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四度目は嫌な死属性魔術師  作者: デンスケ
第十二章 魔王の大陸編
374/515

三百六話 英雄神の復活を知る大魔王

遅くなってすみません。

《生命力が十万上がりました!》

《【巨人】と【龍神】の神格を獲得しました! 【亜神】に【巨人】と【龍神】の神格が統合されました!》

《【投擲術】が【怨投術】に覚醒しました》

《【鎧術】と【盾術】が、【魂格滅闘術】に統合されました!》

《【剛力】、【超速再生】、【冥界神魔術】、【従群超強化】、【魔砲発動時攻撃力増強】、【魂纏時能力値強化】、【殺業回復】、【自己強化:殺業】、【杖装備時魔術力強化】、【統血】、【虚王魔術】、【魔術精密制御】、【魂格滅闘術】、【同時多発動】、【神霊魔術】、【魔王砲術】、【高速飛行】、【筋術】、【神喰らい】のレベルが上がりました!》




 ゴーン、マドローザ、そしてブラテオの魂を喰らったヴァンダルーは、皆と勝利の勝鬨をあげ、その足ですぐジョブチェンジ部屋に入った。

「また何か新しいジョブが増えているかな?」

 そう言いながら水晶に手を触れる。




《選択可能ジョブ 【堕武者】 【蟲忍】 【ダンジョンマスター】 【虚王魔術師】 【蝕呪士】 【デーモンルーラー】 【創造主】 【タルタロス】 【荒御魂】 【冥群砲士】 【魔杖創造者】 【魂格闘士】 【神滅者】 【クリフォト】 【冥獣使い】 【整霊師】 【匠:変身装具】 【虚影士】 【バロール】 【アポリオン】 【デモゴルゴン】 【魂喰士】 【神喰者】 【ネルガル】 【羅刹王】 【シャイターン】 【蚩尤】 【神霊魔術師】 【ウロボロス】 【ルドラ】 【血統者】 【魔電士】 【陰導士】 【ジャガーノート】 【冥界神魔術師】 【狂筋術士】 【アポピス】(NEW) 【アザトース】(NEW!) 【饕餮】(NEW!) 【導主】(NEW!) 【転導士】(NEW!) 【霊導士】(NEW!)》




「……ずいぶん増えましたね」

 アポピスとアザトースは知っていたが、饕餮(とうてつ)と後の三つは何故増えたのだろうか?

 饕餮に付いては知っている。恐らく、バクナワの影響だろう。……もしかしたら、魂を食べる事から現れたジョブかも知れない。


 他の二つの【導主】と【転導士】は、導き関連とみていいだろう。

 【導主】は、導きや誘引スキルが覚醒したから、現れたようだ。

 【転導士】は、ユリアーナがハトホルに変化した事がきっかけだろう。ジョブの意味は、転生させた存在を導くといったところか。


 【霊導士】は……何故今になって出現したのかが、分からない。霊を導く事はこれまでもしてきたことだからだ。

 ただ単に、ステータスを司る神々の内ジョブの神が【霊導士】を創ったのが、最近だったというだけかもしれないが。


「まあ、そうした事の研究はルチリアーノに任せましょう」

 最近はアンデッドだけではなく、師であるヴァンダルーを含めた不思議なもの全般の研究者となっている弟子に、丸投げする事にした。


 そして、次に就くジョブを決めるために、今後の予定を口に出して見た。

「冒険者学校に入学するのは春頃。それまでに魔王の大陸の魔境に創られた疑似神域を潰して、ついで魔境やダンジョンを幾つか攻略してガルトランドへの悪影響も抑える。そして、マルドゥーク達の骨が他に残っていないかの探索も行う。

 他にも色々な実験の続きに、変身装具の作成や改良。アルクレム公爵やモークシー伯爵との会談に、ボティンとペリアの神像も建立しないと」


 予定はぎっちり詰まっている。しかも、これは仕事の予定であって、エレオノーラ達との食事などのプライベートな予定は含まれていない。


 ただ、この魔王の大陸で魔物の間引きをする以上、あと一回以上はジョブチェンジする事が出来るだろう。

「春には比較的おとなしいジョブ……【堕武者】か【蟲忍】になれるようにしたい。では……【神滅者】を選択」




《【魂纏時能力値強化】、【自己再生:共食い】、【能力値増強:共食い】、【魂魄限界突破】スキルのレベルが上がりました!》




・名前:ヴァンダルー・アーク・ヒルウィロウ・ソルダ・ザッカート

・種族:ダンピール(母:女神)

