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ピーターと友だち  作者: 六葉翼
バミンガ厶編
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30/36

NID



ステージでは何くわぬ顔。


「あの娘はどうだ?」


そう聞いて来るトニー。

でも最近ちょっと違う。


「もっとやれよマッド!」


「なんかやらかせマッド!」


そう囁くようになった。


名前も忘れてしまったが。

何処かの会場に呼ばれた。


出迎えてくれた、会場の責任者の人の身なりがとても立派で。いつもと違う感じがした。


1曲目にNIBをやったら。

20秒で止められた。


責任者の人がステージに上がって。俺達はステージから下ろされた。


「なんだその曲は?!君達は…花のサンフランシスコや、メローイエローをやる、トップ40のバンド。バーミンガム・ウィザードじゃないのか?」


「俺達はバーミンガム・ウィザードだけど、そんな曲はやらない!」


「くそくらえだ!」


「君らのマネージャーからは、トップ40のカバーバンドと聞いてた、だから呼んだんだ」


「ジム・シンプソンか?」


「あの野郎!今から事務所に行ってしめようぜ!」


「マッド…少し黙れ」


「ジム・シンプソン?そんな男は知らないな」


勘違いしていたのは男の方だと。

気がついたのはトニーだった。


「他にも同じバンドの名前がいるんだ」


調べたら、無名バンドのツアーリストに、俺達と同じバンドの名前が載っていた。ついでに同名の地元サッカーチームもしっかり存在した。


どちらも俺たちより古い。


版権や利権が絡む。

かなりやっかいだ。


「トニー」


「ああ…マッド分かってるよ!」


トニーと違って、俺の考える事は皆にすぐ分かるらしい。


「別の名前…考えよう」


「Nativeti In Black」


生まれついての暗闇。


この曲に誇りを持っていた。

俺達の本質を現す言葉だ。


「異論はない」


「議論の余地も」


「もう変わらないよね」


今度は全員一致。


バンド名はNativeti In Blackに決まった。


もう変わることはない。


「交通費20ポンドやるから。さっさと出てってくれ!そこの間抜けがいい事を言ったな。お前らは名前を変えるべきだよ。まあ変えたとこで、あんなクソみたいな曲を聞きたがるのは?正気の人間じゃないと思うがね!」


会場の責任者の追い出し文句。

それも祝福に聞こえて仕方ない。


この世界は俺達も含めて。

正気じゃない人間ばかり。

ごろごろしてるからだ。


100万枚売れるかもしれねえな。


だから俺達は何を言われようと。

このバンドには未来がある。


そう信じていたんだ。


新しいバンド名に決まったが。

ジムは良い顔をしなかった。


俺たちはいくつかのライブ会場で、黒人バンドと勘違いされたからだ。


ブッキングミスが続いた理由。


Nativeti In Blackー生まれついての黒人ーそんな意味もあるらしい。


ソウルやファンクのバンドと思われた。いっそのこと親父の好きなアル・ジョンソンみたいにするか。


「靴墨で顔を黒く塗って」


「却下」


「ならBlackをDarkに変えるか」


Nativeti In Dark


漆黒の黒よりも尚昏く。


生まれついての暗黒。

生まれてこの方暗闇。


俺たちはそこから歩き出す。


ギークの発案でそうなった。

そちらの方がしっくり来る。


「曲のタイトルもそうするか」

「まだリリース前だしな」


トニーの言葉に皆が頷いた。


ビルが考えた、バーミンガムの魔術師のバンド名。それからもバンドの愛称となり。ファンに親しまれた。


俺たちのバンド名はNID。

もうそれで決まりだった。


「やっぱり変わったじゃん!」

「豚肉よりはましだ!」


まだ言うか。


略でもフルネームでも。

豚肉でも構わないさ。


最高の曲と演奏を聞かせる。

世界最高のバンドになる。


ただそれだけだ。

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