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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
二十二章 冥精
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8





「まあ、別にエルフがどう対応するかはどうでもいいのですよ」

「よくないわ。無駄骨になるなら行かないほうがいいということになるわ」

「ハルティーアの言うこともわかるのですが、それは結果が出なければわからないことになるのです。最悪精霊の確保でもできれば無駄ではないのです」

「精霊の確保って……」

「殺した方が後腐れないとは思うのですがご主人様はたぶんそういうことしないですし」


 基本的に公也は今回精霊相手に敵対しても殺すかと言われればおそらく殺さないのではないかと思われる。そういう点でもメルシーネには大きく不満というか、不安になる部分なのだが。まあ相手に対してどうするかは現時点ですべてを決めることは難しいのでおいておくとして。エルフのところに行っても精霊を確保できればエルフと関わらなくても大きい。アルディーノに倣って調査できればいい、というわけではないがその力を借り受けられるのは良いし、最悪公也が<暴食>で食らい知識を得るのでも損にはならない。その時はその時で仕方がない。そもそも公也が現場に出向きどうにかするだけなので損失自体は一切ないのである。

 メルシーネにとっての問題はどう対応するか、どう向かうか、誰が向かうか、現場でエルフ相手にどう対処するか、などである。こればかりは公也だけでは対応が難しい。一応国王ですぐに話ができるとはいえ、今回の件は多種の問題でもあるし国との関係としても複雑なものもある。そういう点で言えばテイスピースの時も誰かが一緒についていくべきだったのだが、そちらはとりあえず置いておこう。あの時はまだ急な事態で人が付いていけるほどの余裕もない状態だった。現状では大分状況も安定している。まあ今もまだ公也の手が必要な部分もあるし、途中になっている事態も多いが、一応国となってからそれなりに時間が経ち落ち着いてきている。なので誰かがついていってもいい、そんな余裕のある状況だ。


「エルフを相手にするのです。ご主人様だけでは対応の不備とか、話し合いの問題もあると思うのです」

「……エルフは長寿だから相手に主導権を持っていかれる可能性があるということか」


 公也は一応強さという点ではとんでもないが若輩者、まだまだ年齢的には若い人間である。この世界における経験としても微妙でもしかしたらエルフ相手に手玉に取られる可能性がある。まあそれに関して言えば公也に限らずこの場にいる多くが若輩と言えるわけだが。


「いやあ、それは大丈夫じゃないかな? エルフってよそ者と関わる機会って少ないわけだし……」


 エルフは外との関わりが少ない。基本的に自分たちだけ、自分たちの住む村だけで色々問題の解決を行っており、あまり外の人間と対話することが少ない。とはいえ一切そういった方面の能力がないというわけではなく、外に出向いたことのあるエルフが持ち込んだ情報から現在の世界情勢を把握したり、場合によっては色々周りを見に行ったりしていることも珍しくはない。とはいえ、エルフ自体総数は多くないし寿命の長さ、老化の遅さ、入れ替わりのサイクルの長さの問題もありそこまででもないところもある。しかしやはり年齢経過の経験はバカにはできないだろう。身内だけが相手とはいえ、言葉選び、会話の読み、頑固さ、いろいろな点で強みはある……その強みは本当に強みか微妙では? まあ、そういった諸々もあるのでやはり公也よりは人との対話に慣れている相手の方がいいだろう。


「でもご主人様よりはエルフ相手にちゃんと相手できる方がいいのです。ご主人様はこれであまり他人との会話は得意ではないのです」

「否定はしないけどな……」

「メルはキイ様のことぼろ糞に言うわよね。本当にキイ様のことご主人様だと思っているわけ?」

「事実を言うのは悪いことではないのです。主の言うことを聞くだけが主のためではないのですよ」


 一部には痛い言葉である。メルシーネはヴィローサのように盲目的に従うというわけではない。主のためであれば叱ることもある。まあ公也が公也なのでメルシーネが多少叱ったところで簡単には変わらないし改善しないのだが。一応当座の対応はするが、やはり後にまた同じことがあった時改善されているかというと微妙であることが多い。そこは公也の性格上の問題とか精神的な性質の問題である。


「それはつまり交渉役を誰か連れていけ、ということかしら?」

「そうなるのです。まあ移動の関係上わたしが連れて行くことになるですけど」

「ならやっぱり私かしら。立場上の代わりもいるし、基本的にここのことはクラムベルトに任せられるわけだし」

「ハルティーア様!?」

「王妃がそういうことをするのはどうかと思うのですが……」

「あら。じゃあ誰か代わりに行ってくれると? キミヤの代わりをするなら私が一番でしょう。これが他国への対応となると私が行くわけにもいかないでしょうけど、エルフ相手なら問題もなさそうだし」

