Lv1 ▼銀髪美少女に転生しました!?
初連載です。最初の4話くらいまでは、3日おきに更新していこうと思います。それ以降は不定期ですが、お暇な方は是非お付き合い下さいませ。
よろしくお願いします!
追記:1話から全て加筆修正しました。内容はほとんど変わっておりませんが、少しは読みやすくなっているかと思います! (願望)
赤く、明るく光を放つ家を見て感じたのは、大きな失望感だった。
そんなはずはない。まさかうちに限って、そんなことが起こるはずがない。
そんな、願いに近い自己暗示でさえも、家に近づくにつれて解けてしまう。
はあ、はあ、はあ……!
私は野次馬たちをかきわけて前に出る。黒く染まった外壁に、わずかな希望は打ち砕かれた。
そこからの記憶は、ひどくあいまいだ。
覚えているのは、必死に伸ばした手と、それを遮るように伸びた腕だけ。
離して! やっとここまで来たのに。
やっと愛されるかもしれないのに!!
あふれる涙をぬぐいもせずに、ただひたすらに手を伸ばす。
「危ないからもう諦めなさい!」
誰かの叫ぶ声が聞こえる。でもどうしても諦めきれないの。お願い、行かせて。
ガタンとなにかが倒れる音がした。その拍子に緩んだ腕をすり抜けて、手を伸ばす。
「待ってて、あと少しだから」
あと少しで全て元通りになるはずだから──。
赤く揺らめいた視界の中で、私の意識は、ぷっつりと途絶えた。
*****
「ええっと、私って日本人ですよね?」
そうひとりごちてみるが、自分の国籍を間違える人なんてあまりいないだろう。そもそも鏡を見ながら言うセリフではない。
でも、それでも、この状況でだけはこんなヘンテコな発言も許してほしい。
だって──、
鏡に映っているのは、銀髪美少女なのだから!!
深呼吸していったん落ち着こう。
よしよし、なんとなく思い出してきたぞ!
私の名前はルーナ・フィーブル、七歳。リルザント王国の公爵令嬢だ。そしてどうやら、『前世の記憶』があるようなのだ。いわゆる、異世界転生というやつだね。
前世の記憶といっても、ネット小説の主人公たちのように専門的な知識があるわけではないし、特別な能力を授かったというわけでもないのだけれど。
覚えていることも、自分が日本の女子高校生だったことと、大学受験の直前に死んでしまったことくらいだ。……あれ、これってけっこうひどい死に方なのでは?
か、閑話休題!! なさけなさすぎて泣きそうなので、この話はいったん置いておこう。
さて、転生もののお約束としては乙女ゲームの世界か、その他剣と魔法の世界に転生している、というものが多い。
この場合、どのような世界に転生しているのかな?
全てのゲームに精通しているわけではないので、きちんと分析できないのがむずがゆい。
え? どうして転生したのにそんなに冷静なのかって?
ふっふっふ。それはですね、この手のゲームやネット小説が大好きだったからなのだ! 異世界転生チート・冒険ものはさることながら、種族もの、憑依、性転換etc……。
恋愛もの以外のジャンルはあらかた制覇した自信がある。
その中でも特に好きだったのは『聖女』!
聖なる力で民を救い、この世の全ての者に慈悲深く、神にさえ愛された娘……なんて素敵なのでしょう! 乙女心をくすぐられます!!
あっと、これではひとりごとを言っている可哀想な子になっちゃう。
とりあえずまだ七歳の子供だし、昨日までの記憶もないようなので、詳しいことはおいおい考えていくことにしよう。
性格なんて、このお年頃の子はすぐ変わっちゃうものだし! 不審がられたら「大好きなお話の主人公の真似なのですぅ」でごまかせるよね。
よし! 色々適当だけれど、なんとかやっていけそうな気がしてきたぞ!
難しいことは未来の私に任せることにして。
私は、すばらしい異世界ライフをエンジョイするんだ!