実はすごい人だったせんべい屋さん。
伏線回収、できたでしょうか。
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コピペとジュは、神殿の待合室にいた。
もちろん、神官登録の為である。
その為に、ハムズ王都へ来たはずが、何かずいぶん回り道したような気がする。
ジュが、小声で聞いた。
「で、どういうことだったのよ? いったい」
「どういう事、というのは、ジュさんが裸エプロンのお姉さんとお話ししていた間のことですか?」
「嫌味、言わないで、教えてください」
さらに声が小さくなる。
そうですね……
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ドワーフ二人とエルフは、あの騒ぎの後、駆け付けた城の騎士たちに、縄で縛られて連れていかれた。 いろいろ白状させられたのち、神殿の牢屋あずかりになった。
結果として、死人が出なかった為、ドワーフは鉱山で労働。エルフは、追放処分となるだろうとのこと。
ワイバーンは、一時的に城あずかりになっているが、その後の扱いは分からない。馬番たちの最大の悩みの種になっているようだ。
ドワーフたちの自供によると、最初はキノコ栽培の人手に、ハムスター獣人をさらったのだそうだ。
なんといっても、ドワーフ坑道はここにはなく、小さくとも地下道をつくるには、人手がいった。
そして、穴掘りに優れ、小柄な体格。エルフのように飲食不要の、獣人には珍しい特性。ヒマワリの種をおやつに与えておけば大人しい。単純。
ハムスター獣人は、彼らにとって都合の良い存在だった。
連れてくるときには暴れても、慣れてしまえば、当たり前のように、穴を掘り、キノコの世話をし始めた。
魔素の多いワイバーンのフン。
ドワーフ坑道とは違う、回復の泉の加護が強い周囲の環境。
ハム獣人がやっと通れる狭い通路。
逃げ道の無い、魔素は『きのこ』の魔物を生んだ。
幸いだったのは、『きのこ』の胞子がハム獣人には効かず、そして、『きのこ』は世話をしてくれるハム獣人を襲わなかったことだ。
ハム獣人も、同じような背丈、同じように短い手足を持つ『きのこ』を、警戒しなかった。
ワイバーンの生命活動を維持するのに、一定以上の魔素が必要だが、魔素の少ない普通の獣だと、一日一匹以上必要だ。
これを、魔物で補おうとすると、十日に一・二匹ほどで事足りる。
この『きのこ魔物』は、ドワーフ達にとって、まさに「棚から牡丹餅」。
ワイバーンの食料問題は、解決である。魔物の管理さえちゃんとできれば。
見張りの意味でも、世話の意味でも、ハム獣人の数を増やすことに。
ハム獣人には、そんなドワーフの意図は伝わらない。せっせと、キノコの世話をする。
せっせと世話をする。
きのこ、増える。
きのこだらけになる。
きのこ、あばれる。
やばくない?
で、あの状況が作り出されたというわけだ。
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ミケとダは、ハムズ市民公園に、きていた。
向かう先はまっすぐ、『ヒマワリの種せんべい屋』さん。
せんべい屋さんは、集まってくるハム獣人を、ヨシヨシとなでている。
「先日は世話になった」
ダが言った。
「いえいえ、どういたしまして」
せんべい屋さんが、笑いながら振り返っていった。
今まで、景色の一部としてしか見たことがなかった。初めて、顔を見たのかもしれない。
白い短髪、青緑の目。コピペと同じ色。
「あんたは、何者だ?」
ミケが聞く。
「昔からここにいて、この場所を守っている者……でしょうか」
ハム獣人を抱き上げる。ハム獣人は、慣れていて、大人しくしている。
「贖罪とでもいいましょうか。信心から、していることです。
いつか、神がお戻りになったときに、いつでも、ここが癒される場所であるように、守っているつもりなのですよ?」
「神がハムスター獣人大好きっていう、言い伝えか…」
「いまでも、かなり、好きそうですよ?」
「だな」
「あほだからな」
三人は、笑った。
ハムスター獣人は、きょとんとした顔で、それを見ている。
「神官登録、終わった頃かな」
「戻らないと」
「……裏情報、聞きますか?」
「なんだ」
「スラム街の屋根を吹っ飛ばしたせいで、神官登録できない可能性、あるみたいですよ?」
「ばかな」
「コピペだぞ?」
「巡礼を、やり直しになるみたいです」
「おいおい」
「本神殿が、コピペを追い出すとか……どんな、皮肉だよ」
「どうします?」
「どうもこうもない」
「どこへだってついていくさ」
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後日。
せんべい屋さんと、たくさんのハムスター獣人に見送られ、旅立つ、コピペさん。
お供には、
いつものミケさん・ダさん。
なぜなのか、ジュさん。
そして、追放されたエルフと、厄介払いされたワイバーンが、いたそうな。
書いている最中、私生活で色々、ありまして。
エタりたくない~。こんな深海の底の岩陰小説に、わざわざ来てくれた人を裏切りたくない~。
と、根性だしました。出してもこんなもんなんですけど、どうでしたでしょうか?
読んでいただいて、心から感謝です。m(__)m