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影31
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その日は、こんなことがあった。
幻一郎が律子に、煙草代を出さずに、「煙草買って来て」「後で払うから」と言った。「やだよ。」と律子が顔をしかめた。「なんで」と、幻一郎がイライラした表情で聞き返した。
「後で払うって言って、払わない人、今までいっぱい居たから。」
律子が、半べそをかいた。
「いいじゃん」
「ヤダったらヤダ。じっちゃんとは、ちょっとのお金でも、貸し借りする仲にはなりたくないの。」
「分かったよ、もうここに来るな!」
幻一郎が、声を荒げた。
「どうしてそんなこと言うの?」
「いいからもう来るなッ!」
次の日。
幻一郎の家には、いつもはかけられていない筈の、鍵がかかっていた。
…本当はじっちゃんに、もうこれ以上、煙草を吸って欲しくなかったのだ。




