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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十二章 冥精
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「いやあ、しかしまさか村に人を含めた多くの人物を連れてくることになるとはね」

「……もともとはそういう目的だったよな?」

「精霊をどうにかするため、だけどね。それでもねえ」

「エルフの村に人が行くのはあまりよろしくないのです?」

「まあ、思うところのある仲間は多いよね。僕はどうでもいいけど。悪い奴は悪いし良い奴は良い。仲のいい人間を一般的な人間として他の人間を見ないし、関わった悪人を一般的な人間として他の人間を見たりはしないよ。でも、やっぱり一般的なエルフにとっての人間は自分たちのところに無暗にかかわって迷惑になる人間が多いからね。それでも商人が村に来たりして商売して付き合いができて、そこまで悪いやつらばかりじゃないってのは理解しないわけでもないけどさ。人間に家族を殺されたり誘拐されたりしてたらやっぱり人間に対して恨みを抱いていることもあるし。そのあたりは複雑だよ」

「それはそうだろうな」


 エルフは基本的に人間に対して好意的ではないが、それに関しては個人差がある。場合によってはアルディーノのように人間だからと嫌ったりせずに応対することもある。そもそも人間に限らず他種族、村の外の存在に対して同族以外に対しては元々から好意的ではない、積極的ではない感じである。そして中には個人的な人間との付き合いのある人物もいれば、家族が人間と関わり不幸になった、自分が被害を受けたなどで人間嫌い、人間に恨みを持つケースもある。そのあたりはその村の状況であったり個々人の歴史、来歴などいろいろな事情があったりと様々。ただ、やはり基本的にはあまり受け入れられるというわけではない、というところだ。


「別に人が来るのが悪いわけじゃないけど、やっぱり扱いには困るんだよね。もっともエルフの村がある場所はこんな辺境だから滅多に人が来ないわけだけど」

「エルフが連れてくることは?」

「ほぼないよ。商人がくるけど……彼らは彼らでエルフ相手に利益を見出すためにきているだけだし。僕みたいに人間に友人を持っていても人間を連れてくることはないよ。人間にとっては居辛いし来辛いわけだから」

「今回みたいなケースは珍しいのですね」

「すごく珍しいね。まあ、精霊が村に来たという時点で珍しいから人間が来ることも珍しいけどそれくらいだよ。むしろ精霊の方がエルフの村の歴史的には起こりえないだろう自体だからそっちの方が稀少だね」

「そういうもんだいじゃないんじゃないかなー。ま、私が気にすることじゃないけど」

「……しかし、雰囲気がちょっと悪いな?」

「精霊がいるからかな? 感覚的に存在を感じるならちょっとやり辛いかもね」

「それだけではないような気がするのです……」

「うーん……なんだろう、私もこれに近いところはあったような……」


 ヴィローサは近い感覚に覚えがある。しかしそれが何だったかははっきりとは思い出せない。思い出してほしいところだが、公也の役に立つためならいくらでも考えるにしてもすぐに思い出せるほど思考、記憶を動かせるわけでもない。


「……心当たりを思い出したら行ってくれ」

「うん、頑張って思い出す」

「真剣なのですね……ヴィローサが感覚的にわかるなら毒、なのですかね」

「そこはヴィラはなんだかんだで妖精だからな……」

「一般的な妖精だから持ちえる能力もあるかもしれないってことかな? でもそういう特殊な力は妖精の持つ性質以上の物はそうはなかったと思うけどね」

「ヴィローサは他の妖精よりも強いので少々特殊なのですけど、それでも妖精であることは変わらないのです。そこまでの大差はないと思われるのですが」


 ヴィローサもその特殊性はいろいろあるが、それでもあくまで妖精の延長だ。かなり妖精にしては能力の範疇、強さ、性質の違いがあったりもしなくはないが。なのでヴィローサの感じた感覚は妖精のそれなのだが……すぐに思いつかないのは普段使わない部分だからか、あるいは慣れ過ぎて当たり前になっているからか。まあそのうち思い出すかもしれない。




