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悲恋の大空  作者: 暴走機関車ここな丸
第3傷『新緑』

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第13話「また会える日まで」後編

 そこからはなんかもう、トントン拍子で異様なほどにテンポが良かった。




[木之本の妹]

 「お姉ちゃん誰〜?」



[木之本の弟]

 「夏樹お兄ちゃんの彼女〜?」



[朝蔵 大空]

 「彼女じゃないです」




 めっ…………ちゃくちゃいる、子供が。




[木之本 夏樹]

 「う、うち兄弟多いんだよ! んで、俺が1番上の長男なんだ」



[朝蔵 大空]

 「へぇ」



[木之本の弟]

 「ねぇ! お姉ちゃんと夏樹お兄ちゃんが結婚したら、僕達叔父さん叔母さんになっちゃうね!」



[木之本の妹]

 「なっちゃうね!!」




 !?



 子供だからそう言うのも、今の時代だとセクハラって分からないよね……。




[木之本の母]

 「うちのバカ息子を、よろしくお願いします」



[木之本の父]

 「よっしゃ、孫だ〜〜!!!」




 木之本くんのご両親にも何故か気に入られて、いつの間にか付き合ってることにされてしまっていた。



 私も否定すれば良いものを、既にそんなことを言える空気じゃなくなっていた。




[木之本 夏樹]

 「1ヶ月記念おめでとう、そしてありがとう!」



[朝蔵 大空]

 「ありがとう」




 私達は今、夜景が見える高級レストランで食事をしている。




[木之本 夏樹]

 「お、おお、俺と! 結婚して下さい!!」




 そう言って木之本くんは、私に指輪と花束を差し出して来る。




[エキストラA]

 「おお、プロポーズ!」



[エキストラB]

 「あら、素敵〜♡」




 展開、早っ。






 カンカン♪ カンカン♪ カンカン♪






 チャペルの音が鳴り響く、え……私もしかして、《《結婚》》しちゃった??




[朝蔵 大空]

 「……」




 私の体は、純白のドレスに身を包まれている、そして手には豪華な花束。




[知らない人A]

 「きゃ〜、素敵よ〜」



[知らない人B]

 「幸せになれよー!!」



[知らない人C]

 「花嫁さんもっと笑顔ちょうだーい!」




 目の前には、たくさんの私の知らない人達……恐らく、木之本くんの友達か親戚の人達だと思う。




[木之本 夏樹]

 「みんなありがとーー!! 俺達、幸せになりまーーす!!!!」



[朝蔵 大空]

 「幸せになる…………」




 私は、隣にいる木之本くんには聞こえないように、小声でそう呟く。



 ……あれ、でも良いんだっけ?



 心身共に健康な夫と、たくさんの人に祝われる結婚。



 明るく裕福な義実家とご両親、安泰を約束された楽勝人生。



 女にとって、最高に幸せな状態……でも。



 こんな、私だけが幸せになる終わり方で良いんだっけ??




[十七男]

 「ぼく、じゅうしちなん!」



[三十三女]

 「わたし、さんじゅうさんじょ!」




 多い、多い、あまりにも多すぎる。



 この子達、みんな私の子供なの……?



 ──そしてふたりは、子宝に恵まれていつまでも幸せに暮らしましたとさ。



 【悲恋の大空】……おしまい。



 ……。




[朝蔵 大空]

 「って……おかしいでしょ!!」






 パチッ!!






 私は、自身の頬を思い切り叩く。

 





[???]

 『へぇ、考えうる限り至高のハッピーエンドだったのに』






 ……。




[朝蔵 大空]

 「痛っ」




 自分で叩いたはいいけど、ほっぺがジンジンと傷んでつらい。




[朝蔵 大空]

 「わ、私は今まで何して……?」



[アリリオ]

 「おはよう、お姫様!」



[朝蔵 大空]

 「へ? アリリオくん? え、なんで私アリリオくんに膝枕されてるの?!」




 目覚めると私は、アリリオくんの膝の上で寝ていた。




[アリリオ]

 「君、凄いね! やっぱり、君を選んで良かった! 君は、想像以上のポテンシャルの持ち主だよ!」



[朝蔵 大空]

 「な、なんの話ですか?」



[加藤 右宏]

