表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔と皇子と殺意と私  作者: 夜府花使
49/81

49 じゃあ毒殺されるのは誰なんです?

「いや、誤解すんなよ?」

「誤解?」


「距離が離れてる時はさすがにぜんぜん聴こえねぇし。だけど茶会会場内ならどんだけ離れてても40~50リメトルだろ。だからなんとか聞こえるってだけだ。それに神力使用中だって周囲にバレねぇよう出力めちゃくそ抑えてるから聞き取りづらいし、ほんと、言うほど丸聞こえじゃねぇんだよ」


 なにやら力説してらっしゃるけど盗聴は盗聴ですよネー。


「いやでも人として」

「俺とお前の仲だろ。な?」


 な?―――か。

 私は殿下の「な?」に弱い気がする。


 そもそも弱くない部分とか無いんだけどね、

 惚れた弱みってやつ?


 以前は殿下に対して多少なりと幻滅する部分を見たら殺意が減ったものだけど、今では小指の先ほども減らない辺り、私の色ボケもレベル上がりまくってるなと思うわ。


「―――で、ベルザ様と私の会話を聴いてらしたって事は」

「ああ」

「ベルザ様の見た夢について?」

「聞き捨てならねぇ話してんなと思って、それで直接あの女と話してみたくなったんだ」


 なーんだ、そういう事だったのかぁぁぁ。


 今目の前に殿下がいなかったら、私はエヘヘヘーと笑顔になって、らんらんらららんと軽い足取りでスキップしまくったこと間違いない。


 殺意?

 そんな物騒なモン、知りませーん。


 そっかあ、殿下は一人の女性としてベルザ様が気になったって事ではないわけね。て言うかベルザ様の夢が気になったって事は、それってすなわち私の為って事では?


(ふへへっ)


 かなりホッとしてしまったわ。


 あれ?


 でも。


「殿下。ベルザ様にも"盗聴した"って打ち明けたんですか?」

「ンな事ゲロったら気味悪がられるだろうが。"目くらまし"かけたわ」


 紺碧宮にベルザ様を招き入れた時、殿下は世間の目だけではなく、ベルザ様自身にもソレを適用したと言う。

 だから今のベルザ様の脳内では、お茶会で私相手に夢の話をしていた時、殿下は遠くではなく近くにいて、その話がたまさか耳に入り、興味を持ってベルザ様を誘い出した―――そういう認識になっているらしい。殿下、日に日に人間離れしていくな。


「ベルザ嬢だけじゃねぇよ。今日の茶会会場にいた奴等全てがそういう認識になっている筈だ」

「私はなってませんが」

「お前には俺の神紋(コレ)があるだろ」


 そう言って殿下は私の耳朶を摘まむ。


 お茶会会場から紺碧宮、紺碧宮から表門までベルザ様を瞬間移動して差し上げた事についての説明も受けた。


「そりゃ面倒臭かったからだよ。たいして知らねぇ女と長々長距離歩くのは気まずいだろうが」


 そして、表門からうちの城までは、ベルザ様が仰っていたとおり、もともとはカルケイビタンさんに送らせる予定だったわけで。


「いくらカルケイビタンが移動魔術得意ったって、エナゴーテイク公爵家は初訪問先だろ? 気持ちが動揺している状態で、しかも初対面の令嬢を伴った上で向かわせて、万が一とんでもねぇ誤作動やらかしたら怖ぇだろ。だからって馬車は前に面倒な事があったしな。考えるのもウザくなって手っ取り早く俺が送ろうとしたんだが―――この俺にした所でエナゴーテイク公爵家には行った事ねぇと来た」


 それで中継地点として先ずはと我家に来たのだと言う。


「中継っつぅか、ここまで連れてくれば後はお前んトコがどうにかしてくれるだろうと」


「ベルザ様担当の公人魔術師はどうしてたんです?」

「ベルザ嬢を誘った時点で俺が連絡入れて別の仕事に就かせてた」


「なるほど…」


「今思えばカルケイビタンを使わずとも、その担当の公人魔術師を待機させとくべきだったんだがな」


 ハァと殿下は溜息を吐く。


「ライラ。そんな事よりベルザ嬢の夢の件だ」

「あ、はい。恐らくベルザ様は私同様に過去にコーデリア様のクッソしょうもない駄物語【ライラよ、震えて眠れ】を聞かされたのではないかと思うんですが」


 当然同意が得られると思っていたのに、


「どうだろうな」


 などと殿下は仰る。


「え」

「ベルザ嬢の夢はお前の単なる悪夢と違って本物の予知夢かもしんねぇ」

「……え? はい? はぁ?」


 えーと?