「そういう問題ではありません。王妃としての振る舞いをですね……」

「それに関しては今更でしょ。国の仕事をしている時点でどうかと思うところはあるし。キミヤ、いいわよね?」

「安全面で待ったをかけたいかな」


 どうやらハルティーアがついていく、ということに乗り気なようだ。一般的な他国へ向かう場合どうしても側妃であるハルティーアでは難しくついていくならアリルフィーラの方がいいだろう。ペルシアも含めて三人一緒についていく、というのなら行きやすいがアリルフィーラとハルティーアだけは難しいし、ハルティーアだけも厳しい。ならアリルフィーラだが、アリルフィーラはあまり外に出向くつもりもないわけである。なので基本公也が出向き対応を、となるのである。

 だが今回は相手がエルフということもあり、そもそも国とかではなく村、一集落が相手なので交渉もハルティーアが出向いても問題ない。フットワークの軽さを考えてもハルティーアの方がやりやすいし、いざというときの問題、代わりに関してもハルティーアなら問題はないという話になる。王妃は上にアリルフィーラ、国政は同格にクラムベルトがいる。なので自分がいなくなっても大丈夫だろうという判断だ。

 しかし公也としてはまずハルティーアがついてくるということで彼女に危険があること自体が望まぬところである。キアラートとの関係、というのは一切重要視していない。ただハルティーアの安否を気遣ってのものだ。


「安全面の問題は他にも誰かがついていけばいいのですが……相手が問題になるのですね」

「精霊でしょ? キイ様だって殺される可能性があるくらいに危ない相手、死の力、冥界の神様の名前を持った精霊だって話でしょ? あまり安全のためとか言ってついていくのも難しいんじゃない? あ、私あもちろんついていくからね? キイ様に危険があったら私が守るから!」


 今回に限っては相手の問題がある。精霊なのでその強さ、能力の不穏さもあり下手な戦力は連れていけない。とはいえ、いつものようにメルシーネやヴィローサ、そしてはルティーアだけという少数で行くわけにもいかないという問題がある。


「雪奈が来てくれるとありがたいのですけど」

「だめですよー? 私は宿を経営する使命があるのですから!」

「……まあ、雪奈は仕方がないよな」

「ウィタを連れて行く、のはフーマルを連れて行くのと大差はないのですね。フーマルもついてくるのがいいのです。でも他はどうするべきですかね……」

「フィリアは借りたらダメか?」

「いいですよ」

「アリルフィーラ様!?」

「……別に私もついていくので侍従の方での大きな問題はないのですが」


 ハルティーアの侍女、ハルティーアの下に従うキアラートから来た人員の中でも彼女の周りのことに関わる侍女の長、シェリーがフィリアを動かすということにちょっとむっとした表情で言葉を紡ぐ。これに関して言えば、シェリーもフィリアの実力を理解したうえで言っている。シェリーと比べればフィリアの方が上だがシェリーも決して弱者というわけではない。そういう点ではフィリアも一緒についてくるなら確かに悪くはないかもしれないが、そこは侍女としてのプライドもある。まあ主の安全が優先になるが。

 しかしフィリアの方はアリルフィーラがいいといっても文句はある。彼女はアリルフィーラのために働きアリルフィーラのために動く。アリルフィーラの下から話されるのはとても納得のいかない点だ。


「キミヤ様?」

「…………いや、フィリアは置いておこう。納得いかない人物もいるし」

「基本的に戦力として動かせる人員が少ないのが問題なのですね……」

「とりあえず現状行く人間をまとめるか。俺、ヴィローサ、フーマル、ウィタ、ハルティーア、メルシーネ、あとは一応シェリーもか。あとアルディーノ」

「私も行こう。魔法使いがいれば少しはましになるだろう」

「ロムニル? まあ、今回のはアルディーノが持ち込んだ件だし、私も手伝うべきかしら……」

「ロムニルにリーリェもか……」


 戦力としては微妙なところがあるものの、数をそろえれば少しはましになるというところもなくはない。まあ重要なところは精霊を相手にするのではなくハルティーアを守るための人員であるということ。エルフの村に出向き精霊を相手にするのは公也やヴィローサ、メルシーネだけでいい。ウィタやフーマルなどはハルティーアの守りについてもらえればいいだろう。ロムニルとリーリェも基本はそちらの仕事、アルディーノはエルフ関連なので公也たちと一緒に村に行くべきだろう。そんな感じで一時待機でハルティーアを村の近くにおいておき、公也は精霊を相手にエルフの村に向かう、そんな感じになるだろうか。



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