 そんな風にエルフの村に近づこうとしていた公也をエルフの村から出ていたエルフが発見する。


「人間!? なんでこんなところに……いや、ああ、まて、アルディーノ? なんでお前も?」

「やあ。ちょっと前ぶり」

「……そういえば一度戻ってきていたな。いつの間にかいなくなってたけど」


 エルフの村、アルディーノの出身の村でもアルディーノの扱いはそんなもの。まあ魔物に興味を持ち研究のため村の外に出て行って長いので彼らもアルディーノに対しての印象はたまに村に戻ってくる外に出たエルフということでだいぶ印象薄目なところにあるのかもしれない。


「それでそこの人間はなんだよ? お前が連れてきたのか? お前の知り合いか?」

「うーん……まあ、知り合いと言えば知り合いかな?」

「はあ? なんだそれ。はっきりしろよな」


 彼の反応も正しいが、アルディーノの反応も正しい。アルディーノにとってはかなり記憶の彼方にあった一応知り合い、友人の友人という存在であって別にそこまで記憶にはない感じであった相手である。まあアンデールの王として一応その存在は知っていたとはいえ、同一視はしていなかった、そもそも公也という存在自体あまり覚えていないとかいろいろ理由はあるのだが。


「それでなんで連れてきたんだよ? 今の状況理解してるか?」

「ああ、もちろん。精霊がまだいるのかい?」

「いるよ。はあ……いや、別にいるからなんだって話だけど。いられるだけでも迷惑だけどまあそれだけだからまだいいけどな。扱いに困るからどうにもやり辛いし、息が詰まるし狩りも最近うまくいかないし物資も減っていく一方だし。そんな大変な状況だけど、そんなところに人間を連れてきて何をする気だよ」


 なんだかんだで精霊が村に来て居ついたことでエルフ側にとっても色々大変らしい。そもそも精霊という強大な存在がいるということはその力について理解している状態で公也が居座るようなものである。いつその暴力を振るわれるのか、強大な力で皆殺しにされたりしないか、その人格について知らなければそう感じる。人間である公也相手でもそう感じられるだろうというのにエルフの村にいるのは精霊。妖精ほどではないとはいえ魔物、人外としての感覚、考え、気まぐれさがある。


「いや、その問題を解決するためにね」

「はあっ!? いや、なんで人間に任せるんだよ!? さすがにダメだろそれは!?」


 ただでさえエルフは村の外の存在と関わることが少ない。そのうえその相手、人間に任せるというのはありえない。人間嫌いなところもあるし、人間という存在とのかかわり方の問題もある。仮に欲深な人間が関わり解決した場合、その時エルフたちに求められる対価は如何ほどか。資源、財産、財宝、場合によっては人……エルフの人材を求められる可能性もある。人間は何を目的に関わってくるかわからない。できれば問題があっても関わらず自分たちだけで、というのが一般的だ。

 しかしアルディーノはその一般的な対応の仕方を破り公也を連れてきた。人間を連れてきたということでエルフの村の彼の反応は当然のものだろう。しかしアルディーノも考えなしではない。公也の立場的なものもあるし、ロムニルたちの知り合いという気安さ、そもそも公也という存在と知り合いだったという点もありまだ受け入れやすい。それに魔法使いとしての追究者としての側面、研究者としての性質、知識を求めるものとしての同類でもある。一応ハルティーアが来て交渉、後々の関係構築なども考えられているが少なくとも公也を通じて話せば公也の知識以外の欲の薄さもありそこまで大きな問題にはならないだろうという考えがある。まあそういった点では似たり寄ったりというか、似通ったところのあるアルディーノは分かる方である、というかそんな感じである。

 まあそんなこと他のエルフがわかったものではないのだが。


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