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RPG!!〜聖女になりたい転生令嬢〜  作者: こんぺい糖**
第四章 ゲームと現実、交錯する想い
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Lv29 ▼初めての気持ちの正体

 中庭には季節の花や植物が咲き乱れており、日当たりのよさも相まって、華やかで美しい風景が広がっている。


 その景色を一望できる位置にあるベンチに、私とザッくんは腰掛けた。よっという掛け声とともにベンチに腰を下ろしたザッくんは、目を細めて優しく微笑むと、私の頭をぽんぽんと撫でた。


「ルーちゃん、話ってなあに?」


 そのあまりにも優しい声に、私は今から話す内容が本当に話してもいいものなのかと一瞬たじろいだ。しかし、ザッくんは『どんな話でも受け入れるよ』というふうにさらに笑みを深めたので、私はほっと胸をなでおろし、少し震えの残る口を開いた。


「えっと、レオン様についてなのです」


「レオとなにかあったの?」


 ザッくんは優しく話をうながしてくれるので、私は完全に緊張を解くことができた。


「なにかあったというわけではないのです。だけれど最近、レオン様とサラちゃんが一緒にいるところを見ると……あの、なんというか悪い感情が湧き出てしまって」


「悪い感情?」


「はい、あの、ずるいなぁって。羨ましくて、私も話に混じりたいのにって感じてしまうんです。いや、いつも皆さんによくしていただいているのに、ずるいと感じるなんて、おこがましくて悪いことだとわかってはいるんですけれど!」


「……え?」


「え?」


 私がそうまくし立てていると、ザッくんは予想外だと言わんばかりに固まってしまった。その様子に、思わず私も話をやめて疑問符で返してしまう。


 や、やっぱり予想を上回る酷さだったのかな!? 心の広いザッくんでも受け入れられないなんて! でもそうだよね、すでにとっても良くしてもらっているのに、さらに求めるなんて強欲にも程があるよね!? うわああ、こんなことなら心に秘めていた方が!!


「え、そんなこと?」


「はえ?」


 話したことを後悔しかけていた私にとって、次に発せられた言葉は予想外のものだった。一瞬、ザッくんがなんて言ったのか理解できず、気の抜けた声しか出せなかった。


「そんなこと」!? ザッくん今、「そんなこと」って言ったよね? え、え、どういうこと? 私はこんなにも強欲で我儘な気持ちを抱いているのに、ザッくんにとってそれは取るに足らないことだって言うの!? ザッくんの心はいったいどれだけ広いの!? 海なんて比較対象にもならないくらい広そうだね!? もしかして相談相手間違えたかな!!


 私は内心パニックになりながらも、そろそろとザッくんをうかがい見た。ザッくんは目を見開きあんぐりと口を開けて固まった後、はあと大きなため息をついて頭を抱えていた。


「いや、マジで……そんなことだったのかよ。というか、ルーちゃんはまだその段階だったのか。さすがにレオに同情するわ」


 なにやらボソボソと独り言を呟いているが、なんて言っているかまでは聞き取れない。私が首を傾げていると、ザッくんはガバリと顔を上げ、とてもいい笑顔で言った。


「ルーちゃん、それのどこが悪い感情? ルーちゃんの基準でいくと、俺とかレオとか、あのどピンクは超危険思考の持ち主で最低なヤツってことになるよ?」


「き、危険思考!? 最低!? 皆さんはとっても素敵な人ですよ! 最低なわけ、あるわけないじゃないですか!!」


「そうかあ、じゃあルーちゃんが持っている『悪い感情』ってのも悪くはないはずだよなあ」


「え。それは、どういう」


「ルーちゃんのその感情は、誰もが持っている気持ちかもしれないよって話ー」


 ザッくんはもう一度私の頭を優しく撫でてくれた。しかし私の頭の中はそれどころではなく、大量の疑問符で埋め尽くされていた。


 誰もが持っている気持ち? これが? みんな、このモヤモヤを抱えているの? ザッくんやレオン様やサラちゃんも? なぜ?


 どうしてこんな苦しい気持ちをみんな抱えたままでいられるのだろう。私はこの気持ちがどこから来るものなのかでさえわかっていないというのに。


「…………」


 私が疑問の波に飲まれて固まってしまったのを見て、ザッくんは苦笑いを浮かべながら私に語りかけた。


「ルーちゃんはさ、レオとサラが一緒にいるときにずるいと思うんだろ?」


「はい」


「じゃあ俺とサラが二人で話しているときは?」


「え、それは別になんとも」


「そっか。それなら、俺とレオが今まで以上に仲良しこよしでベッタリしていたら?」


「ベッタリ……ちょっと嫌かもしれません」


「ふうん? ということはだ。ルーちゃんはレオ関係でモヤモヤするんだな」


「レオン様、関係?」


「そう。レオが自分以外の人と自分以上に親密なのが苦しいんだろ? 自分にしか見せない顔を他のヤツには向けないでほしいって思ったことは?」


「あ、あります」


 ザッくんは、まるで答えを知っているかのように、私をその答えに導くかのように話を続ける。私は感じたことのある気持ちを言い当てられたことに驚いて、ただただザッくんの質問に素直に答えることしかできない。


「その気持ちは……」


 そこまで言ったところで言葉は途切れ、ザッくんは一度顎に手を当てて考え込んでしまった。うーんと唸りながら悩む仕草をしていたザッくんは、「これはもうしょうがないよな。ルーちゃんのためだし!」となにか結論が出たようで、再び口を開く。


「あのな、ルーちゃん。その気持ちはさ、やきもちってやつなんじゃないか?」


「やき、もち?」


「レオが他のやつに取られるのが嫌なんだよ。レオに自分だけを見てほしいし、自分もレオだけを――っと、ありゃ」


 そこでザッくんは言葉を止めて、私の顔をまじまじと覗き込んだ。私はやめて欲しいと声に出すこともできず、必死で顔を両手で覆う。


 だって、すごくすごく驚いたの。初めて気づいたこの気持ちの正体に。驚きすぎて言葉も出ないとはこのことなんだね。


 そして私は気づいてしまったの。その気持ちの奥に隠された本当の感情に。だから、今のこの顔を誰にも見られるわけにはいかないのだ。


 きっととてつもなく情けない顔をしているだろう。身体中の熱が顔に集まって、茹でダコみたいに耳まで真っ赤に染まっていることは想像にかたくない。


 熱くて湯気が出てしまいそうな顔を、必死でザッくんから隠す。


 一度意識してしまったら、もう止めることはできそうにない。今まで見ないふりをしていたことも、パズルのピースがぴったりとはまるように全て一つのことに繋がっていく。胸に残る記憶それぞれが、宝石のようにキラキラと輝く想い出へと変貌を遂げて、最近の苦しい思いはさらに苦味を増した想いへ変わってしまった。


 ああ、私には一番縁遠いものだと思っていたのに、意外とすぐそこにあったみたい。


 私、ルーナ・フィーブルは、ずっとレオン様に恋をしていたみたいです。

本日はもう1話更新します。

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