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フロンティア・アイズ・マナ《VRMMORPG世界の侵略》  作者: フィガレット
第10章 アイズロード外伝『ニャーレ』

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ヴィラン・フォリス 

 更にブラブラと村をウロウロとする。ときおり、見つけたオブジェクトを眺めて破壊しようとしたり、動かそうとしたり。完全に不審者である。

 村に残っていた女性の一人がそれを見かけて声をかけた。


「見ない顔ですね。どなたです?」


 まごう事ない不審者なので当然の様に警戒されていた。それに対して、フォリスは少し考えた表情を見せた後、あざとく可愛らしい感じで首を傾げて困った顔を見せただけで何も言葉を発しなかった。それを見て更に不審に思った女性は問いかけた。


「もしかして、またラーキの所から来た新しい人かしら?」


 その言葉を聞いて、フォリスは待ってました、と言わんばかりに話し始めたのだ。


「ラーキの所、とはどこですか?」

「ん?違ったのかしら。初期リスポーン地点から見えるこっちからみて丘の向こう側に集落を作ってこっちの村に悪さばっかりしてくる迷惑な連中がいるのよ。だからその一味かと勘違いしてしまったわ。ごめんなさいね」


 丁寧に回答してくれる女性。しかし、それは勘違いではなく正解である。まだ予定だが・・・。謝罪されて少し申し訳ない感じにもなりそうなものだが、フォリスは全く気にしない。前情報なしでラーキの所に行く訳にはいかないので辻褄合わせの為に情報が欲しかったフォリスは、また一つ目的を達したと言える。


「へぇ、そんな人達がいるんだね」


 知っているのに、白々しく嘘を吐く。


「あんたは悪い事をしちゃダメだよ」

「なんで?」

「人に迷惑を掛けるといずれ自分に返ってくる。それに失った信頼を取り戻すのはとても難しいからね」


 その言葉は、きっと正しいのだろう。しかし、それでも・・・


「それでも私は悪さをするし、清廉潔白なままではいられないな。そもそもに清廉潔白な人なんているのかい?いたとして、それは絶対的に正しいのかい?」


 フォリスはその女性に興味が湧いたのか、少し意地悪な質問を投げかけた。


「なるほど、ちゃんと考えているタイプかい。まぁ、この世界でなら・・・取り返しが付かない事もないかしら」


 その回答は彼の予想を随分と上回っていた。

 どうやら女性はフォリスが思っている以上に思慮深い人だった様だ。

 彼は思った。自らの最終的な目的を思えば今からでもやろうとしている事など瑣末な事だと言える程に、私のごうは深い、と。彼は人類の敵である。


「あなたの様な人がいるから・・・少し苦しく思うよ。きっと貴方のそれこそが世界の強度になり得る。私は貴方を尊敬する。それでも私は私の道を行くのだけどもね」


「・・・どうやら、ラーキ達みたいな子供じゃないみたいね。厄介な人が来てしまった様だけど、でもまぁ・・・あの子達なら大丈夫ね。本当に面白い世界だわ」


 フォリスの思いもよらず、不思議な会話が生まれていた。

 それはこの時は誰も知らなかった・・・【フィア】の一面だった。


「じゃぁ、私はそろそろ行きますね」

「悪さするんじゃないよ。と言ってもするんだろうけど。強い人ばかりじゃないんだから、ちゃんと手加減してあげなさいね」


 フォリスにとって子供扱いされるのは新鮮だった。


「私の心配はしないんだね」

「腹の座っている相手に言う言葉じゃないよ」


 それが少し心地よかった自分に驚いたが、彼は別れを告げてまた、動き出した。


・・・


「さて、次はギルドの建物へ行こうか♪」


 フォリスは気を取り直して、残る目的を達成するべくギルドの建物を目指した。

 中に入ると、受付にキョウコがいた。


「うわ・・・。本当に来た」


 事前にディアから情報を聴いていたキョウコは露骨に嫌そうな顔をする。


「そんな露骨に嫌そうな顔をしないでくれよ。知人だとバレてしまうぞ?」


 フォリスはニヤニヤとしながら受付のキョウコの前に立つ。


「いらっしゃいませ。ギルドにどの様なご用件ですか?」


 キョウコは受付のテンプレートをこなす。ファスのギルドにはキョウコを始めとする三人の職員がいた。窓口は総合的な質疑応答をこなすキョウコの他に買い取り専門の窓口とクエストの受注をこなす職員の窓口があった。


