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43話 仲間

 目の前で新しい街が造り上げられていく。


 魔法による街の新設。

 無から有を生み出す奇跡の力。

 見るのは二度目だが、やはり圧巻だ。


 臣民や下民が行えば数ヶ月、数年がかりの大規模事業。

 それを一瞬で実現したのは俺よりちょっと年上の女性。


「できました!」


 ブロンコ伯爵公女、ユキ・ブロンコ

 この優しい笑顔が似合う人が、たった一人でなし得てしまった。


 ただその笑顔はいつもより緊張気味。

 理由はわかっている。


「へえ。見事なものじゃないか」


 偉そうに批評しているこの男。

 貴族の頂点に立つ四大公家が一つ、ガイア大公家。

 その若き当主、ノヴァ・ガイアが見ているからだ。


「え?私、見事ですかね?」


 さすがユキ。常にポジティブ。

 一言褒められただけで緊張などどこ吹く風。

 顔が思いっきり緩んでいる。


「ああ。土の感じが特にいい。正直、この点で僕に匹敵する使い手がいるとは思わなかったよ」

「そうですか?そうですかね?私の実家って農業が盛んで、土にうるさい人が多いんですよー。だから私も土にこだわりもってたんですけど、そんなすごいですかね?ガイア大公閣下に匹敵なんて、そんなー!もう超超超すごいってことじゃないですかー!世界最高じゃないですかー!そんな褒められたら、照れちゃいますよー!」


 めちゃくちゃ嬉しそうだ。


「実力という裏付けがあって自信を持つ人間、僕は好きだよ。いい部下をもってるじゃないか。なあ、ソラ?」


 まだ嬉しそうに話をしているユキをよそに、ノヴァは俺に笑いかけてくる。

 だから俺も笑い返す。


「ああ。ユキも他のみんなも、俺の最高の仲間達だよ」


 最高で大事な、仲間達だ。



 ---



 ガイア大公領

 ここでユキの魔法で街を作った。


 目的は二つ。


 一つ目はもちろん下民の街を新たにつくること。

 俺だけでなくノヴァもつくり、そしてもちろん成功させる。

 これにより下民の街の魅力をアピールし、貴族たちが真似したがるように仕向けるのだ。


 二つ目はユキの実力確認。

 ノヴァだけが街を造っていては負担が集中する。 

 だが派閥の影響力に関わる大事な任務を軽々に人に任せることはできない。

 パラディスをつくったユキの実力をノヴァ自身が目の前で確認することにこだわっていた。


 結果は二つとも上々。

 新しい街はでき、ノヴァはユキの力を認めた。


「さっさと現ブロンコ伯を引きずり下ろして、彼女に爵位を継がせた方がいいんじゃない?」


 想定以上に認めてびっくりだ。

 ユキは「そんなご冗談ばっかりー」なんて笑ってるが、ノヴァは本気だと思う。

 たぶん。


「だけどまあ、これでまた一つ下民の街ができるな」


 下民の街

 下民が暮らせる街。


 パラディスでは色々あったが、ここでは大丈夫。

 だってノヴァは俺と違い、ちゃんと下準備をしている。


 まずここに下民の街をつくることを領内に周知した。

 これで街が襲われる心配はなくなった。

 大公直々につくる街を襲うなど、ただの自殺行為なのだから。


 もちろん臣民の不満の対策も行っている。


 パラディスでは周辺の街から市場を奪ってしまった。

 それとは逆にこの街の産業は、農業でも工業でも周辺の臣民の街の産物とは種類を変えるように計画している。

 むしろ足りないものを補うようにと。

 これでこの街は、臣民にとってむしろ助かる存在となるわけだ。


 ノヴァはちゃんと環境を整えている。

 下民の街が臣民に受け入れられる環境を。


 目的は俺とは全く違う。

 俺は下民自身のために街を作った。

 だがノヴァが街を作るのは、数の多い下民を利用するためだ。


 見ている景色はぜんぜん違う。

 だが目的が違おうと結果は同じだ。

 ならば過程にこだわるべきではないのだろう。


 しかもノヴァのほうがよっぽどうまくやっている。

 俺は自分の願望、思い込みだけで突っ走ってしまった。


 だがノヴァは違う。

 ちゃんと準備をし、環境を整えて街を作ろうとしている。

 きっとこの街は、いい街になるのだろう。


 俺ができなかったことを、ちゃんとやっている。

 俺は本当に、まだまだだ。


 そんな俺が曲がりなりにも街を作れたのは、力強い仲間がいたから。

 街を作ってくれたユキ

 そして


「君のところのセリス、だったっけ?彼女は行政官として有能だね。これからできる下民の街はどんどん増えていく。それらの管理を、彼女にやらせよう」


 実務を一手に引き受けてくれた、セリス。

 彼女の実績を見たノヴァは面会を望み、少し話をしただけでセリスを気に入ったようだ。


「ユキにセリス、そしてビスケッタやリゼルもいると。しかもエメラルドの力も借りられるんだっけ?君のところは人材の宝庫だね」


 本当に、よく俺の周りにそんな優秀な人材が集まってくれたものだ。

 だがそれもみんなサラのおかげ。


 エメラルドはサラを迎えに来て、その流れで俺と友だちになってくれた。

 ビスケッタさんは俺が皇帝の兄だから仕えてくれている。

 ユキとリゼルは、そのビスケッタさんが連れてきてれくれた。

 セリスだって元々皇帝直轄領だった都市の代官の首席秘書官だ。優秀でないはずがない。


 俺の周りはみんなサラのおかげ。

 本当に、心から、サラに感謝をしよう。


 俺にできるのはこのサラへの感謝。

 そしてサラの力に驕ることなく、謙虚に生きていくことだけだ。


「ああ。セリスに頼んでおくよ」


 命じるのではない。

 頼むのだ。


 お願いして、力を借りて、そして一緒に頑張っていこう。

 俺にできることなんて一緒にいることぐらいしかないが、それでも任せきりにしたりはしない。


 それぐらいしか、俺にはできないから。


「みんなの力を借りて、頑張っていこう」


 できることから、ちゃんとやるんだ。



ユキは褒め慣れてないため、褒められるとすっごく喜びます。


というわけで第四章開幕です。

少々スローペースになりますが、楽しんでいただけるよう頑張ってまいります。

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― 新着の感想 ―
[一言]  ある程度分かってはいた事ですが、ノヴァは内政面でも 優れていますね。  そしてそんな優れた男もまた、ソラの元に集った。  単なる偶然でしょうか。それとも……?
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