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「私もついていきますので。お忘れなく」
「レリトン。まあ、私の護衛みたいな感じだし当然かしら……」
キアラートからハルティーアの護衛としてついてきている騎士もついていく。さて、そうしてそれなりの人数……全体で見ればそれほどでもないし、軍事行動などに比べればそこまででもないが、アンデールの住人、アンデルク城の住人としての活動としてみれば結構な大人数での行動である。
「人が増えるとハルティーアの守りとしては十分だが……」
「移動に際しての問題があるのです。私は含めないので九人なのです? さすがに少し多いのですね」
「ヴィローサは妖精で小さいから八人だとしても、メルが運ぶ場合ちょっと窮屈になるか」
一応メルシーネが大人数を運べないというわけではない。ただ、そもそもメルシーネでそこまで大人数を運ぶことは想定していない……いや、八人くらいなら大人数ともいえない気もするが。とはいえ、メルシーネの大きさを考えれば数人運ぶだけでも結構大変だ。力の問題ではなく大きさ、体格的な問題で。箱、籠、人が乗る物に乗せてそれを運ぶ形で運ぶわけだが、メルシーネが持てる大きさを考えてもそこまで大人数を運ぶのは大変だ。
「メルの背中に乗るとかは無理なのかしら? キミヤならできるんじゃないの?」
「できなくはないが……」
「安全面で却下なのです。全員を運びながら直接乗っているご主人様に気を遣うのは大変なのです。そもそもそれでも多いのですよ。四人……は無理にしても五人、窮屈になるかもですが六人くらいにはしてほしいのです」
「つまり二人が外れる、ということか……」
「ここは仕方がないのです。ワイバーンを使うのですよ」
メルシーネだけで運ぶのが大変ならばワイバーンを運用すればいい。メルシーネがいればワイバーンは容易に従えられる、言うことを聞くので問題はない。ただ、メルシーネとしては自分の力が及ばないということを認めるので納得がいかないというか気にいらないというか。
「……彼らも最近は自由に飛び立つ機会も少ないので鬱憤晴らしにはよさそうですね」
「残念ながら全員連れて行くわけじゃないのですよ? まあ、鬱憤晴らしに少しは飛ばさせた方がいいのですね。後で言っておくのでワイバーンの回収はちゃんとしておくのですよーオーガン」
「もちろんです」
「しかしワイバーンか。乗っていくとなると、俺になるだろうな」
「だから使いたくなかったのですが……」
ワイバーンに乗るということになるとワイバーンを従えられる、ワイバーンの背に乗っていられるだけの能力を持っていないといけない。メルシーネはまだ背に乗る形でなら気を使ってくれるので掴まっているのは難しくないところだが、ワイバーンはそこまで気を使ってはくれない。そして今回ついてく人間のほとんどは竜に乗るということが碌にできないタイプの人間……ハルティーアからロムニルたちとか基本的に肉体的な強さが弱い人物ではまず乗れない。フーマルやウィタもワイバーンを従えその背に乗るのには向かない。となると公也が乗るしかない。それは自分の役割だとメルシーネは思っているわけで納得がいかないというか、きにいらないというか。
「それなら私もキイ様についていくからねー?」
「まあ、それくらいは問題ないが……」
「でもご主人様が離れるにしてもまだ人数はちょっと多いのです。せめてあと一人、できれば二人外れる方がいいのですけど。いえ、わたしは別にいいのですけど乗る側が大変なのですよ? わたしも運ぶのはそこそこ大変なのですし、可能な限り重さは少し減らしたいのですけど」
「………………ならわたしもキミヤの方にのる」
「ウィタが外れるのですね。まあ、別にいいのですけど……ウィタだとそこまで大差はないかもなのですね」
「アルディーノを置いていくわけにもいかないし、ハルティーアが行く以上ついてくる二人はいるし……ロムニルたちはどうする?」
「……そうだな。私たちも行くつもりだったが、無理に行く必要もないだろう。リーリェを置いて私がついていくとしよう」
「あら…………まあ、そうなるとしかたがないわね」
「フーマル、ロムニル、アルディーノ、ハルティーア、シェリー、レリトン……六人だな。その六人をメルに運んでもらう。俺はウィタとヴィローサと一緒にワイバーンに乗ってついていく、といった感じか」
「そもそもアルディーノに場所を教えてもらわなければ困るのですけどね」
運ぶのはメルシーネなので事前にどこに向かうのか大まかな場所だけでも聞いておかなければいけない。後々近くなればまた下してアルディーノを空に運びそこから大まかな場所を指示してもらいまた運搬。そんな感じになるだろう。
「ええっと、何を言っているかよくわからないんだけど? いや、別に場所を教えるのは良いというか、運んでもらうなら確かに必要なんだろうけど……」
「…………アルディーノ、彼女が何なのかはわかっているか?」
「うーん、まあ一応? 魔物だろうというのはわかるよ? でも人型の魔物は珍しくもないだろう」
「そうね。ただの人型の魔物ならまあ、そこにいる雪奈ちゃんだってそうではあるし。ああ、だからこそメルちゃんもそうだと思ってしまうというのはあるのかしら」
「え?」
「……今ここで流石に全部は見せられないのですけど、これくらいは見せられるのですよ?」
「うわっ!? これは……羽? いや、翼、ワイバーンの? 違う、竜か?」
メルシーネが己の一部を変化し竜の姿を現す。基本的にはアンデルク城の人間は驚かないが、一部知らなかったりあまりなじみがなかったりする人物は少し驚いたり、あるいはその存在に恐れを抱いたり色々である。とはいえ、アンデルク城の住人的に考えればちょっと肉体を変化させるとか、魔物みがあるとかそれくらいは別に珍しくもないというか。
「ここにいる竜、皆を運ぶ竜は私自身なのです。だから場所に関して教えてもらうことになるのですよ。運ぶ私が知らなければ運べないのです」
「…………とんでもないは話だ。竜? 本当に? これは調査したい、人に変化できる竜とかすごく調査したい……」
城魔であるペティエットに続き、今度はメルシーネもロックオンされたらしい。まあペティエットもまだ厳密にはロックオンされていないし、アルディーノにとっては雪奈あたりはどうなのだろうと思うところ。今はまだ確認していないがカシスは、あるいあウィタは、フェイは、ここにはいないが冬姫たちは。彼の興味は恐らく尽きない、現在の魔物と呼べる立場、立ち位置の存在の多さもあって彼にとってはアンデルク城は垂涎ものの場所である。
まあ、そんな彼の欲よりも現状はどうするかを決める方が先、といっても行き方についてはだいたい決まったのであとはアルディーノからエルフの村の所在地について聞き取るくらいか。なおアルディーノが魔物研究としてアンデルク城に住んでいる諸々の住人の生態調査を行うのはまだまだ先である。つまり彼もまたこの地に残ることになりそうな人物である。もっとも彼の場合ここに住んでいる魔物の調査が終わればまた旅立ちそうだが。