・年齢:12歳

・二つ名:【グールエンペラー】 【蝕帝】 【開拓地の守護者】 【ヴィダの御子】 【鱗帝】 【触帝】 【勇者】 【大魔王】(魔王から変化!) 【鬼帝】 【試練の攻略者】 【侵犯者】 【黒血帝】 【龍帝】 【屋台王】 【天才テイマー】 【歓楽街の真の支配者】 【変身装具の守護聖人】 【女神の解放者】(NEW!) 

・ジョブ: 神滅者

・レベル:0

・ジョブ履歴:死属性魔術師 ゴーレム錬成士 アンデッドテイマー 魂滅士 毒手使い 蟲使い 樹術士 魔導士 大敵 ゾンビメイカー ゴーレム創成師 屍鬼官 魔王使い 冥導士 迷宮創造者 創導士 冥医 病魔 魔砲士 霊闘士 付与片士 夢導士 魔王 デミウルゴス 鞭舌禍 神敵 死霊魔術師 弦術士 大魔王 怨狂士 滅導士 冥王魔術師 ペイルライダー  混導士 神導士



・能力値

・生命力:801,690+(41,245) (239,049UP!)

・魔力 :14,022,168,571+(14,022,168,571) (7,481,237,214UP!)

・力  :74,785+(747) 

・敏捷 :69,595+(695) 

・体力 :80,024+(800) 

・知力 :96,641+(966) 




・パッシブスキル

剛力:10Lv(UP!)

超速再生:7Lv(UP!)

冥界神魔術:4Lv(UP!)

状態異常無効

魔術耐性:10Lv

闇視

末那識誘引(冥魔創滅混夢道誘引から覚醒! 神道誘引を統合!)

詠唱破棄:10Lv

導き:末那識(導き:冥魔創滅混夢道から覚醒! 導き:神道を統合!)

魔力常時回復:6Lv(UP!)

従群超強化:6Lv(UP!)

猛毒分泌:牙爪舌:8Lv(UP!)

身体無限伸縮(舌)

無手時攻撃力増強:中(UP!)

身体強化(髪爪舌牙):10Lv

魔糸精製:1Lv

魔力増大:10Lv

魔力回復速度上昇:10Lv

魔砲発動時攻撃力増強:中(UP!)

生命力増強:5Lv(UP!)

能力値強化:君臨:9Lv

能力値強化:被信仰:8Lv

能力値強化:ヴィダル魔帝国:4Lv

自己再生:共食い:4Lv(UP!)

能力値増強:共食い:4Lv(UP!)

魂纏時能力値強化:極大(UP!)

殺業回復:6Lv(UP!)

自己強化:殺業:6Lv(UP!)

杖装備時魔術力強化:中(UP!)

全能力値強化:極大(UP!)



・アクティブスキル

統血:3Lv(UP!)

限界超越:9Lv

ゴーレム創成:8Lv

虚王魔術:9Lv(UP!)

魔術精密制御:4Lv(UP!)

料理:10Lv(UP!)

錬神術:2Lv

魂格滅闘術:7Lv(盾術と鎧術を統合&UP!)

同時多発動:7Lv(UP!)

手術:8Lv

具現化:5Lv

群隊:3Lv(UP!)

超速思考:7Lv

将群:3Lv(UP!)

操糸術:8Lv

怨投術:1Lv(投擲術から覚醒!)

叫喚:8Lv

神霊魔術:4Lv(UP!)

魔王砲術:8Lv(UP!)

装影群術:8Lv

欠片限界超越:3Lv(UP!)

整霊:2Lv

鞭術:3Lv

霊体変化:雷

杖術:3Lv

高速飛行:3Lv(UP!)

楽器演奏:4Lv

舞踏:2Lv

筋術:4Lv(UP!)

魔闘術:2Lv


・ユニークスキル

神喰らい:10Lv(UP!)

異貌多重魂魄

精神侵食:9Lv

迷宮創造:5Lv

大魔王

根源

神敵

魂喰らい:10Lv

ヴィダの加護

地球の神の加護

群体思考:9Lv(UP!)

