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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十二章 冥精
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「うまくいきませんでしたね」

「まあ、仕方ないわ。こればかりは私たちでどうにかできる問題ではないし」

「アンデール王はどうお思いで?」

「目的としては絶対に果たさなければならないこと、ではなかったからそこまでは。ちょっと残念ではあるけど、エルフ側にも事情があるのなら仕方ないことと思うしかないな」

「……私の力が足りなくてごめんなさい」

「いや、ハティのせいじゃないだろう。エルフとの人間の関係の問題と、今回の件で簡単にどうにかできることではなかったというだけの話だ。まあ、そうだよな。言われてみれば悪い奴追い払ったから仲良くしましょうといっても簡単にはいかないよな。仲良くなりたいなら、相応にお互い相手と付き合っていろいろ腹の内見せるなりしないとダメか」


 ハルティーアとしては今回の件に関して事前に話し合いをした、話し合いの場の下地づくりをしたということでそれでも公也がそこで話をして勝利条件を満たせなかった。内容的にも公也が悪いわけではない。なら自分の力が足りなかったと考えた。しかしそれは公也も違うと考えている。というよりこれに関しては公也が悪いわけでもハルティーアが悪いわけでもない。話としてそもそもの筋が違う内容だったというだけの話だ。


「まあ、今後仲良くなっていけばどうにかできるんじゃないか」

「…………そうね」

「でも師匠? 仲良くなるってどうやってやるっすか?」

「……メルでなんども人を送って話し合い、というわけにもいかないか」

「そもそも外交官の類がいませんよね、アンデールには」

「アンデール王がすべてそういうものを担っていませんか? あるいはクラムベルト様とか」

「………………対外の関係をどうにかする人物か」

「難しいわね。私がやるわけにもいかないし……やっぱりクラムベルトが一番適任よね。大体今もやっているようなものだし」

「そうだな」

「キミヤも自分で外に出向いて話し合うから似たようなものよね。とはいえ、クラムベルトや公也以外に担当できる人員を増やさないと。ただでさえクラムベルトはあれこれいろいろやっているのに……私だってあちらこちらに手を付けているからそういった部分に手を回す余裕はないし……キミヤも自分の仕事はしてほしくあるけど、キミヤはキミヤでアンデール内をあちこち飛び回ったりだし………………ああ、もう、エルフとの関係はいったん置いておくしかないわ。こればかりはしかたないわね。関係を結べればほかにない特色にはなったでしょうけど、できないなら仕方のないことよ」


 ハルティーアがあれこれ思考を回し、そして切る。結局のところ今どうにかできる問題、簡単に解決できる問題ではない。エルフほど簡単には言えないが結局のところ時間が解決する、時間をかけて解決する問題である。そしてそれは現時点におけるアンデールの問題、人手不足に関しても言える。人は簡単に育たないし、信頼関係も簡単には構築できない。人材の良し悪し、使ってもいいかどうか、信用できるか、信頼できるか、それらに関しても時間をかけて把握しなければいけないことである。結局簡単に人手を補充できるわけではない。まあ、ハルティーアやクラムベルトの負担を減らすため人を増やしたくはある。他国から来た人材を簡単に使うわけにもいかないためなかなか難しいのが現状であるが。