 「茶番は終わりダ」



[アリリオ]

 「終わり?」




 私そっちのけで、ミギヒロとアリリオくんが話している。




[加藤 右宏]

 「アリリオ、見してやレ」



[アリリオ]

 「はーい」



[朝蔵 大空]

 「……?」




 アリリオくんが懐からタブレットような物を取り出し、明るくなった画面を私に見せてくる。




[アリリオ]

 「見えるかな?」




 そこに写し出されていたのは、複数の人間が身を寄せ合いながら、気絶しているように見える映像だった。




[嫉束 界魔]

 『…………』



[不尾丸 論]

 『…………』



[花澤 岬]

 『…………』




 最初は何かの映画のワンシーンかと思った、だけどそこに写っているのは、私がよく知っている人達で。




[朝蔵 大空]

 「これは! 嫉束くん達に、不尾丸くん達……先輩達まで!?」




 これは、生きているの? 死んでいるの?




[アリリオ]

 「大丈夫、眠っているだけさ。 怪我してるわけじゃないから、安心して」



[朝蔵 大空]

 「どう言うこと……この場所はどこ?」




 何故、私の大切な学友達はこんな冷たく暗い、見知らぬ場所で幽閉されているのだろうか。




[加藤 右宏]

 「お前の友達は預かっタ、返しテほしければオレ達の言うことを聞ケ」



[アリリオ]

 「そう言うこと」



[朝蔵 大空]

 「こんなの酷い、一体何が目的なの? 世界征服!?」



[アリリオ]

 「違う違う、ぼくらは世界をより良くしたいだけだよ〜」




 世界をより良く、ですって?




[朝蔵 大空]

 「訳が分からない。 どうして私の友達が、こんな目に遭わないといけないの?」



[アリリオ]

 「残念! どれだけ抗っても君はぼく達に従うしか、無いのさ」



[加藤 右宏]

 「大空、ココへ来て」




 ミギヒロが両手を広げて、私を迎え入れるようなポーズをとる。




[朝蔵 大空]

 「嫌だ! また私を騙して遊んでるんでしょ?! さっきの映像だって、きっと今流行りのAIフェイク動画よ! ママに言いつけてやるんだから!!」



[アリリオ]

 「おやおや……」



[加藤 右宏]

 「オイ! 離れていくナ!!」




 私は反対を向いて、遠くへ走っていく。



 私は今、どこに向おうとしているんだろう?




[朝蔵 大空]

 「え……」




 私の体が、段々と薄く透明になっていく、感覚もやがてぼやけていき、フラッとその場に倒れてしまった。




[朝蔵 大空]

 「どう言うことなの……」



[アリリオ]

 「あのね。 君は今、ほとんど死んでる状態なんだ」



[朝蔵 大空]

 「はっ?」




 気付くとアリリオくんが、道に横になっている私の隣に立っていた。




[朝蔵 大空]

 「体が……元に戻った?」




 体の感覚が戻った私は、とりあえず体を起こす。




[アリリオ]

 「これを見て!」




 見ると……ぽわぽわとした何かが、アリリオくんの手に握られている。



 青く優しく光る、温かみのある炎の玉がそこにあった。




[朝蔵 大空]

 「それは……?」



[アリリオ]

 「これはね、君の魂!」



[朝蔵 大空]

 「えっ!!? 私の!? よく分かんないけど、返してよ!!」




 私は、自分の魂だと言われるものに、無我夢中で手を伸ばす。




[アリリオ]

 「ダメダメダメ、返すわけないじゃん! ねっ、王子!」



[加藤 右宏]

 「そうダ」



[アリリオ]

 「分かったかな? 君の魂がここにある内は、君に自由は無いし、どこにも行けないの!」



[朝蔵 大空]

 「は……」




 私は、恐怖心で泣き出してしまう。




[アリリオ]

 「泣いてるの? でも、最初君が望んだことでもあるよね? 人として生きること全部捨てて、《《あの世》》で例のお兄さんと永遠に眠るつもりだったんでしょ?」




 えっ。




[加藤 右宏]

 「ソノ辺にしとけ、明日また話そう」



[朝蔵 大空]

 「……」



[加藤 右宏]