ザンタークの加護

群体操作:9Lv(UP!)

魂魄体:5Lv(UP!)

魔王の魔眼

オリジンの神の加護

リクレントの加護

ズルワーンの加護

完全記録術

魂魄限界突破:4Lv(UP!)

変異誘発

魔王の肉体(【魔王の気門】と【魔王の蹴爪】を合流!)

亜神(【神格:巨人】と【神格:龍神】を統合!)

ボティンの加護(NEW!)

ぺリアの加護(NEW!)


・呪い

 前世経験値持越し不能

 既存ジョブ不能

 経験値自力取得不能




 防衛隊との戦いを考えると、今のままでも十分以上にヴァンダルーは神や、その眷属と戦い、勝つ事が出来る。しかし、これから戦う事になる神は巨大な身体を持つ亜神ではないだろう。

 ゴーンやブラテオ、そしてマドローザはアルダ勢力の中だけではなく、現存している亜神全体の中でも上の方の存在だった。


 そんな彼らが集まってもヴァンダルー達に負けたのだから、幾らペリア防衛隊や今回の戦いに参加しなかった亜神が残っていても同じ事をするとは思えない。


「次に来るのは、ハジメ・フィトゥンのように、スキルと武技を使う事が出来るようになった神か、神を降ろした英雄候補でしょうからね」

 モークシーの町にいるカルロス達から推測すると、一人一人はまだ深刻な脅威ではない。身体能力も、亜神程ではないだろう。


 しかし、彼等は武装を整えて武技を使って戦うため、数を揃え作戦を練って、連携して挑んできた場合は脅威になる。


「今のところはその様子はありませんが、頑張っていきましょう」

 英雄候補達同士が行動を共にしている様子は、今のところない。だが、何かきっかけがあれば集まるかもしれない。

 たとえば、ハインツが試練を終えてダンジョンから出てくるようなきっかけがあれば。




 防衛隊を倒した後は、戦利品を収納してガルトランドに戻って、戦勝を祝う宴となった。

 大神達は戦いが終わると、勝利したヴァンダルー達を祝福し、神域に戻っていった。去り際にアルダ勢力の神々が後になって降臨しないよう、自身が降臨した疑似神域を破壊して。


 念のために見張りの使い魔王をヴァンダルーが設置したので、アルダ勢力の神々が何か企めば、すぐに察知する事が出来るようになっている。

「もっとも、俺がバーンガイア大陸に戻るとその限りではないので、各守護神には頑張ってもらいたいところですね」

『うむ、まあ新人も増えたから何とかなるだろう』


 ガルトランドの守護神の内、肉体のある『魔雪山の巨人』ゾーザセイバが頷く。彼は、勧められた肉や巨大な蟹を頑なに拒否し、巨大な鍋からちびちびと茸とサタンジャイアントのスープだけを飲んでいる。