「まあ、それはいいわ。それよりも精霊だけど……連れていくことになるわけね」

「ああ。放置しておいた場合、彼女の能力を考えると不安すぎる」

「死の能力……死の精霊だから仕方がないけど、そんな誰でも殺せる能力を持つ存在が近くにいるというのは不安ね」

「師匠ももちろんっすけど、メルさんや冬将軍とかもダメっすかね?」

「ダメだろうな。精霊の力は自然の力、自然の性質。生きている以上死は誰にも訪れるものであり、死なない生き物はいない。だから死の精霊は誰であっても殺せる」

「冬姫とか冬将軍って寿命あるの?」

「寿命はないかもだけど、生死はそれとは関係ないからな……アンデッドは厳密に少し話が違ってくるけど」

「アンデッドねえ……でもアンデッドは扱えないものね」

「ネクロマンシーになることはいくらアンデールの中であろうとも許容はされないだろうね。わかってるよねキミヤ君?」

「…………アルディーノさんいないといつも通りっすね、ほんと」

「なんか最近の彼と雰囲気違って本来の彼なんだろうけど、ちょっと本当に彼だっけって不安になるわ、私も」


 アルディーノがいないのでロムニルはいつも通りである。まあ、そのいつも通りであるがアンデッドに関連する事柄に関しては厳しい。真帆痛快なのでそのあたりのことは一般的な人間よりもより厳しく言う立場である。


「わかってる。まあ、俺もアンデッドを作る魔法に関しては公に使うつもりはないよ」

「…………公でない場では?」

「使ったりしない。まあ、調査や研究は必要かなとは思う。アンデールには少しアンデッドに関する調査が必要な分もある。フェイやカシスの存在もあるしな」

「……確かにそれはそうかな」

「それに死の精霊のことを考えると使ったり作ったりしないにしても、アンデッドの運用……正確にはカシスにどうにか対応してもらうことも必要だ。そこは否定しないでもらいたい」

「別に僕も彼女をどうこう言うつもりはないけどね……あれはあれで爆弾なんだけど」


 アンデッドであるカシス。また呪いによって生きているカシス。その二つの要素は魔法あるいは特殊能力という分野においてはよくない内容の二つだろう。それがセットになっているカシスは他所、特に悪人でアンデッド系や呪いに関しての研究をしている相手には渡したくない、渡してはいけない存在である。そこにさらに死の精霊が加わるというのは色々な意味で心配になる。しかしアンデッドである彼女ならば死の精霊の力に対し高い抵抗能力を持ち得る。まあ絶対に死なないとは断言できないが、一応プルートのセリフからアンデッドの死に関しては普通の生命体とは違うことがわかっているため、そういう点でもアンデッド、カシスに任せるのは安心感がある。まあ物理的に抑えらるかどうかはまた別なのでちょっとそういう面での不安は残るが。


「まあ、連れて行くにしても監視するにしても……私たちは手伝わないから。いえ、手伝えないっていうのが実際でしょうけど」

「別に押し付けるつもりはない。強さ、能力的にも普通の相手じゃまともに対応しきれないだろうし……」

「それならいいの。それにしても今度はアンデールに精霊が増えるのね……」

「妖精境に精霊に竜、ワイバーン、城魔……なんというか、アンデールは魔境だね。アルディーノが喜ぶのも仕方ないな」

「師匠は人を連れてくるつもりはないっすか?」

「機会があれば連れてくる。実際少し前に人を連れてきただろう……」

「自主的にアンデールに来たいって人はいないのよね、ほぼ。場所的に仕方がないんでしょうけど。はあ……」


 アンデールの人間の民はなかなか増えない。時々公也が他所で成した対価に人をもらってくるという感じだが、それ以外だとほぼ人の行き来がない。一応人員を送り込むという形で人が増えるが、それでも一般的な民が増えるわけではない。冒険者もアンデールになかなか来ないし人が増えにくいのがアンデールにおける最大の問題点。こればかりは簡単にどうにかできることでもなくまたなんとも大変な話である。その代わり人間以外はそれなりに増える、というか増えているというか、多いというか。今回も精霊が来ることになったし、エルフとの関係が構築できていればエルフが来たかもしれない。エルフはまだ人種として数えられるからちょっとまた話は違ったかもしれないが。精霊はまず人間にはくわえられないだろう。この調子でアンデールに人間以外の民が増えていくのか、あるいは人種の民が増えていくのか。ちょっとだけハルティーアはそのことを不安に感じた。公也の成すことの結果でそういう感じになることに。


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