「そうだなぁ。とりあえずは買い取りの窓口にお邪魔するよ」


 そういうとフォリスは買取窓口の前に立つ。


「素材の買い取りですか?」

「そうだね。頼むよ」


 するとトレード用のウィンドウが表示される。

 フォリスはそのまま買い取り窓口を後にしてクエストの窓口へ。


「へ?どこに行くんです?」

 買取窓口の人は困惑している。

「クエストを受けたいんだけど」

 そのままクエストの受付の前へ。

「どのクエストになさいますか?」

 テンプレートな受け答えが返って来る。

「全部で♪」とフォリスは平然と答える。来たばかりのフォリスは実は初期アイテム以外は何も持っていない。

「受ける事が出来るクエストはギルドランクによって範囲が決まっております。初めてのクエストの様ですし、受注可能なのは初級クエストの五つだけになりますが?」

「うん。それでいいよ。それ全部、受けるから」

「え?失敗するとアライメントが下がりギルドランクも上がりにくくなりますよ?」

「うん、いいよ。全部で♪」

「・・・かしこまりました」

 こうしてフォリスはクエストを全て受注した訳だが「とりあえず、全部のクエストの説明をして貰えるかな?」と受けた後に説明を求めた。「えぇ・・・?」受付は困惑しながらも説明を始めた。その間も、常にトレードの窓口は開いたままである。

「あのーお客様?買取はもういいのですか?」

「いや、まだ迷っているんだ。もう少し待ってくれるかな?」


と再度、買取窓口を待たせたままに・・・フォリスはキョウコの元へ向かった。


「何をしてるんですか・・・」

「ギルドで出来る事の確認と、キョウコ以外の受付嬢の挙動の確認。よく出来ているけど、残りの二人は一般的な『感情を持たないAI』みたいだね」

「今の会話だけで確証に変わる意味がわからないんですが・・・?」

「別に確証はなかったんだけどね。今の君の反応を見て確信したよ♪」


 キョウコはしまった、という表情を見せた後にフォリスを睨みつけた。


「本当に、一体何がしたいんですか・・・?」


 キョウコはまだ気付いていなかった。


「ところで今日はとても暑いと思わないかい?あ、痛覚システムは導入されたけど気温の変化まではまだだったね。匂いの再現もまだだからなぁ。案外と気付かないものだが・・・おや、しかしどうやら煙の挙動はとても上手く再現しているみたいだね。延焼反応、燃え広がり方も実にリアルだ。さすがはディアだなぁ」


 何を言っているのか分からなかった。しかし、煙を見て理解した。

 ギルドの建物が燃えている?!


「共有する建物へのプロテクトはどうしても私有地の様には行かなかった様だね。そりゃぁドアも開けないとだし、字を書いたりもする訳だからね。他にもトレードをしたりアイテムの取引をする以上は完璧なプロテクトをかけるのは不可能なのだろう。しかし、燃やせるとは驚いた」


 自分でやって置いて悪びれもせずにフォリスは淡々と喋り続けていた。彼は、ギルドに入る前に悪妖精にギルドに火を付けたら面白そうじゃないか?と唆していたのだ。ギルドの中での奇行は情報収集も含めた時間稼ぎ。ギルドの建物はまだ木造のログハウスの様なものだった。当時は木しか材料がなかったがその時のままであった。建て替えも検討していた為、解体する手間が省けた、とも言えるがそれなりに思い入れのあるみんなで建てた初期の家。その行為は、まごう事なき悪行だった。


「おぉ・・・。アライメントがごっそり下がってるなぁ」


 フォリスのアライメントは急激な勢いで下がっていた。


「フォリス、貴方は何をやっているのか分かってるんですか?!」


 キョウコも流石にこの蛮行は見逃せなかった。


「そろそろここも危ないし、外へ出た方がいいんじゃないか?私も流石に人を巻き込むのは気が引ける」


 キョウコは二人の受付嬢を連れてギルドの外へ飛び出した。


「さて、延焼の感じを見ると、まだ書庫の方は無事そうだ。まぁ、そうなる様に外から窓を覗いて燃やす場所を指定した訳だが。ふむふむ、変にリアリティを出して紙媒体で住民票でも置いていないかと思ったが・・・ないな。キョウコもいるし流石にそこまではザルではないか。得られるものはオブジェクトのアイテムが幾つかと、鉱石が少し。これも飾りだな。まぁないよりいいか、貰っておこう」


