第四話 「E級依頼」
「……嫌な予感しかしない」
レインはギルドからの封筒を見ながらため息を吐いた。
とはいえ、無視するわけにもいかない。
冒険者ギルドからの正式な呼び出しは、基本的に拒否不可だ。
最悪、登録停止になる。
今のレインにそれは痛すぎる。
「ちょっとギルド行ってくる」
そう言うと、ベッドの上のシエルが不安そうに顔を上げた。
「……戻ってくる?」
レインは少しだけ驚く。
その問い方が、妙に子供っぽかったからだ。
「戻るよ」
「ほんと……?」
「宿代払ってるし」
そう言うと、シエルは少しだけ安心したような顔をした。
その瞬間。
⸻
信頼度:3 → 5
⸻
「また増えた……」
「え?」
「いや、なんでもない」
レインは慌てて部屋を出た。
◇
冒険者ギルドは昼間から騒がしかった。
酒臭い冒険者。
受付嬢へ絡む男。
依頼ボードの前で騒ぐ新人。
いつも通りの光景。
だが、レインが入った瞬間。
空気が少し変わった。
「お、追放された雑用係じゃん」
「まだ冒険者続ける気なのか?」
「次の寄生先見つかった?」
クスクスと笑い声が聞こえる。
レインは無視した。
慣れている。
三年間、《黎明の剣》の雑用係として有名だったからだ。
その時。
視界にログが浮かぶ。
⸻
【敵意】
【軽蔑】
【嘲笑】
⸻
「……便利だけど嫌な機能だな」
小さく呟きながら受付へ向かう。
受付嬢のエマは、レインを見ると少し困った顔をした。
「レイン君、来たのね」
「呼び出しって何ですか?」
「えっと……実はね」
エマが言いづらそうに視線を逸らす。
すると背後から、聞き慣れた声がした。
「よう、雑用係」
レインは振り返る。
そこにはクラウスたち《黎明の剣》が立っていた。
リリカ。
ミリア。
全員いる。
クラウスはニヤニヤ笑いながら近づいてくる。
「お前さ、俺たちの共有倉庫からポーション持ち出しただろ」
「……は?」
レインは眉をひそめた。
「持ち出してない」
「でも在庫減ってたんだよなぁ」
クラウスは肩をすくめる。
周囲の冒険者たちがざわつき始めた。
「マジかよ」
「追放された腹いせか?」
「最低だな」
レインは静かにクラウスを見る。
その瞬間。
ログが浮かんだ。
⸻
【嘘】
成功率:91%
⸻
「……成功率?」
思わず呟く。
クラウスが眉をひそめた。
「何ブツブツ言ってんだ?」
レインは視線を細める。
91%。
つまり。
このままだと相手の嘘が通る確率?
その時。
新しいログが表示された。
⸻
【選択可能】
対象:
クラウス
発言成功率:
91% → 37%
変更しますか?
⸻
「……は?」
レインは固まる。
変更?
これ、変えられるのか?
「おい、黙ってないでなんとか言えよ」
クラウスが苛立ったように言う。
ギルド内の空気も完全にレイン疑惑へ傾いていた。
受付嬢のエマまで困った顔をしている。
レインはゆっくり息を吐いた。
試すか?
意味は分からない。
でも。
このログは、今まで嘘をつかなかった。
レインは小さく呟く。
「……変更」
瞬間。
視界のログが変化する。
⸻
発言成功率:
91% → 37%
変更完了
⸻
次の瞬間だった。
クラウスが口を開く。
「だいたいコイツ前から――」
だが。
急に言葉が止まった。
「……あ?」
クラウスが困惑した顔になる。
周囲の冒険者たちも首を傾げた。
「いや、待て……そもそも証拠は?」
「え?」
「ポーション管理、お前がやってたよな?」
空気が変わる。
クラウスの表情が引きつった。
「そ、それは……」
今度はクラウスの頭上へ文字が浮かぶ。
⸻
発言成功率:34%
⸻
レインは目を見開いた。
本当に変わった。
しかも。
リリカが怪訝そうにクラウスを見る。
「……あんた、ちゃんと確認したの?」
「いや、でも減ってたのは事実で……」
「勘違いじゃないの?」
空気が完全に逆転していく。
レインの心臓が大きく跳ねた。
(これ……ヤバくないか……?)




