり、ホットアイマスク代わりになったりで喜ばれている。


「はぁ……極楽」


 夫はもぞもぞと寝返りを打ち、わたくしの腰を抱いて腹に顔を埋めた。


 やめれ、重いわ。


「あっ、蹴られた」

「ふふっ」


 わが子よ、よくやった。



         <了>



      ***おまけ***


「おかしいな……なんでこうなった」


「いや、そりゃそうなるだろ。あの時点でトラン侯爵家に打診書を送るおまえの頭がおかしいだろ。あと、婚約者の家に不実がバレないわけないだろ」


「だな。だが俺は初恋に殉じた。わが青春に悔いなし」


「いや、悔いろよ。婿入り先を失って違約金を抱えて、これからどうするのさ、おまえ」


「まあ、働くさ。働くしかないさ」


「当てはあるのか?」


「エスタジ湖でモロロッコー漁師になるよ」


「モロロッコーって、あの『見えるのに釣れない幻の珍味』の?」


「そう。調べてみたら、俺のごみスキルだと思っていた『水切り』が役立ちそうなのさ。芸は身を助くとはよく言ったものだ」


「水切りって……平たい石を投げて水面に何度も跳ねさせる技だよな?」


「水面を跳ね進む様子が雌の動きに似ているらしくて、うまくやれば石の方向に仕掛けた網に向かって雄が大移動するそうだ。そのうち、モロロッコー御殿を建てておまえを招待してやるよ」


「おう。楽しみに待っているよ」


「まずは、最初に水揚げしたモロロッコーをトラン侯爵家に贈るのが目標だ」


「うんうん。ともあれ、俺たちのマドンナが幸せそうで良かったよな」


「マレーネちゃんに幸あれかし」


「けど、ジュールの野郎はムカつく」


「男の嫉妬はみっともないと言われても、あまりにもうらやま恨めしい」


「嫉妬のあまり神に願ってしまうことを禁じ得ない」




「「いつか誰かに蹴られろ!」」




<おしまい……だけど、誰の人生も、明日へつづいてゆくのです>


件の男は毎日嬉しそうに蹴られています。

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― 新着の感想 ―
カリャイの使い方がw 父最高w 料理長が頑張ってレシピ改善して、初恋殉職の元子爵令息の獲った魚で副作用なしのフィッシュカリャイを皆んなで食べられるといいと思いました すごくおもしろかったです!
カリャイが後半でちゃんとうまいこと活用されてる! おまけのオチもお見事、そうだったのか!と。 読みやすく、流れも展開もすごく引き込まれました。 素敵な作品をありがとうございます!
凄い。スッカリ騙されたw だからジュールは首を捻ってまで注視してたのね。
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