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ピーターと友だち  作者: 六葉翼
バミンガ厶編
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26/36

襲来


その頃になると、俺達はロンドンの小さなクラブに進出し始めていた。


ある日、俺達がステージに上がる前に、DJがかけているレコードを聞いた。俺たちは衝撃を受けた。


頭に響く強烈な一撃。


シンガーの声には聞き覚えがある。


当時こんな歌い方が出来るやつは、世界に1人しかいなかった。


ロバート・プラント。


天空を切り裂くような。

ハイトーンのシャウト。


後に山程のクローンを産んだ。

しかし彼こそがオリジンだ。


俺はDJに訪ねた。


「今かけてるのは!?これヤードバーズの新しいレコードなのか?」


DJは首を振って答えた。


「いや、これはレッド・ツェッペリンという新しいバンドだ!」


もっと色々聞きたかった。


俺達は、これからステージに上がらなくてはならなかった。


鼓動が早鐘を打ち。

鳴り響き収まらない。


さっきのレコード。

あれは一体何なんだ。


頭から追い出す事が出来ない。


「集中しなくては」


他のメンバーを見る。

皆心ここに有らずだ。


胸が…ざわめく。俺だけじゃなく、メンバー全員。おそらくレコードを聞いた。イギリス中のミュージシャンがそうだったに違いない。


本当にヤードバーズじゃないのか?


俺は、あのバンドのシンガーを知ってるけど。彼は、レッド・ツェッペリンなんて…そんなバンド名は口にしなかったぜ。


「メンバーの名前を教えてくれ!」


そのDJは親切な男だった。バンドメンバー全員の名前を読んでくれた。


「ジミー・ペイジ、ジョン・ボーナム、ジョン・ポール・ジョーンズ…そしてロバート・プラントだ!」


ヤードバーズは過去の名前を捨て、レッド・ツェッペリンに名前を変えた。


「もう1度…頭からレッド・ツェッペリンのアルバムをかけてくれないか!」


DJは気軽に応じてくれた。


「俺も気にいってるんだ!」

「こいつらスゲエよな!」


スゲエなんてもんじゃなかった。


「ヘビィなブルースをやろうぜ」


元々俺達の専売特許じゃなかった。


R&Bはアメリカから海を渡ってやって来た。新しい音楽だったんだ。


当時英国のミュージシャンは、皆ブルースに魅せられ。傾倒していった。


でも、ブルースを究めたいと思えば思うだけ。英国人はコンプレックスを抱える事になった。


白人は黒人にはなれないからだ。

ましてブルースはアメリカ発祥。


どうしたら黒人のように歌えるか。

どうしたら黒人のように演奏出来るか。そればかり考えていた時代だ。


アメリカで生まれたジミ・ヘンドリックス。ブルースの世界では、彼は異端児だった。あまりに、その音楽のスタイルが自由奔放であったためだ。


本国ではほとんど無視されていた。世間からも注目されていなかった。


彼に注目して、彼をアメリカからイギリスに呼んだのは、イギリスのミュージシャンたちだった。


自費で彼を呼び。


目の前で演奏してもらった。


ジミ・ヘンドリックスの存在を知り。その人気に最初に火がついたのは英国だった。


ブルースというスタイルに囚われず。感情をそのままギターで表現する。


彼のギターは怒ったり笑ったり泣いたり吠えたりする。


「何をしていても、常に新しい曲が頭の中に流れている」


生前彼はインタビューに答えている。


「観客の前で演奏するのは、大きな喜びを自分に与えてくれる。ギターを弾くのが本当に好きだ。でも他のフレーズが次々浮かぶんだ。俺はそれも弾きたい。でも手は2本しかない…すると」