『とは言え……本当に大丈夫なのか? お前さんに忠実だからといって、儂等に友好的とは限らんのではないだろうか?』


 ゾーザセイバが眼で指す新人……それはバクナワではもちろんなく、彼と同じくらいの大きさのゴースト達……『氷の巨人』ムガンや『蟹の獣王』ガビルデスの霊達だ。

 死んだ彼等は、霊をヴァンダルーに囚われ、アンデッド化させられていたのだ。


 ゾーザセイバの心配は本来なら正しい。さすがに亜神ともなると、ヴァンダルーに導かれない霊も存在するからだ。ラダテルやブラテオ、マドローザ、そしてゴーンのように。

 しかし、そうした霊は全てヴァンダルーが喰らった後だ。


「それは大丈夫だと思いますよ。あなた達に服従するよう繰り返し命じましたし……ガルトランドに何かあったら、魂を喰らうと脅しておきましたから」

 残った霊達はヴァンダルーに導かれ、生前なら滅ぼされても拒否しただろうアンデッドへの変化を受け入れ、我先にとアンデッド化して忠誠を誓った霊ばかりだ。

 勿論、だからといってゾーザセイバ達に対して友好的とは限らないが、ヴァンダルーに命じられれば別だ。


『改めてよろしく、ゾーザセイバ。会うのは、貴様が魔王軍に寝返ったとき以来だな』

『久しぶりだな、また同じ陣営になるなんて思わなかったぞ』

『どうした? 我の肉が食えないのか?』

 っと、表面上はにこやかにゾーザセイバに話しかけた。


 このように本心はともかく、友好的に接しようと努力、もしくは演技力を発揮してくれる。

『……本当に大丈夫なのだろうか? 奴らの笑顔が、だんだん牙を見せつけているだけに見えてきたのだが』

 努力はあまりにも細やかで、演技力は薄っぺらかったが。


「大丈夫ですよ。それに、見た目より弱いですから」

 アンデッド化した亜神達は、普通のゴーストとは比較にならない強さだが、やはり肉体があった頃よりもずっと弱くなっている。

 仮にゾーザセイバが戦う事になっても、負ける事は出来ないだろう。


『まあ、ならいいが……』

「では、俺は皆の所に行きますので、何かあったら使い魔王に話しかけてください」

 まだ若干不安そうなゾーザセイバを残して、移動を始めた。後は口で説明するよりも、彼自身がアンデッド化した亜神達と信頼関係を築くしかないのだ。


(きっと、エレオノーラとアイラのように仲良く……ライバルになれる、かも?)

「おお、皇帝殿、ここにいたか! 儂等の酒を飲んでいってくれ!」

「酒はまだ飲ませるなと、皇太后殿から言われていただろうに。それよりもサボテンの果実で作ったジャムはどうかな?」

 氷雪系巨人種の長ゾルクと、アンドロスコーピオンの長フェルトニアがヴァンダルーを見つけ、酒とジャムを勧める。


「「なので、一曲ご披露を!」」

 二人は、ヴァンダルーの歌を聞いてから、精神的な中毒になっていた。

「いえ、巨大壁画と地上絵を増やされるのはちょっと」

「止めないか、二人とも! ガルトランド中に陛下の歌声が響いたらどうするつもりだ!」


 グラシュティグの長であるザルザリットが、慌ててヴァンダルーを回収し、デディリアにパスした事で狂乱のコンサートは未然に防がれた。


 ガルトランドの住人達は宴を大いに楽しんでいる。復活したボティンやペリアの像を新たに建立して祭る事にも、乗り気だ。

 しかし、ガルトランドが劇的に変わる訳ではない。ただ、地上の疑似神域の乱立が終わる事で魔素の影響が弱まり、天井や壁から侵入してくる魔物の数が減るだけだ。

 彼等は、引き続き地下での生活を続ける。


「魔物の問題以外は、皆ここでの生活に切迫した問題は抱えていないからな。食料や水、生活する土地は十分にある。それに、地上での戦いの様子を聞いた限り……天井のあるここの方が安全そうだ」

「確かに。魔王の大陸に出るのは、疑似神域の跡地を利用するにしても危険ですね」


 魔王の大陸は陸も空も周りの海も、全て魔境だ。ザンターク達が地上で存在していた魔大陸と違い、ランク13以上の魔物まで存在している。

 それに、地上では結界でも張らない限りアルダ勢力の神々の目を避けることはできない。ガルトランドの住人達の中には人間もアルダ教の信者もいないので、彼等にとってはヴァンダルーとの戦いで巻き添えになったとしても、構わない存在だ。


 周囲の魔境から侵入してくるかもしれない強力な魔物と、アルダ勢力の神々。両方を警戒しながら生活するよりも、地下での生活の方が平和なのだ。

 魔王の大陸に神が降臨し、大地に向かって大規模な攻撃魔術を放ってガルトランドを崩落させようとする危険もあるが……それはアルダ勢力にとって現実的ではないだろうと結論が出ていた。


 彼等は、地下にヴァンダルー達の拠点がある事に気がついているだろうが、それがどれくらいの規模か知らない。ガルトランドの存在に気がついていないままなのだ。

 そのため、地下にボティンの封印を解くのに使ったトンネルと休憩所のような小さな拠点しかないのか、それとも広大な地下空間が存在するのか、彼等には判別がついていない。そのため、神が数柱力を使い果たす危険を冒して攻撃を仕掛けて来るとは考えづらい。


 勿論、もし本当に攻撃を仕掛けて来たとしてもすぐに崩落しないよう、ガルトランドの壁や天井は強化されてあるのだが。そのためにも、亜神達のゴーストをここに配置したのだ。