 「大空、立てるカ?」




 ミギヒロが、私の肩に触れてくる。



 その手を私は、ぱしっと叩いてミギヒロを睨みつける。




[加藤 右宏]

 「!?」



[朝蔵 大空]

 「そうだよ。 こうなったのも全部、ミギヒロが悪い!! 私はもう、生きるのも死ぬのも怖いの! なんで私に、生きる楽しさを教えたの?! 私にはあの人さえいれば、よかったはずなのに!!」



[アリリオ]

 「あ、キレた」



[朝蔵 大空]

 「こんな思いするなら、どうせ失うなら、つまらない人生のままでよかったよ! そしたら、なんの未練も無く死ぬことが出来たのに!!」



[加藤 右宏]

 「大空、泣かなイで……」




 人が悲しくなるのはきっと、幸せを知っているからだと思う。



 

[アリリオ]

 「んーっと……そろそろ、《《お迎え》》が来る頃だね」



[加藤 右宏]

 「……?」




 ──その時。




[悪魔?]

 「見つけましたぞ王子!」



[加藤 右宏]

 「ゲッ……」



[アリリオ]

 「ニヤリ」




 月下に複数の黒影が並ぶ、それらは明らかにこの世の者達ではなかった。




[加藤 右宏]

 「クソっ! アリリオ!! 大空を連れて逃げるゾ!!」



[アリリオ]

 「やなこった!」




 アリリオは、ミギヒロの命令に背く。




[加藤 右宏]

 「な……お前まさカ」



[悪魔]

 「さぁ、我々と共に魔界へ戻りましょう!!」



[加藤 右宏]

 「は、離せ!!」




 ミギヒロは悪魔達に捕えられ、じたばたする。




[加藤 右宏]

 「裏切ったな、アリリオ!」



[アリリオ]

 「ありがとう王子、これでぼくらの野望が叶えられそうだよ」



[悪魔]

 「開け! 魔界への扉よ!!」




 紫色のイナズマが飛び散るブラックホールに、ミギヒロが吸い込まれていく。




[加藤 右宏]

 「大空ー!!」




 ミギヒロが、私の名前を叫んで手を伸ばす。




[朝蔵 大空]

 「ミギヒロ!?」




 数秒後にブラックホールは消え、静かな夜道へとかえる。




[朝蔵 大空]

 「……ミギヒロ?」



[アリリオ]

 「さぁ! 邪魔者はみーんないなくなったね!」



[朝蔵 大空]

 「!?」



[アリリオ]

 「大体さぁ、王子も奥手過ぎるんだよ〜。 さっさと、食べちゃえばいいのにっ」



[朝蔵 大空]

 「な、なんの話?!」




 食べる……?




[アリリオ]

 「ほんじゃ、いただきまーす……ぱくっ」




 先ほどの青い火の玉、つまりは私の魂が躊躇い無くアリリオくんの口の中へ……。




[朝蔵 大空]

 「あーーー!!?」



[アリリオ]

 「モグモグ……」




 た、た、食べられちゃった、私の魂……。




[朝蔵 大空]

 「……」



[アリリオ]

 「えーっと……うん、完全に一体化するには一晩寝かせる必要があるんだよね〜。 てなわけで、ほいっ!」




 そう言ってアリリオくんは、私を抱きかかえたまま空高く飛んで行く。




[朝蔵 大空]

 「ちょっと!」



[アリリオ]

 「ぼくは紳士なので、姫をお家まで送っていきますっ!」




 あっという間に私は家まで送り届けられ、窓から私の部屋に侵入され、ベッドへと寝かされる。




[アリリオ]

 「はいっ、高速パジャマ早着替え〜♪ シュバババ!」



[朝蔵 大空]

 「わわわ!」




 目にも止まらぬ速さで、パジャマに着替えさせられた!!




[アリリオ]

 「ふふ、今夜はお疲れ様……ゆっくりおやすみ、ぼくのお姫様」




 額にキスを落とされる、そして私の意識もそこで落ちる……。



 ……。




[???]

 『ソ……様』




 ……ん?




[???]

