4話 真の豊かさ
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真の豊かさ
エドランドの街は、今や「錬金術の聖地」と呼ばれていた。
母は、領主から贈られた立派な工房の二階で、私たちと夕食を囲んでいた。
「リュウ、シオン。今日も一日、お手伝いありがとう」
リュウは、母の助手をしながら「素材鑑定」の才能を爆発させ、今やギルドで最も信頼される鑑定士になっていた。
私は、母の理論を数式化し、効率的な大量生産のシステムを作り上げた。
食卓には、かつての冷え切った屋敷では考えられないほど、温かくて美味しい料理が並んでいる。
そこへ、工房の門番(元Sランク冒険者のカイルたち)から連絡が入った。
「エレーナさん。門の外に、薄汚い男が来てるぜ。『俺はここの主の夫だ!』って喚いてるが、どうする? 追い返していいか?」
窓から下を見ると、ボロボロの服を着て、衛兵に組み伏せられているアルベルトの姿があった。
彼は私たちを見つけると、必死に叫んだ。
「エレーナ! 許してくれ! お前がいないとダメなんだ! さあ、一緒に王都へ戻ろう。今なら特別に、正妻として扱ってやるぞ!」
母は、一瞬だけ彼を見つめた。
そして、かつて彼に言われた言葉を、そのまま返した。
「アルベルトさん。ここは『女の趣味』の場所ですから、あなたのような高貴な方にはふさわしくありません。どうぞ、お望み通り『自由』な生活にお戻りください」
「なっ……! 待て、エレーナ! 頼む、金を、金をくれえええ!」
引きずられていく父の背中を見ながら、私たちは静かに窓を閉めた。
もう、あの声が私たちの心を揺らすことはない。
母は、私たちの手を取り、微笑んだ。
「貧乏になる覚悟はしたけれど……本当の豊かさは、ここにあったわね」
私たちは同意した。
父の浮気で失われた信頼ではなく、母の錬金術と、三人の絆で築いたこの生活。
それこそが、何物にも代えがたい、私たちの真の財産だった。
エルドランドの夜空には、三人の新たな星が、これまで以上に強く輝き始めていた。
(完)
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