「もっとも、地上へ移住はしなくていいが、旅行へは行きたいと思う人は多そうだ。今後とも、交流してくれるとうれしい。ヴィダル魔帝国の産物に、皆、興味津々だからな。

 我々も……いつか、生まれ故郷に一度戻りたい」


 『紅南海の正悪神』マリスジャファーを奉じ、【魔王の欠片】を守っていた人魚の一族と共に、ハインツ率いる『五色の刃』に襲撃されて故郷を追われたデディリアは、遠くを見つめてそう付け足した。

「分かりました」

「ありがとう。だけど、今は奴らの拠点があるそうだから数十年後でも大丈夫だ。我は魔人族なので寿命はないし、ドーラネーザも人魚だから長生きだからな」


 ただ、かなり気が長いようだ。ハインツが寿命で死ぬまで待てそうである。


「それよりも……冒険者学校に行く時、従魔に誰を連れて行くのか、まだ決まっていないそうだな?」

 故郷を想う儚げな表情を一変させたデディリアが、そう尋ねてくる。たしかに、ヴァンダルーは自分がテイマーギルドに所属している事を利用して、普通なら人間の町に入れないヴィダの新種族や魔物の仲間を連れ込むつもりだった。


 そうでもしないと、都市部の人々が町に入る事が出来ないヴィダの新種族を実際に見る機会はない。そうモークシーの町やアルクレムで分かったからだ。

 しかし、問題は――。

「……何故、それをあなたが気にするのでしょうか?」


「勿論、立候補しようと思ったからだ。我は魔人族だから、資格はあるだろう?」

「待てい! それなら儂だ! 儂が行く!」

 そこに乱入してきたのが、春には魔人王ではなくなる『魔人王』ゴドウィンである。


「儂も魔人族だ! 何より、儂なら大抵の敵なら自力で撃退できるぞ!」

「お待ちください、ならば原種吸血鬼は如何ですかな? 私はシュナイダー殿達と活動しなければならないので、エルペル達の中から選んで連れて行くべきかと」

「アンドロスコーピオンはどうでしょうか!?」

「ぐ、グラシュティグと……パピルサグも……」


 そこにゾッドが加わり、さらに、フェルトニアとザルザリットまで、自分達の種族の売り込みを始める。

「皆、従魔は首輪をしなければならない事を忘れていませんよね?」

 念のためにそう確認するが、ゴドウィンとゾッドは「それが何か?」という顔つきで頷いた。……デディリア達はやや躊躇した様子だったが。


「ヴァン様! 首輪を躊躇う者には従魔の任は相応しくないわ。だから是非私を!」

「エレオノーラは、モークシーの町に人として潜入しているでしょうに」

「では我だ! 我はまだモークシーの町にも行っていないぞ!」

「じゃあ、ボク達が引き続き従魔をするのはどうかな!? ヴァン君の従魔として、ボク達の情報はもう王都まで流れているだろうし!」

「それなら、王都のギルドや貴族達の警戒心を煽らずにすむかもしれないぞ」


 ヴィガロ、そしてプリベルとギザニアも、そう言いながら乱入してくる。ちなみに、大きな水槽に入って参加しているドーラネーザは、王都は陸地だからと静観している。

『パパ~、僕はここが良い。人間がいっぱいのオウトよりも、ここの上の方が、美味しいモノがいっぱいいそうだから』

 そして、ルヴェズフォルで遊んでいたバクナワは、幸いな事に王都行きを希望しなかった。主に人しかいない王都よりも、食べて良い存在が無数にいる魔王の大陸の方が彼には魅力的に映るのだろう。


 王都の人々にとって朗報であり、魔王の大陸の魔物達にとっては悲報である。

「分かりました。様子を見に来ますから、ゾーザセイバおじさん達の言う事をちゃんと聞くんですよ」

『うん』

「それとルヴェズフォルは大丈夫ですか?」


 バクナワの手に握られ、振り回されていたルヴェズフォルの目は死んでいた。幼児が飛行機の玩具で遊ぶ姿に似ていて微笑ましいなと、ヴァンダルーは思っていたが……彼にとっては過酷な難行であったようだ。

