表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十三章 神の剣
689/1638

9





「貴様が我が王座を奪いし卑劣なる王か」

「いきなり人のことを卑劣というのはどうかと思います。前のニネフォス王」

「ふん。我が座っているべき座を奪ったのだ。卑劣と言わざるを得ぬな。しかし、殊勝なことだ。我に殺されるべく、大人しく待っているとは」

「そういうわけではありません。最後の最後まで王として務めを果たす。それこそ王の役割でしょう」

「王は王だ。王は我である。お前は王ではない」

「……随分な言いようですね。以前はまだそこまでの傲慢さはなかったと思いますが」


 カウルゼンツはニネフォス王都、そして王城までにたどり着いた。そこに来るまでの間小規模な争いはあったものの、彼らをどうにかできるほどの大規模な戦いはなかった。兵士たちも及び腰だったのも原因だろう。大規模な軍の派遣をしても、その軍の全滅で終わったのだから兵もこれ以上戦おうという気は起きなくなるのは仕方のないことかもしれない。

 そして今のニネフォス王がいる王座へとカウルゼンツはたどり着き、ニネフォスの王に対し罵言を浴びせている。ニネフォスの王は以前のカウルゼンツを知っている。多少王ゆえに、高貴なる者らしい傲慢さはあったものの、ここまで自分勝手で酷くはなかった。そうニネフォスの王は思った。

 カウルゼンツは確かに傲慢ながら、それでも王としてそれなりの人物ではあった。ここまで酷くなったのは偏に自分にすべての責を背負わせ彼が逃げざるを得なかった、当時のニネフォスの判断のせいだろう。自分が悪いとされてついていた座から追いやられたのだ。人に対して、あるいはニネフォスの民や存在に対する恨み、怒り、様々な感情を抱いてもおかしくはないだろう。それが原因でカウルゼンツがねじ曲がった……という可能性はある。まあそれ以上にカウルゼンツにそういう性格、精神性の資質があったというのもあるのかもしれない。


「…………私を殺すつもりですか?」

「当然だとも。王に成り代わりこの国を王の代わりに支配した。それは卑しき所業、許されぬ行いであろう。故に討つ。当然ではないか」

「………………確かに。しかしあなたを追い出したのはそもそも私というわけでもありません。この国の人間の総意……民まで含めた総意ではありませんが、あの時あなたにこの国における様々な出来事、行動、問題、それらの責があったことは事実。それが原因であなたは追いやられた……本来なら処刑されるはずだった。しかしあなたが逃げ、その結果この国も本来果たすべき責任をいる者がいなくなり困ったことになったのです」

「すべてを我に背負わせればいいと? 我は王、我の命は正しい物でありそれを遂行することこそこの国の者の行いとして正しかろう。それにより損害を受けたのであれば、我が悪いというわけではなくそれを成すべく力が足りなかったということにすぎぬ」

「それはつまりあなたの見極める力が弱かったということですね」

「まさか。我はそのような劣った能力ではない……ふん、いつまでも話していても仕方なかろう」


 カウルゼンツは剣を抜く。


「それがあの話に聞く王が振るいし剣ですか」

「そうだ。王が持つべき、我が持つべき、この国の樹立に携わった最強の剣。神に匹敵する力を持ち得る剣、神の剣。さすがニネフォスの樹立に携わった王が持っていただけはある、とても強力な力を秘めた剣だ。我に逆らうものを容易に排除できるほどに強力なものである」

「本物を見られるとは思いませんでした…………それがあなたに兵を殲滅するほどの力を与えた」

「そうだ。流石に我も生まれ持ってその力を持っていたわけではない……王座を追いやられたのはとても口惜しいことではあった。しかし、我にこの剣を探させる意欲を抱かせたのには必要なことだったのだろう。そして我はこの剣を見つけた。これこそニネフォスには必要だったことなのだろう。この国をこの世界における最大国家にする、我が国を世界最強の国家とする、この大陸を支配し我こそ世界の王となる、そのために必要だったのだ」

「…………それは無理でしょう」

「なんだと?」

「あなたが王となっても、国は立ち行かない。前のあなたならまだしも今のあなたでは、まともな国にならない」

「ふん。我が支配する場所こそ我が国だ。まともな国だと? 我が支配を受け、我の命に従えばそれこそ正しき国である」


 ある意味ではカウルゼンツが目指す国はカウルゼンツにとって都合のいい国ということだろう。それはそれで決して悪い国とは言えないかもしれないが、いい国ともいえないかもしれない。どうなるかは結局カウルゼンツの意思次第。そこまで極端な横暴はしないと思われるものの、そこそこ税が重くなるとか、一部大変なことにはなりそうだ。


「この剣にて討たれる名誉を与えよう」

「……それは名誉などではありません。討たれることが名誉などと、そんなことはありえない」

「王に討たれる……偽王が真の王に討たれる。それは正しき結果、そして真の王が持つ神の剣によって討たれるのは他にはない誉だ。なぜそんなことを言う?」

「たとえ醜くとも、生きて己の本分を果たす。やるべきことを成す、それこそが正しい行いです」

「何を言う。我らが為すべきことは己の生きる生きざまにふさわしい、正しき行いである。王は王の、兵は兵の、民は民の、それぞれの生き方を遂行する。我が為すべきは王の所業。ゆえに我は王として偽りの王を討つ。それこそ正しい行いである」

「……平行線ですね。言っても意味はなさそうです」

「意味がないのではない。お前は間違っている。ただそれだけだ。では逝くがいい」


 カウルゼンツの持つ剣がニネフォスの王に向けて振るわれた。それから目を背けず、ニネフォスの王はカウルゼンツによって斬られ殺される。その姿にカウルゼンツが思うことはない。カウルゼンツにとって彼はただの自分を追いやり王座に就いた偽物の王でしかない。そんな愚か者がどのような姿を見せようと、どのような生き方をしようと、どのような死に方を晒そうとも、カウルゼンツにとってはただの無意味な所業にすぎない。






 そうしてカウルゼンツによってニネフォスの王は討たれる。討たれたのち、空席となった王座にカウルゼンツがつき、再びニネフォスを支配する。カウルゼンツの持つ神の剣、またその剣の力によって作り替えた部下たちそういった様々な要因からカウルゼンツが王として返り咲いたことはすぐに国中に知らされる。そのことを喜んだものはいなかった。それだけニネフォスの財政はそこそこ貧窮気味であったし、今更カウルゼンツが王に戻って喜ぶものはいないし理由もない。そもそもカウルゼンツは兵を大量に殺している。送ったのは現……いや、元ニネフォスの王ではあるが、それを殺しつくしたのはカウルゼンツだ。それを喜べるものはいないだろう。しかし、カウルゼンツは力によって国を支配した。それに逆らえるだけの力はニネフォスの民にはない。

 そして国を支配したカウルゼンツの次の目的は明白だ。テイスピース、キアラート、かつて自分が攻めたその時に反攻し自分が王座から一時的に離れる原因となった国。ほかの国を吸収することも必要なことではあるが、まずはその私怨を先に解消することが彼にとっては優先されたようだ。一応その中にアンデールはない物の、当時の関係者として公也が呼ばれる可能性は高いだろう。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