彼は、演奏中に指先が突然フリーズしてしまう事が多々あった。


彼はギターの弦に噛みついた。


歯でギターを弾いたんだ。


エリック・クラプトンは言った。


「冗談じゃねえ。あんなやつが出て来たら、俺達は失業しちまう!」


ジェフ・ベックは言った。


「予測がつかないんだ。ジミのギターを聞くと、暗闇で1撃くらった気分になる」


エリック・クラプトンが在籍していたクリーム。良いブルースと、良い演奏が入ったアルバムを何枚かリリースした。


けれど、彼らの本質はジミ・ヘンドリックスと同様ライブにあった。


大音響でブルースを鳴らす。


それも事前の打ち合わせなしで、

フリーフォームで演奏した。


感情の赴くままにだ。


1曲の演奏が25分を越えることはざらだった。レコーディングは単なる形式、作業、記録でしかない。


クリームは成功したが短命だった。


「ブルースをヘビィに演奏しようぜ」


誰もがそう口にした。


それが時代の扉を開く鍵だ。

誰もがそれは分かっていた。


どうやったらいい。


ジェフ・ベックはクラプトンが去った後加入した。ヤードバーズをヘビィなブルース・バンドに路線変更しようとしていた。


サウンド面での構想はあった。


バンドには、サポートメンバーとして雇ったメンバー。ジミーペイジとジョン・ポール・ジョーンズがいた。


ジェフ・ベックは、当時最も黒人に近い歌唱が出来ると言われたシンガー。ポール・ロジャースを獲得しようと試みた。しかし上手くいかなかった。


ジェフは失意のうちにバンドを去った。ヤード・バーズには、残された2人と、アルバム契約。ジェフの残した素晴らしいアイデアがあった。


そして、ジミーペイジはロバート・プラントと出会った。ロバートを獲得したら。友人のジョン・ボーナムまでついて来た。彼は間違いなく、20世紀最高のドラマーの1人だ。


ロバートは希代のシンガーだった。その歌唱スタイルはブルースとはかけ離れていた。それで良かった。


それが答えでもあった。


誰がどう歌うか。


それが重要だった。


リズム&ブルースをロックに加工しようと試み。ブルース・シンガーを加入させたら。ブルースに逆戻りしてしまう。


皆が気づいたのは、レッド・ツェッペリンのアルバムが発売された、

まさにその時だった。


ロバート・プラントは、レッド・ツェッペリンのアルバムの中で、トラディショナルなブルースナンバーも披露している。


しかし、まるでジゴロが誘惑するような。セクシーな声でブルースを歌った。


それまで、皆が崇拝してきたブルースを。見下ろすように、挑発的に。


ロックとはそうしたものだ。サウンド面も含め、当時のミュージシャンが思い描いた理想。レッド・ツェッペリンはデビューアルバム1枚で、全てやってしまった。


比類なき完成度。

桁外れのパワー。


「なんなんだ!?この分厚いギターの音は?」


俺がため息まじりに言うのを聞いていたのか。トニーが静かに言った。


「ギターを3…いや5本は重ねてレコーディングしてる」


「そんなの…ライブで再現出来るのか!?」


「やったもん勝ちさ」


「それに、たとえライブでギターが貧弱でも、このリズム隊がいれば問題ない!」


「ベースのアプローチが知的だな…曲に合わせて、指弾きとピックを使い分けてるな…俺の知らないテクニックでベースを弾くやつだ!」


ギークはベースの音を耳で追っている。


「スネアの音1発で、ドラマーの技量が、バスドラの音1つでパワーが分かる…このドラマーは、ビル・ブラッド・フォードの技術と、キース・ムーンのパワーを持ってる」


「そんなこと!言われてみて〜!認めなくないけど…こんだけ爆撃機みたいに叩いても…」


「音がいいな!」


「やはりこのベースだろ?こんだけ奔放に叩く、このドラムにしっかりついて行って音をまとめてる」


「間違いない、このベースがコンダクターだ」


トニーは、レモンソングのリフを知らず知らず口ずさんでいた。


「ギターは大したことないかもな」


トニー?


「でも、リフのアイデアが凄い!そして良い曲を書く。これだけのメンツが揃えば、充分だろ!」


「とにかくヘビィな音だ!」


俺が溜息ましまりに言う。

するとトニーが言った。


「心配するな」


「俺たちの方が、こいつらよりも、ずっとヘビィなバンドになるさ!」


トニーの凍結は溶けたようだ。


ちなみに、レッド・ツェッペリンとの契約。レコード会社が用意した契約金。


俺の窃盗の賠償金の500倍。


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