『タスケテ……』


 助けを求めるルヴェズフォルに、今の彼では王都でパウヴィナの従魔として活躍する事を期待する事は出来ないと、ヴァンダルーは思った。

 そう、パウヴィナを王都に連れて行くのは既に決まっていた。……ヴァンダルーが一人で学校に行くのが怖いとか、そうした事情だけではなく、これもヴィダの新種族を人々が受け入れやすくするための作戦である。


 彼女はジョブにも就けるので、怪しまれても「珍しい獣人種です」と言って押し通す予定である。アルクレム公爵から身分を保証するという書類を貰う予定である。


「ルヴェズは、魔王の大陸の魔物の間引きのついでにレベリングしましょう」

『坊主! 俺達はまだ駄目か!?』

「キシャアアア!」

『おおぉーん』


 ボークスやピート達、人間社会の常識ではテイムできないアンデッドや蟲の魔物達が声をあげる。

「皆は、俺とパウヴィナが冒険者ギルドでそれなりの立場を手に入れてから従魔になってもらう予定です」

 常識ではテイムできないとされているが、確かな立場のある冒険者が「テイムしました」と言い張れば、ごり押しでどうにかなるだろうとヴァンダルーは考えている。


 勿論、その頃までに味方になってくれる力のある貴族や商人、宗教関係者を増やしておく予定である。


「ヴァンダルーッ!」

「母さん? 母さんは勿論――」

「そうじゃなくて、今、神託があって、私達も行った事があるアルダのダンジョンの扉が、開いたみたいなの!」


 ダルシアの言葉に、宴会に参加していた面々は騒然とした。アルダの英雄であり、ヴィダとヴァンダルーの仇敵である『蒼炎剣』のハインツが入っていたダンジョンの扉が開いたのだ。

 それはつまり、試練を終えてハインツ達『五色の刃』の面々が出て来る事を指している。


「ハインツ達が……」

 ハインツ達が、生きている事は以前から察していた。そして、倒した亜神達の霊からも改めて確認している。

 そして、彼等が受けていた試練の最終段階が、『罪鎖の悪神』と相打ちになったらしい、ベルウッドを復活させる事である事も。


『ベルウッドが復活っ!? な、なんて事だ……!』

『そんな……! お、終わりだ……殺されるぞ……!』

 ゾーザセイバがガタガタと震えだし、ルヴェズフォルは今にも死にそうなほど青ざめていた。


「母さん、ハインツ達は、ダンジョンから出て来たのですか?」

「いいえ、まだ出て来ていないみたい。扉が開いただけで、皆戸惑っているみたい」

 アルダのダンジョンの周りには、アルダ融和派に協力的なヴィダ信者も複数いる。彼らを通じて、ヴィダはダンジョンの様子を知ったようだ。


 それによると、扉は開いたがハインツ達が出てくる気配はないらしく、自分達が入っていいものか悩んでいるらしい。

 ダルシアの答えに、ゾーザセイバとルヴェズフォルがあからさまにほっと安堵する。


 しかし、扉が開いたのが事実である以上、ハインツが試練を終えたか、死んだかしたはずだ。そして、ヴァンダルーが知るあのダンジョンの特性……精巧な偽者相手に仮初の肉体で戦う、高度なシミュレーションのような戦闘を行う以上、死ぬとは考えにくい。


 つまり、ハインツは試練を終え、ベルウッドが復活したと考えられる。

「何故復活したベルウッドと、それを成したハインツ達に動きがないのでしょう? 何か分かりますか?」

 ヴァンダルーが訊ねると、答えたのはやはりダルシアだった。


「多分、ハインツの身体がベルウッドの力にまだ耐えきれないのだと思うの」

『耐えきれない、とはどういう事でしょうか?』

「サムさん、アルダがハインツにベルウッドを目覚めさせようとしたのは、ハインツに英雄神となったベルウッドを降臨させて戦わせたかったからだと思うの。

 きっと、そうやってヴァンダルーを倒す事が出来る戦力を手に入れるつもりだったのよ」


 そのために、ハインツ達に試練を課して神を降ろすのに耐えられる肉体に鍛え上げようとしたのだ。あのダンジョンの試練は、精神を鍛える類のものではなかったため、ほぼ確実だとダルシアは考えている。

