第21話 エクスアリア炒飯と夢鬼理ネットワーク その4
エクスアリア炒飯と夢鬼理ネットワーク その4
ボワ! ジャー! ジャー!
「うまそうな匂いだな…………では、炒めた飯を作っている夢月弥乃葉が、エクスアリアにいる理由を話そう」
陰楼さんが弥乃葉をエクスアリアへ連れてきた理由をゆっくりと語り始めた。
「俺は普段、夢宮一族の主として、夢覚の地で活動しているが、俺が夢覚の地で眠る時、夢覚の地の刻は、鬼理刻の力で時の歩みが止まる。
これが夢覚の地からエクスアリアへ俺が来れる理由で…………簡単に言えば、俺の眠る時に見る夢が、エクスアリアに変わっただけだ。
俺の肉体毎、エクスアリアへ移る、そんな感じか」
「え……と、つまり? 鬼理刻刀が夢鬼理ネットワーク? ユメキリ、どういうこと?」
『朝陽よ、朝陽は今、幻か?』
「えーと、違うね……起きた状態で、夢覚市から来たから……」
『左様、夢鬼理ネットワークは、本来なら人の夢領域に入る事を目的とし、これが出来るのは、幾つもの世界を渡る存在であった我達、刻想器の力が残り物…………朝陽が今、生きてエクスアリアの地に足をつけている証』
「ま、そんな所だ。エクスアリアで眠る時、俺は夢覚の地へ帰っているのだ…………そして今日の朝、お前がエクスアリアに来た最初の場所、ヴェルハラの森の閉じた門を調べていた……」
陰楼さんの話では、ヴェルハラの森は、女神エクスアリアの泉に納められているユメキリII型と女神エクスアリアの力によって、夢喰が近づけない聖域となっていたという。
「朝陽様! 女神エクスアリア様とユメキリII型さんが、ヴェルハラの森を今も護ってくださっているのですね!」
「シャリアさん、予想以上だね、良かったね!」
「はい、朝陽様!」
故郷であるヴェルハラの森とヴェルレスト村が、聖域と化したと聞き、喜ぶシャリアさんを見ながら、ヴェルハラの森以降話の出来事を語り始めた。
「夢鬼理ネットワークの閉じられた門を、俺は鬼理刻の力の使い、無理矢理こじ開けた。
エクスアリアに存在している夢宮陰楼である俺として、お前の時代の夢覚の地、夢覚市へ渡ったのだ」
「お待たせしました! 大盛エクスアリア炒飯です!」
大盛に盛られたエクスアリア炒飯のお皿が、陰楼さんの目の前に差し出された。
「夢月、分かってるじゃないか!」
「ふっふ〜ん……じゃなかった。
それが『ここが、俺が護った明日の夢宮家か! すげえな、朝陽! 俺は、今も感動しているぜ!』と陰楼様が言って…………いった!」
「夢月! 俺はそんなことは一言も言ってはいない。第一、高き塔の頂上に現れた俺に向かって、いきなり刃を向けてきたのは、どこのどいつだ?」
「そ、それは……『夢宮本家の令嬢を拐った! 悪の組織の刺客は、正義の夢斬士である夢月 弥……』」
「はいはい、お前が俺に刃を向けてきたのは、ちゃんとあの時を残す機械に残っているからな」
――時を残す機械? それって、監視カメラの事?
「だから……それは、あの後ちゃんと謝ったでしょ!」
「うんうん、この炒めた飯は、夢月にしては美味だ」
「夢月にしては、は余計! てか聞いてないし……はぁ……で、その後の話はね」
弥乃葉の話では、陰楼さんが夢覚市の夢宮コンツェルンビルの屋上に現れたのが、202X年8月23日であり、陰楼さんが祖先である事をお父様達を含めた夢宮本家の人間は、誰も初めは、信じなかったという。
――普通に考えたらこんな事はあり得ないないし、いくら夢宮コンツェルンが変わった組織でも、あり得ないと判断するよ。
「ふー、美味だった。俺がお前の時代へ渡ったのは、お前が無事だと夢宮一族に伝えたかっただけだ。
こんつぇるん? の夢宮の1人、心裡とやらも、お前と最後にやり取りしていた相手だったみたいだからな、かなり心配していたぞ。
だからこそ、お前の時代で、夢宮一族を率いるお前の父君は、夢月弥乃葉をエクスアリアへ派遣したのだ」
――話が複雑すぎて、頭の整理が追いつけない…………
『朝陽よ、刻想器だったユメキリである我と朝陽がした明日を迎える約束と別の刻想器だった我であった鬼理刻と夢宮陰楼の明日を護る契約が、遥か昔の夢宮一族と本来の我達がいる刻の夢宮一族が、明日を迎える想いで繋がっている、そう夢宮陰楼は言いたいのだろう』
「流石だなユメキリ、俺の言いたい事をまとめてくれた」
『我、ユメキリはユメキリ、鬼理刻は鬼理刻、刻想器は刻想器だ』
「そう言えば、鬼理刻も同じことを言っていたけっな…………夢月、お前が持って来た物は、お前が説明しろ」
「はい、『朝陽、ユメキリちゃんにこれを渡して、心裡ちゃんより!」 というわけで、これを心裡さんから預かって来た」
弥乃葉が心裡から預かって来た物、それはユメキリの夢鬼理ガジェットとコンツェルンにある夢斬参型の夢斬ガジェットを利用する事によって、私の現在地をコンツェルン側で把握するパーツだった。
「あくまでそれはねー、時間ズレの対策として、ユメキリさんの夢鬼理ガジェット内とコンツェルンにある夢斬参型のサーバーガジェット内を送信機と受信機で繋ぐ物だって、心裡さんが言ってた」
ありがとう、心裡。
これで私も安心して、エクスアリアで活動できるよ。
「私も『正義の夢斬士、夢月 弥乃葉、19歳!』として、朝陽とシャリアさんの旅仲間として同行するから、改めてよろしくね」
「え? エクスアルディアギルドの夢喰討滅依頼は?」
――フェルレト支部の夢喰討滅依頼が来たらどうするのだろうか?
「鬼理刻刀の力が戻った今、フェルレト支部や今の時点で、お前達が関わらない場所の夢喰討滅依頼は、俺一人で十分だ…………だからしばらくお別れだ、朝陽」
「はい。明日、フェルレトの街を出ます。
陰楼さん、また会いましょう」
「ああ、またな、朝陽」
ちょっと騒がしい戦力が入ってくれたのは、嬉しいけれど、私達の本来の目的地は、スレイアアリア人の街、エルタティアだ。
陰楼さんと話を終えた私達は、フェルレトの街の最後の夜を過ごした。
――そう言えば、弥乃葉が持っていた夢羅鬼理って、結局なんだったの? 明日、弥乃葉に聞いてみよ。
第21話
エクスアリア炒飯と夢鬼理ネットワーク その4 完
第22話へつづく!




