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第1話

 

 第1話 朝陽、エクスアリアへ:前編



【十数年後……202X 8月8日 夕刻(ゆうこく)】

【夢覚市(むざめし) 夢宮コンツェルンビル】



《「朝陽。分家に過剰な明日を救う力を与えたのが、誰なのか、忘れたわけではあるまい」》



 ――まさか……こんなことになるなんて、私だって予想外よ!



《『屋上です、A.Yルームエリア』》



 ◇夢宮コンツェルンビル 屋上 A.Yルーム付近◇



 ――あの腑抜け共! 絶対に許さないんだから!



『朝陽よ。今は朝陽ルームで状況を確認すればよかろう』


「分かってる」



 ――夢斬士A.Yチームルーム。

 あの日以降、分家の討滅依頼を代行してる後輩のあの子と二人のチーム。



《『夢斬士A.Yの入室を確認。こんばんは、夢宮朝陽様』》



 ――とりあえずシステムを起動して状況を確認!



《『Y.K〈ユメキリ〉ネットワーク中枢管理モデレーター起動』》



 ――アイツはまだ十代半ばの高校生……。



「チッ!」



 ――考えただけでイライラする!



『朝陽よ、夢宮タケミツと夢斬貮型の現在地を表示する』


「お願い」



[夢宮タケミツの現在地:現実世界エクスアリア 詳細不明]



 ――やっぱりエクスアリア……、詳細不明じゃなくて、一体どこにいるのよ!



[分家用夢斬システム参与機刀〈夢斬貮型〉の現在地:現実世界エクスアリア 詳細不明]



「チッ! 腑抜けミツと夢斬貮型……なんてことしてくれたわけ!」



 ――人の明日を陰ながら護る夢宮一族の分家に生まれたくせに、あんな創られた異世界ファンタジーの世界に執着するなんて!



「なーにが『異世界に行きたい! 異世界に行きたい! 朝陽ちゃんさー異世界に行ける方法、なんか無い?』だよ! あんな方法で異世界に行くなんて! 腑抜けが!」



 ――あんな方法を使えるのは夢斬貮型しかいない!



『朝陽よ。エクスアリアにいる夢斬貮型からの通信のようだ』


「うん、分かった。通信を繋いで」


『朝陽よ、了解した』


 


【夢斬貮型と通信開始しました】



 ――はぁ……なんで夜じゃないのよ、ていうか本当に行くなんてあり得ないんだけど!



「おい! 夢斬貮型! お前の悪ふざけは度が過ぎ――」


《『朝陽ちゃん、まさか本当に――』》


「言い訳無用、それとごめんじゃないのよ腑抜ケミツ! お前は何やってんのよ!」


《『ごめん、朝陽ちゃん――――』》



 ――あれ? タケミツの後ろに人影が見える……髪の長い女の子?



《『でもこの世界、殺気――』》


「チッ! その世界に勝手に侵入したのはお前達だろ?」


《『それは夢斬貮型が勝――』》


「その世界が殺気を放つファンタジーの世界みたいだから、迎えに来てよ……って? 甘えるな! 二人で仲良くやってな!」



『ちょっ、待ってあ――』



【夢斬貳型と通信終了しました!】



 ――腑抜け、腑抜けすぎる! こっちの世界がどうなってるかも気にならないなんて……、自分の事ばかりの腑抜けが!



『朝陽よ。まさか夢斬貮型の弱みを突かれるとはな』


「そうね。夢斬貮型の脆弱性を突くなんて……もし夢鬼理だったらどうしてた?」


『我の場合か? 我は十数年前の朝陽の夢領域で朝陽と刻想の契りを交わしたあの日から、朝陽の側にいる想いの力である夢鬼理となる事を我自身が決めたのだ。それ故、朝陽の側を離れる事などありえぬ』


「ありがとう」


『礼には及ばん、朝陽よ』



 ――夢鬼理がいなければ、私は夢喰に明日を奪われ、今もここにはいない……、だから夢鬼理は命の恩人。

 


《『技術統括部最高責任者S.Yが入室しました、こんばんは、夢宮心裡(ユメミヤ シンリ)』》



 ――ん? なんであの人が? どうしたんだろう……、まあいいっか。 



「とりあえず、あの腑抜け達を回収するためにエクスアリアに行かないといけないから、だから準備をお願い」



『朝陽よ、了解した』




 ――本当に全く、あの子と一緒で腑抜けミツは腑抜けミツなんだから!



