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贖罪のブラックゴッド 〜神への反逆者〜  作者: 柊 春華
~穢れた大地に神の裁きを~ 第三章:傍に居たくて《リライアンス》
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第三章 傍に居たくて③


 通路一帯を覆う影に浮かぶ無数の赤い眼がニタニタと笑う。



「ここは立ち入り禁止の区画だぜ? 勝手に入ってくるなんていけねーなあ。いけねーよ」


「ちゃんと許可は取っているが?」



 輝は機械鎌に手を掛けて即応の態勢を取る。夕姫、レイ、イリスの三人も警戒を厳とした。



「ヘッヘッヘ、テトロを【魅了】してだろ? そりゃ許可をもらったって言わねーな。鍵をパクってんのと一緒だぜ」



 刹那、足元から漆黒が這い上がってきた。足を絡め取られて動きを封じられそうになる。



「ちっ」



 とっさに足元に向けて【弱者の抵抗】ソード・オブ・ザ・ハートを放った。床は爆散して拘束を振り解き、輝自身も爆風で後ろに弾き飛ばされる。



「輝くんっ!?」


「警戒を解くな!」



 床を転がり即座に体勢を立て直しながら、驚声を上げる夕姫に叫声を飛ばす。


 通路を覆っているのは影だ。つまり敵は全方位から攻撃が可能だということ。



「おいおい、自分ごと影を吹っ飛ばすなんて無茶するなあ。テトロも巻き添え食って吹っ飛んじまってんじゃねーか。ご老体はもうちっと労ったほうがいいんじゃねーの?」



 爆風の煽りを受けて床に倒れているテトロを影が飲み込んだ。



「ほい、これでテトロの避難は完了っと。それじゃ侵入者の排除をおっ始めるとすっかね」



 殺意が膨れ上がる。



「レイ! イリスと夕姫を守れ!」


「はいっ」



 床、壁面、天井。輝の指示と同時にあらゆる方位から黒い棘が突き出された。


 棘に貫かれるよりも一瞬早く、レイの張った障壁が夕姫とイリス含めた三人を包み込んで攻撃を阻む。


 輝も自身で障壁を展開して身を守った。



「おおーっ、うまく守ったな! けどどれだけ持つかなーっ?」



 棘による攻撃が間断なく繰り出される。全方位から放たれる攻撃から身を守るために輝たちは障壁の中から動くことができなかった。



「思ったより硬ぇな。ちょっと強めに行くぜっ!」



 先程よりも太く鋭い棘が四人を襲う。それでも守りに特化したレイの障壁はビクともしない。


 しかしそれより劣る輝の障壁には亀裂が生まれた。



「輝さん!」



 それを見たレイが輝の周りにも障壁を展開した。助かる。



「どうしたどうした!? 亀になって縮こまってるだけかあ!? もちっと根性見せたらどうだよ王様よーっ!」



 状況はかなりまずい。全方位から攻撃されては逃げ場がない。敵の位置がわからない以上は反撃も難しい。


 加えてここは『魔導連合』の本部。このまま守りに徹していれば、いずれは増援が来て事態は悪化するだろう。


 何か手を打たなければならない。


 機械鎌にシリンジを再装填(リロード)。六つのシリンジ全てを使って術式を起動。



法則制御・二重奏ルール・ディファイン・デュオ――|・魔力装填・術式強化・《ペイン・オブ・ザ・ブラッド》――魔力圧縮・一点解放ソード・オブ・ザ・ハート!」



 装填可能なシリンジ六つ全てを使用し、【強化】まで施した特大の魔力砲撃を放った。


 通路は一本道。仮に敵がこの通路内にいるとするのならばただではすまない。倒すまではいかずとも何らかの防御行動を取るはず。


 それを取っ掛かりに居場所を掴むことができれば、こちらも攻勢に出られる。通路内にいなかったときのことは後で考えればいい。


 蒼い光が通路を破壊で飲み込んだ。衝撃。爆音。天井と床は表面を剥ぎ取られていくが、牢獄のガラスだけは傷一つ付かない。


 転生体を閉じ込めるための牢がこの程度の魔術で壊れるほど脆いはずがないか。


 あわよくば転生体たちを牢から出せればとも思っていたが、そう簡単にはいかないらしい。


 囚われている転生体たちは破壊の奔流に驚きと恐怖で身を縮める。牢が堅かったことが幸いして被害は出ていない。


 なら問題はない。そう割り切った。


 通路を覆っていた影が波を引くように奥へと消えていく。魔力砲撃を防ぐために術式を維持できなくなったか。


 ならば本体が姿を現しているはず。術式を再構築する暇を与えるわけにはいかない。



「術者は奥だ!」


「ボクがいく! 輝たちは早くアルフェリカを探して!」



 全身から神名を輝かせる夕姫が駆けて行った。いや、今のはウォルシィラだ。


 シャドウを倒すことが目的じゃない。ウォルシィラが足止めをしてくれている間にアルフェリカを救出して脱出する。


 風の如く駆けるウォルシィラに遅れて輝たちも通路を走りながらアルフェリカの姿を探した。


 どこだ。どこにいる。


 通路は奥が見えないほどに長い。その広い場所にある牢獄全てに転生体が囚われていた。


 牢の前を通る度に転生体と目が合った。助けて欲しい、と視線に込められた願いを理解しながら見て見ぬ振りをする。


 全員を助けることはできない。全てを救うことはできない。アルフェリカを救出することだけに集中しろ。


 足が止まりそうになる度、自分にそう言い聞かせる。口の中で鉄の味がした。


 通路の奥から激しい戦闘音が聞こえてきた。ウォルシィラが時間を稼いでくれているとはいえ、あまり時間をかけるわけにはいかない。


 そして――



「アルフェリカ!」



 探し求めていた姿を見つけた。



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