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しかし、衛兵の話に僕は疑問を感じていた。
事件が起こったのは闇に染まる深夜。
しかも、証言しているのは酔っ払いだという。
見間違え、ただの勘違いという可能性だって十分あるだろう。
だが衛兵はそれを疑っていない。
むしろ、断片的な犯人の特徴を聞いてすぐに目星がついたというのだ。
最近、中心街の生鮮市場では強盗事件が相次いでおり、
かなりの被害が詰め所に届けられている。
そして、その犯人の特徴が今回の事件とほぼ一致しているのだという。
「犯人は、コロシアムから脱走した女奴隷闘士。それも、とびっきりスゴ腕のな。
名前は、ルーシー」
僕は耳を疑った。
その日は、店に『CLOSED』の札をかけたままにした。
店長がいないのだから当たり前だ。
とりあえず、店に戻った僕は、誰に言われるでもなく惰性のように店の掃除をしていた。
何か作業でもしないと落ち着かなかったのだ。
雇い主を失った僕は、これからどうなるのか。
どうやって生活をしていけばいいのか。
あの女の子が本当に店長を殺したのか。
考えは、まとまらなかった。