 まさに火事場泥棒である。それなりにアイテムはあったがあくまでもギルドの建物を建築した際に飾りとして置いたもの、ギルドっぽくする為のアイテムであり貴重な物は何も置かれていなかった。建物の火はかなり燃え広がっていて現実でも鎮火は難しいレベル。現実なら一酸化炭素中毒で無事ではなかっただろう。チリチリとHPゲージが下がり始めたのでフォリスはそのまま入り口からゆっくりと外へ出た。


 すると、そこには沢山のファス村の人達が集まっていた。

 その中には教会建築へ向かっていたモリスやゴンゾウの姿も。事前にフィアが二人にメッセージを送っていたのだ。

『不審な人物を見かけたけど、多分なにか悪さをしそうだから、一度戻ってきて欲しいの』


 そして予想通り、いや予想以上の事が起きていた。

 モリスが見たのは燃え上がるギルドの建物。そして、そこからゆっくりと出て来るフォリスの姿だった。


・・・


「解体予定だったから手間が省けた訳だが、気持ちのいい光景ではないな。なにが目的なんだ?」


 モリスはフォリスに冷静に問い掛けた。それに対してフォリスは答える。


「事実と言うのは案外にも強固でね。辻褄合わせは大事なのさ♪ときには大義名分にもなる。人は納得のいっていない範囲ではどれ程に悟っていても・・・実力を発揮出来なかったりすると思わないかい?」


 とても曖昧なもの言いだった。わざと確信を避ける様な言葉を選んでいる様にも思えた。


「ギルドを燃やす事で、辻褄が合う事ってなんだ?」


 モリスは理解できなかった。


「断言しよう。君達のようなごっこ遊びでは満足出来ない人は存在する」


 ここでやっと理解した。彼はヘイトを買う事が目的なのだと。

 ラーキ達と同種なのだと。


「つまりは喧嘩を売っている、と言う事でいいのか?」


 怒っては相手の思うツボだ。そう言い聞かせてモリスは冷静に対処する。


「安心してかかってきたまえ。私は・・・否、私達は十分に君達のリアルも含めた生活を脅かす者だ。存分に戦い、あらがいたまえ!」


 なんとも芝居がかった言い回しだった。それを見てフィアが口を開いた。


「そう。貴方はこの世界に・・・」

「おや、先程の女性ではないですか。それ以上は無粋ですよ♪」


とフォリスは静止する。フィアにとってこの光景は許し難い光景だった。

 彼女は現実に置いて、放火による火災によって大切な人人を亡くしていた。

 ただ、この世界に置いては・・・。彼女は少し取り乱したが、案外にも冷静に状況を判断していた。冷静でいられた自分に少し驚いた。そして、安心した。


「私にこの光景を見せたのは偶然なのかしら?もしかして知り合いだったり?」

「いいえ。ただの偶然ですよ?」


 嘘だった。彼は彼女の過去を知っている。彼の頭の中には全てのローダーの情報がインプットされていた。彼女とファスの村で2番目に出会ったのは偶然だった。

 しかし、そこで悪さの手段を変えたのだ。この状況を創り出した。


「まぁ、いいわ。ありがとう」


 彼女がどこまで理解したかは不明だが、恐らくは嘘を見抜いた。だからこそお礼を言ったのだろう。彼女は過去を乗り越えたいと思っていた。そして、この光景をこの世界であれば耐えられた、その事実が・・・嬉しかった。過去に現実では何度もフラッシュバックに悩まされていた。それを・・・克服したかった。


「お礼を言われては困るのですよ。私は敵対を宣言しているのですから」


 フォリスは少し困った表情を見せた。これによりモリスに少し余裕が生まれた。


「つまり、ラーキ達と一緒になって俺達と戦う宣戦布告って事でいいんだよな?」


「そう、その通りだ。こちらも本気でいく。生存競争だ。これはどちらが生き残るか、そういった戦いだ。共存、共栄、多様性?そんなものはある程度、真剣に本気で戦って勝ち取った範囲があってこそ成り立つのだよ。争わない者は淘汰されるだけだ。私達は抗おう。そして諸君も存分に争いたまえ。思考しない怠惰な家畜は喰われるだけだ」


 彼の言葉は妙にクリアーに皆の耳に届いた。


「では、さらばだ!!」



 そう言い残すとフォリスは姿を消した。

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