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28話 同志

 下民を助ける


 言葉にすると一言ですんでしまう。

 実に単純なことだ。


 だが「どう助けるか?」を考え始めると、一気に複雑になる。


 すぐに思い浮かぶのは、下民を臣民に引き上げること。

 これは今の俺には簡単だ。

 俺の領地の下民なら、今すぐにでも全員臣民にすることだってできるだろう。

 サラに頼めば、全下民を臣民にすることだってできるかもしれない。


 だが、それでは意味がない。

 ついさっきまでの自分を顧みればよくわかる。

 立場だけ変わろうと、俺たち下民には下民根性が染み付いている。


 臣民になったって、何も変わらない。

 卑屈なまま、周りの顔色をうかがいながら、行動する。

 今朝までの俺と同じように。


 だから、下民自身が変わらなければならない。


 自分自身が変わらなければ、

 変わりたいと思わなければ、

 どんなに環境を変えようと意味がない。


 俺自身がそうだったように

 他のみんなも、まずは内面を変えないといけない。


 俺がやるべきことはその手助け。


 みんなが変わりたいと、

 自分を変えたいと強く思うようにと、


 導くのが俺の役目なんだ。



 ---



「ソラ様、聞いていらっしゃいますか?」

「いえ。すいません…。別のことを考えていました」

「正直なのはよろしいことです。ですが、今ソラ様は叱られているのですよ?反省していただかないと困ります」


 そう、俺は今叱られている。

 エメラルドと屋敷を抜け出したことは当然のようにビスケッタさんにバレており、帰宅と同時に捕まって説教をされている。


 だが俺の頭の中は下民を助けることでいっぱいだ。

 そのせいでビスケッタさんのお説教が全然頭に入ってこなかった。


「何があったかはエメラルドからすでに聞いております。ソラ様は一歩間違えればお怪我をされていたかもしれないのですよ?お出かけの際はきちんと護衛を連れて行っていただきますようお願いいたします」


 たしかに危なかった。

 臣民の一般人だから倒せたが、訓練された者達だったらああも簡単にはいかなかっただろう。

 より一層トレーニングに励まねばなるまい。


「私やリゼルやユキ、このうち最低二名は護衛につれていくことを今後をお忘れなきようお願いいたします。特に私とリゼルはそれもあって選ばれたのですから」


 実はそういうことらしい。


 ビスケッタさんとリゼルは戦闘ではかなり強い部類の魔法使い。

 それで魔法の使えない俺の護衛ということも兼ねて選ばれたのだ。


 特にビスケッタさんは接近戦なら全魔法使いでも最強クラス。

 とんでもない人なのだ。

 ぜひもっとトレーニングに付き合っていただきたい。


 ちなみにユキさんも、ああ見えてけっこう強いらしい。


 魔法使いは強い。

 下民や臣民がどうあがいても勝てないぐらい、強い。


 だから下民にはまず臣民達ぐらいの力や自信を身につけてもらうことを目標にしよう。

 魔法使いを目標にすると、さすがに遠すぎる。


「ソラ様、また話を聞いていませんね?」


 ビスケッタさんの冷たい声が耳に入ってきた。


 いかんいかん。

 ビスケッタさんは俺のために怒ってくれているのだ。

 無視するのは失礼だ。


「すいません…」

「いえ、わかっております。下民の地位向上について考えていられたのですね?」

「え?そうですけど、なんで知ってるんですか?」


 俺はまだ何も言っていないのに。

 エメラルドにも伝えてないのに。


「エメラルドから何があったか聞いたとお伝えしたでしょう?その中でソラ様がご自分を下民だと宣言して無礼な臣民を打ちのめし、二名の下民を助けた話も当然聞き及んでおります。この一連のソラ様の行動から、推察いたしました」


 推察されてしまっていた。

 俺の行動や思考回路はずいぶん単純らしい。

 ちょっぴり恥ずかしいぞ。


「ソラ様、本気なのですね?」


 ビスケッタさんが真剣な眼差しで俺を見つめてくる。

 だから俺も、同じ眼差しで返事をする。


「はい。本気です」


 するとビスケッタさんはいつもの笑顔になった。


「承知いたしました。ソラ様が本気ならば、私は全力でサポートするだけです」


 そして、手を叩いて名前を呼ぶ。


「セリス、入りなさい」


 呼びかけに応じて部屋に入ってきたのは、ベクタの代官ダグエル・ダリントンの秘書

 つい先日会ったときは怯えて俺と視線を合わせてもくれなかった少女、セリス


 だが今日の彼女は全然印象が違う。

 強い意志を瞳に秘め、憧れにも似た眼差しを送ってくる。

 俺の顔をしっかり見つめ、俺と真正面から向き合おうという意志が伝わってきた。


「せ、セリスでございます。で、殿下のために、ちょ、ちょっとした案を考えてきまして…。ご、ご覧いただけ、ま、ますでしょうか?」


 何度もセリフをかみながら、でも一生懸命話してくれた。

 ようやく声を聞かせてくれた。

 そのことにも感動したが、それ以上に俺のために提案してくれることに感動した。


 同じ元下民が、俺と同じような目的をもって動いてくれる。

 俺の仲間になってくれようとしている。

 そのことに俺は、心の底から感動していた。


 彼女が何をきっかけで思い立ってくれたかはわからない。

 でもとてもとても、嬉しかったんだ。



ソラは少し自信がついて自虐が減りました。

セリス、緊張しまくってますけど頑張ってます。


ワクチンの結果、左手が全く上がらなくなりました。

短いのですがこれは以上は限界でして、キリは悪くないので更新させていただきます。


楽しんでいただけたり続きが気になる方は、ブックマークや評価、感想いただけますと嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ふーむ、思った以上に浮ついてるな。救済対象が突然いなくなったところに新たな救済対象を見つけたこともあって、メサイアコンプレックスに陥ってるやもしれんね……足を掬われなければいいが 副反応ヤ…
[気になる点]  おのれワクチン!  でも打たないと発症時のリスクが…… [一言]  魔法無しでも魔法使いに対抗できる手段があれば……  左腕の魔力が暴走中(曲解)との事ですので、返信は 不要に願…
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