06.会長
生徒会室前。
俺は足を止める。
学園に入学してから一度も縁のなかった場所。
「入って」
ノックをする前に、中から声がした。
ゆっくりと扉を開けると、そこには神代春夜がテーブルを囲む椅子に座っている。そしてもう一人、生徒会長こと東京皐月が窓際に立っていた。
「……幸人」
反対側の椅子を指さす。座れということだろう。
俺はそれに従い腰を下ろす。
「君が春夜を助けたらしいな」
長い、赤みのかかった髪をくるりと。
視線を事件のあった外から俺へ。
俺の顔を覗き込むように近づく。瞳の奥を確かめるような視線。それは観察というより威圧。そんな距離まで──てか近い。
「春夜から全て聞いた。君は神力の流れが見えるとか」
息が当たりそうな距離で会話は続く。
「……はい」
「単刀直入に言うとだ、その見えるという神力を──」
「会長、違う。その言い方は………幸人のは神力じゃない」
神代が言葉を遮る。
そんなことを気にも留めず俺を見まわしながら、会長は続ける。
「神力かどうかはどうでもいい。その力が必要だ」
俺の首元に指をあてる。爪が皮膚をなぞる。
「力を貸せ、これは命令だ」
そして東京皐月という生徒会長は小さく続ける。
耳元で、
「いいか、君は今日から──」
「生徒会のもの、詰まる所は──」
「下僕だ」
「──っ」
「それ以外、『認めない』」
「……認めさせない」
言葉がでない。
否定も肯定も。
ただ、彼女の底知れない威圧感に。
気づけば俺の首は、ゆっくりと縦に動いていた。
「いい子」
こうして俺は、この日から生徒会の下僕になった。
……少なくとも、会長はそう決めた。