 『ソラ様……』




 誰かが私の名前を呼んでいる。




[如月 凛]

 「おやすみのところ、すみません……」



[朝蔵 大空]

 「リンさん!?」



[如月 凛]

 「シー……静かにっ」



[朝蔵 大空]

 「はっ、ごめんなさい?」




 目を開けると、目の前にリンさんが立っていた。




[如月 凛]

 「あの悪魔は、少し前に部屋を出て西の方角へと飛んで行きました」



[朝蔵 大空]

 「リンさん大変なんです、アリリオくんに私の魂? を、食べられて……」



[如月 凛]

 「まったく破廉恥です」



[朝蔵 大空]

 「何が!?」




 私はされたことを、そのまま説明したまでで……。




[如月 凛]

 「ソラ様、私は貴女にあーしろだとか、こーしなさいとは言えません。 だけど、これだけは預けておきたかったのです」



[朝蔵 大空]

 「これは……?」




 リンさんから渡されたものは、水晶のような石が付いたチャームだった。




[如月 凛]

 「御守りのようなものです、気休めにしかならないと思いますが……」



[朝蔵 大空]

 「ありがとうございます……あの、ミギヒロ達は……アリリオくんは、何を企んでいると思いますか?」



[如月 凛]

 「私にも分からないんです。 アリリオ様とミギヒロ様の目的は、一緒ではなかった……今はそれしか」



[朝蔵 大空]

 「と、友達が誘拐されたんです! 助けて下さい!!」



[如月 凛]

 「ソラ様、はっきり申し上げます。 彼らを救うことが出来るのは、ソラ様……貴女にしか出来ません!」

 



 私にしか、出来ない?




[朝蔵 大空]

 「そんな……助けてくれないんですか?」



[如月 凛]

 「すみません。 私にこれ以上の干渉は許されません、私は天使なので」



[朝蔵 大空]

 「私はどうすれば……」



[如月 凛]

 「あの悪魔が戻って来る前に、私は行きます……では」



 リンさんは私に背中を向け、白い光の中へと消えて行った。



 ……。




[アリリオ]

 「やぁ、マイプリンセス! よく眠れたかな〜?」



[朝蔵 大空]

 「……」




 朝が来た。




[アリリオ]

 「さぁ今日からまた、朝蔵大空のつまらなくない人生の、新たな1ページが始まるよ〜!」



[朝蔵 大空]

 「ねぇ、アリリオくん」



[アリリオ]

 「なになに〜、どうしたの姫〜?」




 私は、今最大に気になっていることがあった。




[朝蔵 大空]

 「卯月くんはどこ?」



[アリリオ]

 「……」




 私がそう尋ねると、陽気そうだったアリリオくんの表情が、一変して不機嫌そうになった。




[アリリオ]

 「はぁ、まだあんな奴のことなんて気にしてるんだ?」



[朝蔵 大空]

 「卯月くんのことも、アリリオくんが誘拐したの?」



[アリリオ]

 「あーあ健気なこった、あんなことされたって言うのに」




 ……あんなこと?




[アリリオ]

 「あ、そっかそっか。 痛みも感じないほどにスパッと首切られちゃったもんね〜」



[朝蔵 大空]

 「首? ……!!?」




 鏡を見ると、私の首に確かに横一線傷跡のようなものが刻まれていた。



 何これ……?




[朝蔵 大空]

 「卯月くん……」




 今でも思い出せる、彼との大切な日々。






 ──『朝蔵さん』






 優しい声で私を呼んでくれる彼、貴方はこんな私に無償の愛を与えてくれた。



 だけどその愛を一度、自ら手放さそうした。



 これは、そんな私への罰だ。



 ぽたぽたと私の頬から、涙が流れる。




[朝蔵 大空]

 「みんなに、会いたいよ……」




 貴方のいない世界は、本当に退屈だ。






 「また会える日まで」おわり……。



第3傷「新緑」 〜完〜



 以上、13話(26部分)を()ちまして『悲恋の大空』の3章を終了させて頂きます。



 最後に、ここまで読んで下さった優しい読者様にお願いがあります。



 この小説に作品フォロー、評価☆☆☆、応援♡、コメントなどをしてもらえると作者は大変喜び、今後の執筆の励みにもなります。



 頑張りますのでどうかこれからも、『悲恋の大空』をよろしくお願い致します!

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