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影35
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そんな折り、律子が仕事の帰り道で、財布を落とすという失態をしてしまった。幻一郎の事ばかり、考えていたのだ。
落としたであろう国分寺の周辺を、何度も往復して探したが、無かった。
不思議なことに、記憶がないのだ。もはや諦めるしかなかった。
気が動転して、二次災害を防ぐため、律子は幻一郎のもとに向かった。
事情を説明すると、幻一郎が、年配者にとっては比較的長い距離であるにもかかわらず、半ば錆び付いた自転車で、財布探しを手伝ってくれた。
もし財布が見つからなかったら、「じっちゃんとは、縁を切ろう。」と、律子は本気でそう思った。