 私は思い切り目を顰める。

 すると殿下は説明をしてくれた。


「お前とベルザ嬢の会話を盗聴した時はな。俺だってお前と同様の事を考えたよ」


 殿下はコーデリア様付きの侍女か使用人があのどうしようもない駄物語を幼い頃のベルザ様に漏らしたのに違いないと―――まるっきり私と同じ推理をなさったそうだ。


「非常識の塊であるコーデリアがド珍しくもなけなしの理性を働かせて"門外不出"印を押してた駄物語だぞ? 内容は語る価値もないクソ話にしろ、実在の個人名満載の内容を、しかも名前も変えずにまんま外部に漏らすなんてあっちゃなんねぇだろ。

 にもかかわらず外部に漏らしたってんならな。その侍女なり使用人なりは処分しなくちゃなんねぇだろ。

 その辺の探りを入れなきゃなんねぇと思ったからこそ、俺はベルザ嬢を連れ出したんだよ。で、件の予知夢とやらの内容の詳細を話させたわけだ。―――ところが、だ」


 殿下は眉間を歪めて私を見る。


「ベルザ嬢の夢の詳細はな、俺達が知ってるあの駄物語とは違ってたんだよ」

「と、言いますと」


 殿下はますます眉間に皺を寄せる。


「概要だけなら確かにあの駄物語に似ていた。概要だけなら同じ物語だと勘違いしてもおかしくなかったな」


「細部が違っていたと?」


 殿下は肯く。


「ベルザ嬢の夢の中のライラはプラチナブロンドに水色の瞳の男に恋をしていたが、男は別の女と結ばれちまい、ライラは悲しむ。

 そこまではコーデリアの駄物語と同じだよ。

 だがそれ以降の展開にでっか過ぎる違いがあったんだよ。

 駄物語の中のライラは泣き声の煩いただの馬鹿娘だったが、ベルザ嬢の夢の中のライラはな」


「はい」


「プラチナブロンドに水色の瞳の男―――おそらくはレジレンス―――の気を引こうとして、皇宮の茶会出席を辞退してたんだとよ」


「え、それって」


 無意識に口をカパッと開けてしまった。


「コーデリアの駄物語のライラは皇宮の茶会の欠席なんかしてなかったよな。むしろ率先して茶会に通い詰めていた」


「ですよ、ね」


 一度しか読んでない上に斜め読みだったけど、確かにそういう展開だった筈。


「だがベルザ嬢の夢の中のライラは現実のライラ(おまえ)の行動に則している」


「あらまぁ…」


 呆然としてしまった。


「ベルザ嬢は幼い頃にその夢を見たものの、ずっとただの夢だと思っていたんだとよ。だけどお前が茶会を欠席し始めた5年前、ベルザ嬢は夢の通りの事が起った事に吃驚して、あれは予知夢だったのだと思ったんだと。

 5年前、お前に茶会欠席理由を決めつけて、あやうく嫌われそうになったとか言ってたがホントか?」


 私はコクリと肯く。


「レジレンス殿下の気を引く為にお茶会を欠席しているんだろうと言われました。夢の話が根拠とは知りませんでしたけど…」


 そう言ってから、


「……あはは」


 私は何故だか笑ってしまった。


 ベルザ様が私をレジレンス殿下狙いだと不自然に決めつけてきた理由。そういう事だったのか。そうとは知らず、私はベルザ様にものすごくドン引きしちゃったのだっけ。


 私は殿下に5年前に初めてエナゴーテイク公爵家へ招かれた際の事をなるべく詳細に説明する。


「なるほどな」


 話を聞き終えた殿下は片眉を上げる。


「偶然なんだかどうかわかんねぇが、とりあえずベルザ嬢は少なくともライラが茶会を辞退する事は夢で当てたわけだ」


「ちょっとゾワッと来ました」


「ちなみにな―――」

「はあ」

「ベルザ嬢の夢の中でもやっぱり起きてんだよ。毒殺事件が」


 と言う事は。


「やはり私がアイリビィ様を?」

「いいや、アイリビィは無関係だ」


 私は小首を傾げる。


「じゃあ毒殺されるのは誰なんです?」


 ひょっとしてベルザ様?

 それともミルクレア様?


 それとも他のどなたか?


 考えていて、ハッとする。


(ま、まさかギーズゴオル殿下を毒殺するとか!?)


 私が殺したのがギーズゴオル殿下なら、それは私にとって"共感出来(納得出来)るライラ"だ。コーデリア様の駄物語のライラに共感するのは無理だったけど、私が殺すのがギーズゴオル殿下なら、それは。


 ああでも、違う。


 ベルザ様の夢の中で私が恋している相手はレジレンス殿下なのよね? だったら私が殺すべき相手はレジレンス殿下って事になるのでは? え、まさか私、レジレンス殿下を殺すの? なんでぇ? ポッカーンもいいトコよ。


 私が恋した相手―――という根本的な部分に齟齬があるから最早意味が判らない。


 混乱していたら、


「お前だ」


 殿下が仰る。


「へ?」


「ベルザ嬢の夢の中で毒殺されたのはな。―――ライラ・サーレンシス、お前なんだとよ」


 私は目が点になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