『でも、それならダルシア様もヴィダ様を降ろせますよね?』

 リタの質問に、ダルシアは首を横に振った。


「私が降ろせるのは分霊よりずっと多いけれど、ヴィダ様の一部だけで全体から見れば半分もないの。それに、生き返るまでの間ずっとヴィダ様の神域にいて、同調できるようにしてもらったもの。身体も、ヴァンダルーが凄く丈夫に創ってくれたし。

 ハインツの場合は、幾ら相性が良くても別の、それも自分よりも高位の存在を身体に降ろさなければならないから、肉体にかかる負荷は大きいはずよ」


 つまり、ダルシアは大神が己の一部を肉体に降ろせるように、生まれ変わる前から工夫されていた先天性の器。

 だが、ハインツは資格があっても後天的に強引に神を降ろせるよう鍛え上げたため、彼女と違い身体の負担が大きいという事らしい。


「……っと、いうとつまり?」

「多分、ダンジョンの中でベルウッドを復活させた後、何故かは知らないけれどベルウッドの力を使って、それで動けなくなるぐらい疲労したから出て来られないんじゃないかと思うのよ」


 ダルシアの説明を聞いた一同は、しばらく硬直し……数秒後、気が抜けたのか深いため息を吐いた。

『つまり、ハインツという人間はしばらくベルウッドの力を使いこなせないのか』

「そうですな。自由自在に力を使えるなら、彼なら早速我々をどうにかしようとするでしょうからな」


 ゾーザセイバが安堵のあまり崩れ落ち、ゾッドも頬を緩めた。

「とりあえず、監視を強めるという事で。後、境界山脈と旧スキュラ自治区、そしてアルクレム公爵領の境界線に使い魔王を設置しましょう。

 ハインツ達が来たら、先制攻撃できるように」


 ベルウッドの力を、短時間とはいえ使える状態で自分達の縄張りに入れる訳にはいかない。剣の一振りで城を粉砕したとしても、何もおかしくないのだ。

 周囲に人気のない、巻き添えになる者がいない場所で、先制攻撃を仕掛けて何もさせずに殺す。


 ヴァンダルーのその意志に、誰も異論を唱えなかった。……ファーマウンがこの場に居たら、『とりあえず、警告の手紙を送るのはどうだろうか? こっちに近づくなとか、ヴィダの新種族に手を出すなとか』と、もう少し穏当な意見を出しただろうが、残念ながら彼はここにいなかった。


 知り合いのディアナやティアマトはいるが、頭の中はベルウッドの暴虐不尽をどう防ぐか考える事に全力が注がれていて、穏やかさは欠片もなかった。

 彼等にとってベルウッドは、十万年前アルダ勢力の先頭に立って襲撃を仕掛け、兄弟や我が子に等しい者達を虐殺した存在でしかないのだ。


「後は……ゾッド師匠、グファドガーン、俺はベルウッドに勝てると思いますか?」

 後の問題は、ベルウッドに……ベルウッドを降ろしたハインツにヴァンダルーの力が通じるか否かだ。その参考にするために、十万年前まだ人間で、アルダを降ろして魔王を討ったベルウッドを知っている者達にヴァンダルーは、そう尋ねた。


 それに対してゾッドは顔を顰めて、グファドガーンは無表情のまま答えた。

「腕試しなら、まず完敗でしょう。殺し合いなら、状況次第ですが勝てると思います」

「ベルウッドの力は、偉大なるヴァンダルーを上回ります。しかし、命のやり取りなら奴が勝利する事はありません」


 ベルウッドは、今のヴァンダルーよりずっと力が強く、動きも速く、体力面でも優れていた。だが、戦い方が何処までも真っ直ぐだった。

 その剣に搦め手や虚実はなく、ただひたすら速く鋭い。


 超高速で剣を回避する敵には、超々高速で剣を振るって斬る。

 絶対防御能力を持ち、剣を防ぐ敵には、絶対防御能力を突き破る超絶対攻撃力の剣で斬る。

 剣の届かない超遠距離から飛び道具で攻撃してくる敵には、すごく速く走って飛び道具を避けながら接近して斬る。

 実体がなく剣の通じない存在の敵には、実体がなく剣の通じない存在でも切れる剣を編み出して斬る。

 無数の分身を創りだして本体を隠しながら攻撃してくる敵には、同時に無数の分身全てを斬れるようになって斬る。


 そんな勇者だった。ちなみに、魔術が不得意だったわけではないが……その使い方は、上記の例の「剣」の部分を「魔術」に変えただけである。


 魔王グドゥラニスを討ち取った際も、身体にアルダ全体を降ろし、想像を絶するほどの力を集中させた一撃で結界を貫いている。

 なお、魔王との戦いで生き残った人間が三千人しかいなかった原因の一つは、ベルウッドが魔王の結界を突き破るのに必要な力を溜めるのにかかった時間が、長すぎたからだとグファドガーンは言い切った。


