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影40
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「だって、ゴミに捨てられていたんだもん」
「駄目だよ、そんなの拾っちゃ。早く捨てなさい」
「これ本当のことなの?」
「昔のことだよ」
「いつのこと?」
律子が、いつになく執拗に尋ねた。
「なんで答えなきゃならないの」
「いいじゃん、聞いたって」
「どうでもいいことでしょ」
「よくない、よくないよ。不真面目だよ、これ。いったいなんなのさ?」
「なんなのって、事実だよ」
律子はそこに、顔は真面目なのに心で笑っている幻一郎を見た。
「事実?」
「どうして?貴女には関係ないでしょ」
「関係あるよ。私が、じっちゃんのこと好きなの分かってて、わざとそんなこと言うんでしょ。じっちゃんのイジワル。」
律子が、幻一郎の書いている原稿用紙を取り上げると、そのままダンボールが敷いてある畳の上に投げつけた。
原稿が、散らばった。
「何するんだ」
「もう、じっちゃんのことなんか知らない」
律子が、幻一郎のために持ってきたはずの布団や電気ポットや掃除機などを、次々に家に持ち帰った。そして、おにぎりはもう握らなくなった。