《「あーさひ!」》


「うわっ! びっくりした……驚かさないでよ!」


「ごめん、ごめん」



 ――今日も眼鏡が似合ってる、それと白衣も。



「心裡、なんで来たの?」


「それはね。タケミツちゃんが夢斬貮型ちゃんを使って、本来接続できないはずの別の世界に侵入したからかな」


「なんで知ってるのよ」


「あのねー! 私はこれでも夢宮コンツェルンの技術統括部最高責任者! だから『朝陽のサポートをせよ』と総帥から命じられたのよ」


「サポートしてくれるの? それは助かるよ」


「夢領域ではなく、別の世界内でのサポートは初めてだけど……なんとかやってみるわ」


「ありがとう、心裡」



 ――腑抜ケミツに夢斬貮型を持ち出された責任を取るのは、システム管理者の私……しゃーない、か。



「とりあえず、別の世界のエクスアリアにいるタケミツちゃんと夢斬貮型ちゃんが何処にいるのか、調べてみるから」


「お願い、心裡」



【夢宮タケミツと夢斬貮型の現在地、探知中……】


「このY.Kネットワークシステムを私達が生み出してから、こんな事は一度も無かったのにね」


「まあね……でもまさか朝陽の力の恩恵を受けているはずのタケミツちゃんのご両親が、朝陽の力の事を今更総帥に抗議するなんてね」


「そうなんだよねー。あのタケミツの行方不明のニュースを家で見てたらさ、お父様いや総帥様から呼び出されてさー」


「あのニュースね。確かにタケミツちゃん達が行方不明になってから、丁度一週間ぐらい経つから、ニュースでも大々的に報道されてたわね」


「そうそう。だから総帥様に『朝陽。分家に過剰な明日を救う力を与えたのが、誰なのか、忘れたわけではあるまい』って言われた後、『分家にも過剰な力を与えてしまった、お前の選択の結果と責任。力を持つ者の責務を果たすため、エクスアリアへと渡りタケミツと夢斬貮型を回収せよ』って、命じられたんだよね……はぁ」


「それはため息を吐きたくなるわね」


「でしょー! ありがとう、心裡!」


「いえいえー。あっ、言い忘れていたけど、夢宮分家の夢斬システムの活動停止状態は部下達が持ってるシステムバックアップと夢斬参型ちゃんのおかげで、一応復旧はしたから」


「ありがとう、心裡。それと夢斬参型もありがとね」



【夢斬参型と通信を開始しました!】



《『礼には及びませんよー! マイマスターアサヒ。夢斬参型さんは明日を護る為なら、どんな事でも基本的に合点承知なのです!』》


「これからもお願いね、夢斬参型」


《『合点承知なのです、マイマスター朝陽』》



【夢斬参型と通信が終了しました!】




「夢斬参型はもう少し堅い性格の刀だったのに、心裡のおかげかな?」


「私のおかげ? 一体どういうことかな?」


『朝陽、心裡よ。我が用意した我の分体達とはいえ、各々の性格がある。人に創られし人ならざる頭脳と我達は理がそもそも違うのだ』


「ふふっ、分かってるよユメキリ」




【夢宮タケミツと夢斬貮型の現在地の捕捉が完了!】


「心裡、あの腑抜け達はどこにいる?」


「ちょっと待ってね。えーーあれっ? タケミツと夢斬貮型ちゃんは別行動してるみたい」


「えっ? どういうこと?」


「今、解析してる! えっ?」


「どうしたの?」


「タケミツちゃんの捕捉マーカーが消失して追跡できなくなった……」


 ――本当だ……、タケミツの現在地が[LOST]表示になってる……。


「はぁ……全く! タケミツめ!」


『朝陽よ。我達もタケミツと夢斬貮型と同じ世界へ赴けば、あ奴らの現在地も分かるのではないか?』


「そうだね、夢鬼理」


『ああ……エクスアリアへ赴く準備は完了している。朝陽よ、どうするのだ?』


 ――どうするも何も……私がこの目で腑抜け達を見つけ出すしかない!



「今からエクスアリアに行く!」


『了解した、朝陽よ』


「じゃあ心裡、向こうに着いてからのサポートをお願いね!」


「分かったわ! ああーそう言えば、あの後輩の子は連れていかないの?」


「あー、腑抜け達を回収するだけの簡単な任務だからさ、私一人で十分。それにあの子がいたら、面倒なことになりそうだしさ……」


「なるほどね。今、転送転移ゲートの最終チェックは完了したわ、いつでもいけるわ」


「ありがとう! じゃあ行ってきます!」


「気をつけて行ってらっしゃい! またあとでね」



 ◇屋上 転移ゲート[エクスアリア行き]前◇



「さぁ、夢宮朝陽! 明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれだよ……」



 ――私が生まれた夢宮一族にある遥か昔から受け継がれた掟……。



『朝陽よ。お前の明日を救う力である我を纏うがよい』


「うん! 今日もよろしくね、夢鬼理!」



【夢宮朝陽がユメキリバトルスーツを装備しました!】



「ユメキリバトルスーツ……良好! 夢鬼理ガジェット……良好! ユメキリヘッドギア……良好! 野営設備……良し! YumePay……残高良し! 夢斬士武装も良し」


 ――このゲートを潜った先のエクスアリアは、夢領域か現実世界か……、それは向こうに着けば分かるはず!



【夢鬼理ネットワークシステム管理者:夢宮朝陽が夢鬼理ネットワークの転移ゲートを通過しました!】




「別の世界は存在しない……、別の世界は存在しない、別の世界なんて存在しない……」




【現実世界:エクスアリア内のセーフティー転送転移座標ポイントをキャッチ……夢宮朝陽の転移実行中】





 ――人々の夢領域へ繋げる為の夢鬼理ネットワークシステムが、夢斬貮型によってエクスアリアと接続されたのは、別の世界の人達も眠る時に夢を見るから……?




【エクスアリア全域の夢喰反応を探知中……探知不能……】



「探知不能、か……、夢喰を討滅しちゃった後に、夢領域ゲートを閉じる術を持っていないなら、厄介な事になりそうね」



『朝陽よ。我がいつでも側にいるから心配するな!』



「うん! 頼りにしてるよ!」



『うむ。もうじきエクスアリアに着きそうだ』



「了解! じゃあ行きますか! ファンタジーの現実世界に!」



【現実世界:エクスアリア内、ヴェルハラの森へ到着しました!】



 ――えっ? ヴェルハラの森? なんで森なのよ!




 第1話 朝陽、エクスアリアへ 前編:完。

 第2話へつづく! 

*2026年3月30日(月) 内容の構成変更改訂を行いました。

*2026年9月5日(土) 一部内容の改訂を行いました。

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