奴隷屋の話
PV ブクマ 評価ありがとうございます。
奴隷屋に入って、まず最初に抱いた感想は――意外と綺麗だった。
奴隷といえば、牢屋みたいなところに閉じ込められているのかと思いきや、全然そんな事は無く、綺麗では無いが汚くも無い、まさに普通といえる個室の中に奴隷達が入っていた。
「あぁ、おかえりナル、それと話は聞いております。ナルを連れて来ていただきありがとうございます冒険者様。」
奴隷屋に入った俺達に話しかけてきたのは、おそらく奴隷屋の店主だろう。
店主の見た目は顎髭を蓄えた長身細身の優男おじさんといった感じだった。
「ただいまです、ライス様。」
ナルが店主に挨拶をする。やっぱり俺の想像していた奴隷屋とは全然違うみたいだった。ナルが店主のライスさんを怖がっていないのが証拠だ。
結局奴隷を虐げるのは雇った奴らって事か。
「いえいえ、どうも俺がウントで彼女がレイナと言います。」
「あたしがレイナよ!」
「ウント様とレイナ様ですね、この度は本当にありがとうございます。」
本当にライスさんは丁寧な人だなぁ。なんで奴隷屋なんてしてるんだ? まぁ人間生きていく為なら何でもする生き物だからな。
「いえ、冒険者として当然の事をしただけですよ。」
俺がそう言うとライスさんの顔が少し俯いた。
「ありがとうございます。全ての人間がウント様のような人間なら世界は平和なんでしょうね。」
「それって奴隷を悪用する人が多いってことですか?」
ライスさんは悲しげな表情で答える。
「はい。この奴隷屋では性奴隷は扱っていないのですが、そういう扱いをする雇い主が多いのが現状で……」
性奴隷――その響きに少し揺れたが、俺はマトモな人間なので大丈夫だ。
「それに対する対処策はないんですか?」
「あるにはあるのですが、雇い主が貴族や高貴な方々が多いので下手に対処出来ないもので」
「あたし貴族って嫌いだわ!」
なるほどな、ほんっとファンタジー世界の貴族ってろくな奴居ないな。
「それは難しい問題ですね。ではナルもそういう雇われ方をされてるんでしょうか?」
ライスさんが、これまた大きなため息を吐いた。相当ストレスが溜まっているんだろう。
「いえ、ナルは性奴隷の様な扱いは受けていないのですが、特殊スキルを悪用される事が多く、まさに昨日の様な事が多々起きています。」
ライスさんの話を聞き、俺は昨日死んだ冒険者達に腹が立ってきた。それはレイナも同じ様で――
「ほんっとムカつくわあいつら!ナルちゃんを利用するなんて死んだからって許さないわ!」
「確かにレイナの言う通りだ。流石の俺でも怒りが爆発しそうだ。」
俺達がブツブツと文句を垂れていると、部屋の隅の方で大人しくしていたナルが珍しく話に割って入ってきた。
「お二人共、僕なんかの為にやめてください!所詮僕は奴隷ですから利用されても大丈夫ですから!」
珍しく叫んだナルの目には水が溜まっていた。
――何故こんな小さい少女がこんな事で涙を流さなければいけないのだろう。
「じゃあ何で、ナルは泣いてんだよ! 嫌だから泣いてるんだろ?」
「そうよ!ナルちゃんが泣く必要なんてどこにもないわよ!」
「……なんで僕に優しくするんですがぁ!!――もゔ奴隷やりたくないよぉ! 」
ナルの顔は更にぐしゃぐしゃになり、遂には大声で泣き出してしまった。俺とレイナも泣いてしまった。
「ほぉ、これはどうしましょうか。」
ライスさんが顎に手を当て何か考え事した後、何か閃いたようだった。
「ウント様。」
俺は涙を拭い、ライスさん方を振り返る。
「何ですかライスさん? 俺いま絶賛大泣き中なんですけど、」
ライスさんは俺の顔を見て、笑みを浮かべると、優しく、運命の人でも見つけたかのような目で俺に提案した。
「――ナルを引き取ってくれませんか?」