「無論、状況的にはそれ以外に魔王を討つ手段はありませんでした。シザリオンは滅び、ザンタークは狂乱したままだったので、ナインロードとファーマウンは大神を降ろせませんでしたし、ヴィダは健在でもその力に耐えられるザッカートは既に亡かったので」

 当時共に戦ったゾッドは、そう言ってベルウッドを多少弁護するが、グファドガーンは彼に情けをかけるつもりはないようだ。


「だからこそ、偉大なるヴァンダルーの前身である、偉大なるザッカートとソルダ達が健在だったならば、もっと他の勝ち方もあっただろう。

 そして、その後のヴィダとアルダの戦いでも奴はあのままだった。今もそうなら、その力は英雄神となった事でより絶大なものとなっているはず。

 ですが、偉大なるヴァンダルーの策があれば、勝つ事は不可能ではない」


 突き抜けた力を持つベルウッドだが、ヴァンダルーはその対極にあるような異常な手段で戦う存在だ。真正面から戦わなければ、必ず勝機はある。

 そのグファドガーンの意見に賛成なのか、ディアナ達も頷いている。


「ありがとう、参考になりました。では……ハインツ達に警戒しつつも、奴に動きが無い間は予定通りに行動しましょう」

 アルダのダンジョン付近が、アルダ勢力の神々が守っているため危険なのは、変わらない。なら、ハインツが行動を開始する前に、足場を固めて、逆に味方を増やす。


 王都でヴィダ派を増やし、オルバウム選王国がアルダ勢力で固まらないよう引っ掻き回し、更にアルダ勢力の神々の信者を減らして力を削るのだ。






○ジョブ解説:神導士 ルチリアーノ著


 神を導く士……ではなく、神に至ろうとする者、もしくは何れ神に至る者、神から加護を受けた者を導くジョブ。そのため、既存の神に大きな影響を与えるジョブではないようだ。

 もしかしたら、アルダ勢力の神々が育てているらしい英雄候補に対する切り札になるかもしれないが……あまり期待しない方がいいだろう。


 このジョブに就く前から、カルロスがああなったのだから、そう劇的に変わる事はあるまい。


 また、このジョブのせいで、ジェーン・ドゥのような奇怪なアンデッドがこれから増えるのかと思うと、私は胸の高鳴りを止める事が出来ない。




○二つ名解説:女神の解放者


 封印されていた女神、この場合はボティンを解放した事を示す。ボティンから送られた称号であり、この二つ名を持っている事を明かした場合、ボティンとその従属神の信者やドワーフ達から多大な尊敬を集める事が出来るだろう。


○二つ名解説:大魔王


 魔王グドゥラニスを超えた存在、もしくは、超える事を期待されている存在に贈られた二つ名。

 ラムダ世界では魔王は本来、忌まわしい存在、恐ろしい存在である事を意味するが、大魔王の意味はまだ定まっていない。


 この二つ名を獲得した者は、過去に存在しない。ヴァンダルーが一人目の大魔王である。

次話の投稿ですが、1月29日の予定です。その次は、書籍化作業のためお休みを頂き、2月10日の予定となります。

申し訳ありません。


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― 新着の感想 ―
まぁヴァンダルーの力は“本を閉じる”ようなモノだしな。 幾ら本の中の英雄が強くても条件が揃えば「そうですか。ではさようなら。」つって本をパタンと閉じて終わりにするような… 上手く言えないんだけど、「強…
[一言] まだ途中の374話までしか読んで無いのですが、ちょっと叫びたいものがあるので。 アザトースはアカンて! まだ饕餮とかその他諸々やばい奴らでも声は出なかったけどアザトースが出たと読んだとき思わ…
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