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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十二章 冥精
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 精霊は自然の化身にして実体を持たぬこの世界の法則に近い存在。魔物という摂理から外れ存在でありながら摂理に大きくかかかわる存在であり、炎の精霊は炎を自在に操り水の精霊は水を自在に操る。山の精霊や川の精霊などの自然環境の化身たる精霊であればその領域を管轄しているといえる。もしかしたらいるかもしれない人の精霊というものもいるかもしれないし、あまり見られないが木の精霊みたいな自然生物の化身たる精霊もいるといえばいる。しかし個の生命から派生した精霊や、あるいは分化して様々な要素、大きさ、性質を有するタイプの精霊に対し、この世界にその存在しかいないとされるタイプの精霊も世の中に入る。

 精霊ではないが冬の魔物である冬姫はこの世界に一体しか存在できない、それが消え死ねば次が生まれる、彼らのような摂理から外れた存在でも季節という自然の在りように属するがゆえにそういった仕組みができているわけである。魔物でもそうなのだから仮に精霊に冬の精霊や春の精霊などがいれば、それは季節ごとの流転に生まれ死ぬ存在であり、また季節という時節に一体しか存在しないもの、そういった感じにある。

 では冥精と名乗ったプルート、彼女は推定死の精霊である。そんな死という普通ではありえないような性質の概念、生命のあらゆるものが持つものであるが確実に訪れる終わりの概念を自身の力としているせいれ位である彼女はどうか。死という概念の力を持つ精霊が複数いるのは危険すぎる。ゆえに複数個体の活動はまずありえない。世界の仕組みとしてそういった力は単一の存在に宿される。そしてそれであるがゆえにその精霊の独自性、個の力は強い。本来は拡散する力が一つの存在に有されるためそうなる。つまりは死の精霊である冥精プルートは精霊の中でも各案に強い存在であるといえる。さらに言えばその力は死、その性質を考えれば強い弱い以上に厄介なところもあるだろう。


 そんな精霊が目の前に現れた、そんな状態ゆえの緊張感はなかなかなものである。


「それで、こんな場所に人間が何か用かしら? エルフの村でしょう? 人間が来ることなんて滅多にないのに。それに人間以外も変なのが多いわね? こんなところでエルフの村の人間を交えて何の話をしていたのかしら?」

「……………………」

「……………………」


 エルフたちは無言になる。何を言えばいいか、どう言い繕えばばいいか。少なくともプルートをどうにかしようとしていた、その相談である……とは言えないだろう。いや、エルフたちはそもそも公也たちを受け入れるかの判断でありそこから先の話はまだしていない。ただ公也たちの目的を考えれば受け入れるのであればそういう話になっただろう。そういう意味ではやはり真実を話すのは拙い。


「言わないの?」

「い、いえ。人間が来ていて、それを身内のエルフが連れてきたということでどう扱ったものかと年長者を呼びに行った次第で」

「ええ、そういうことで呼ばれここにきていたのです」

「ふうん? そう」


 真実ではあるが、核心部分は言っていない。その様子にプルートは不満そうだ。プルートからすればただそれだけでないのはわかっている。


「私のことを言おうとしていた理由はなぜかしら? 人間を入れるかどうかなら私のことは関係ないわよね」

「う……それは」

「そ、そこのアルディーノは精霊様に興味があるようで。そのお力が何なのか、と」

「へえー?」


 すっと視線がアルディーノのほうに行く。まあエルフの村側の二人に対し公也の側にいるエルフはわかりやすいので判断も早いだろう。


「そうだね、精霊も含めて魔物全般の研究をしているから、どういった生態なのか興味があるからね」

「魔物と一緒は気に入らないわね」


 むっとした様子のプルート。精霊は魔物に近いが自然によるものであり、その力は自然の摂理に属する。もっとも自然に訪れる死を早めたり遠ざけることができるような力が死の精霊の力であるならば確かにそれは魔物であると考えてもおかしくはないかもしれない。しかしそれを精霊側が受け入れているかどうかは別だ。精霊に限らず妖精あたりはどちらかというと人よりの考え方になるし、そういう存在はただ魔物として見られるのは気に入らないだろう。


「でも本当にそれだけ?」


 しかしプルートはさらに追及してくる。というより彼女は内実のすべてを把握しているわけではないが確実に悪だくみであるということはわかっている。


「それだけの話ならそこにいる人間その他は関係ない話になるわね? でもそうじゃないでしょう?」


 公也たちを話しに交えてくるプルート。しかし一応はそれぞれの話は別枠で考えられるわけであるが。まあ実際にどうであるかではなく彼女がどう考えるか次第であるし、彼女の場合現状としては少々特殊。そもそもなぜ彼女は公也たちの前に出たのか。いや、公也たちが会話しているところに参入できたのか。


「あ!」

「わっ?」

「ん?」

「ヴィローサ? どうしたのです?」


 いきなり声を上げた妖精のヴィローサ。その様子にプルートを含めその場にいた全員の視線、意識が彼女に寄せられる。


「さっきの感覚、私が毒について把握するときの感覚に近いの」

「……ああ、何か感じていたやつか」

「うん。あれ、自分の力の及ぶ範囲ではないけどいろいろ周囲の把握をすることができる範囲、って感じかな?」

「…………なるほど」


 すっと公也の視線はプルートに向く。


「事前に俺たちのことを把握したうえで来たのか」

「……あら。なんだ、わかっちゃったの? そうよ。ここに人間とか変なのとか、エルフとかいるのは把握していたわ。それで何か動きを見せたし、私について話していた。だから介入したのよ。もちろん……何の目的で来たかもわかっているわよ?」


 彼女がここに来た時点で彼女はエルフたちや公也たちに目的を訪ねる必要はない。すでにそのすべてをこっそり聞いていたがゆえに。まあ彼女の力の感知や把握の範囲であるからと言って、それは彼女の力、死の力に関してのは感知範囲のはずである。なのに事情を理解しているというのはどうなのか……もしかしたらこっそり隠れて情報を収集していたとかだろうか。それにしては精霊である彼女は隠れるのには向かないし公也たちも感覚的に把握しやすいはず。少しそのあたりの事情はわからないところだが、とりあえず彼女は公也たちが彼女を倒す……というと違うが、エルフの村に起きた問題の解決に来たということは把握しているらしい。

 今まで事情を尋ねていたのはお遊び。すべてを理解している彼女がどうしようと困っているエルフや公也たちをみて楽しむためのものだった。しかし種明かしがされた以上おとなしくしている理由はない。いきなり襲ってくる、敵対するということはないが、少なくとも今回の事情に関しての話に移ることになる。




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