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第7話:道具ではなく、一人の職人として

ガルドに背中を押され、

私は王軍の隊長からボロボロに傷ついた一振りの剣を受け取った。


ずっしりとした重みの奥に、使い手がこれまでどれほどこの剣を大切にし、

死線をくぐり抜けてきたかが伝わってくる。


(強引に力を注ぎ込めば、この剣は悲鳴を上げて壊れてしまう……)


私はそっと目を閉じ、

おじい様から教わった息づかいを思い出した。


上書きの付与ではなく、剣が元々持っている鋼の癖と、

使い手の魔力の流れを丁寧に読み解いていく。


すり減った金属の歪みを整え、

使う人の手になじむ魔力回路を

糸を紡ぐように一筋ずつ編み直していった。


とんでもなく手間と時間がかかる、効率とはほど遠い作業。


けれど、無心で作業を続けるうちに、

剣の表面に宿る魔力が柔らかく輝き始めた。


「お待たせしました」


数時間後、今の私にできる限りの付与魔法を施した剣を手渡すと、

隊長は半信半疑といった様子で柄を握りしめた。


その瞬間、彼の目が大きく見開かれる。


「な……っ!? まるで自分の体の一部のようにしっくり馴染む……!

しかも、魔力の通りが以前より何倍も滑らかだ……!」


工房の外で見守っていた騎士たちからも、どよめきが起こる。

隊長は剣を愛おしそうに見つめた後、私に向かって深々と頭を下げた。


「こんなに素晴らしい仕事をしてくれる職人がいたとは……!

ありがとう、ノア殿! あなたのおかげで、我々はまた仲間と共に戦い続けられる!」


心からの感謝の言葉と、まっすぐな尊敬のまなざし。


(私は、道具なんかじゃなかった……)


「できて当たり前」「可愛げがない」と切り捨てられ、すり減らされていた日々。

胸の奥にこびりついていた冷たい傷跡が、温かな光に包まれて溶けていくのを感じた。


私の技術は、誰かに都合よく使われるためのものじゃない。


大切な道具と、それを使う人の命を守り、

笑顔にするためのものなのだと、あらためて自分自身の仕事を誇らしく思えたのだった。

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