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オニワさんとかくれんぼ  作者: aqri
十月二十日
35/46

8 あの日のかくれんぼ

 みっけ、と言葉をかけるたびに影次々と倒れていく。それは死んでしまった拓真たちを見つけていたからだ。見つかったから死んだのではない。影は次々とみっけと言って六人分の影が倒れる。残ったのは探し回っている影一人。

 自分の方は向いていない。影にとって見つけるべき対象はあと一人だけだ。影はキョロキョロとあたりを見渡すが最後の一人が見つからないらしくウロウロと歩き始める。


「もういいかい」

「まあだだよ」


 はっきりと返事が聞こえた。まだ見つかっていない。まだかくれんぼ続いている。


「もういいかい」

「まあだだよ」


 すぐ近くで声が聞こえた。どこかに隠れている、早く見つけないと。自分の方が先に、早く、早く……。




「結局最後に残るのはヒヨかあ、相変わらず隠れるのが上手いな」


 祐介の言葉に琴音はうんうんとうなずいた。かけっこをすると拓真か翔太が一番、だるまさんが転んだはバランス感覚が良いめいが一番上手い。かくれんぼは飛び抜けて日和がうまかった。いつも最後まで見つからない。一度日和だけが隠れて他の全員で鬼をやった時もある。その時も結局見つからずみんなで降参したのだ。


「ヒヨー、もうすぐ帰る時間だ。出てきてくれよ」


 今日の鬼は祐介だった。琴音は先に見つかり他のみんなは順番に見つかっていったが案の定日和だけが見つからない。すると皆が集まっている公園のジャングルジムのすぐ後ろ、草の中から日和がガバっと起き上がった。


「え、そんなところにいた? 探したのに」

「探してないよ。ちょっと草蹴飛ばしてパッと見たら行っちゃったじゃん。私が隠れるの上手って言うより、みんなが探すの雑なだけじゃない」


 ふふんと得意げに笑う日和に琴音とめいはクスクスと笑っていたが、男子達には火をつけたらしい。


「そこまで言うならもう一回だ、ヒヨ以外が鬼でラスト一回」


 鬼だった祐介がにやりと笑ってそう宣言した。辺りはもう薄暗くなってきている。本当ならそろそろ帰る時間だが、祐介はもちろん拓真、翔太、晴斗全員帰る気がなくなったようだ。歩はしょうがないなと言いながらも帰る気は無いようで最後にもう一回、という雰囲気になる。めいと琴音は顔を見合わせ、まあこれが最後の一回ならと輪に加わった。こうなったら祐介たちは止まらないし、みんなが遊ぶならやはり自分たちも仲間に入りたい。


「いいよ、私もとっておきの場所に隠れるから。絶対に見つからない自信ある」

「そんな場所があるんだ」


 琴音が言うと日和は大きくブイサインをした。


「コッコにも話したことないけど、すごい場所があるんだ。このかくれんぼ終わったら見せてあげるね」

「いいの? 教えちゃったらもうそこ使えないよ」

「いいのいいの、秘密基地にでもしようよ。隠れる時は狭いんだけどね、隠れちゃうと広いんだよ」


 その言葉に琴音は首を傾げた。祐介たちも不思議そうな顔をしている。


「なぞなぞみたい」

「まあ似たようなもんかなあ。見るとびっくりするよ、え、そこ? って。これ以上言うとヒントになっちゃうから言わないけど」


 秘密基地という言葉に何だか胸が高鳴る。今日はもう遅いから明日教えてもらおう、と楽しみが増えたことが嬉しい。


「時間ないからやるぞ、鬼はどうする」


 おには、どうする。


 おには。おにわ。……オニワ。


「とりあえずじゃんけんしよう」

「じゃーんけーん」


「じゃぁ、✕✕が鬼。百数えたら探して」

「うん」

「よし、みんなかくれろ」

「夜になっちゃうから暗くなったら終わりにしようね」


 暗くなったら、夜になったら終わり。

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