第四十五話 復帰
余談ですが、各クランには特徴がありまして、アルシャインがミラが中心のクラン、第三のクランが王都中心のクラン、コルヴォのアーザが一応インフェルノ中心という勢力図で、各都市の特徴を色濃く反映させています。
アーザ第一部隊の評価は上がっていく。
石頭に続いて、この日はラプトルを数多く倒したからだ。
そのパーティーメンバーはナダ、コルヴォ、アマレロ、ブラミア、マルチーザ、それに下から引き揚げたギフト使いであるルルドだった。以前に一時的なナダとパーティーを組んだ土のギフト使いである。
ルルドを引き上げた理由としては、前衛の冒険者は四人もいてもう足りているから。それならば抜けたガスパロの代わりに遠距離攻撃の出来る物をパーティーへと入れる事になったのだ。
そんな六人は大量のカルヴァオンを持って、地上へと戻ってきた。最近の中では一番多い量なので、アーザの屋敷にいた冒険者達も口々に五人を褒めていた。
「今日は調子がよかったぜ! なんか体が思ったよりも軽かったような気がするぜ!」
ブラミアは他の部隊に所属する冒険者の前で、意気揚々と言った。以前のように彼を馬鹿にする者などいない。
前回の結果などに続いて、ナダ達を他の冒険者達も認め始めているからだ。
「拙者の剣でござるか? 参考にはしないほうがいいでござるよ。形から違うでござるから」
その中には最近入った冒険者であるアマレロも他の冒険者から絡まれていた。特に剣の腕を認められているようだ。
今は屋敷にある庭で、真剣を手に木の棒を見事に斬っている。神速の居合抜きは見世物としても見事な物だった。
「ルルドはどうなの?」
「調子いいし! なんかギフトが冴えているっていうか!」
「土のギフトはもっと強いんだから、ルルドももっと頑張らなくちゃね!」
アーザのほぼ初期からいるルルドは、他のメンバーとも仲がいいので特に同じギフト使いと話すことが多かった。
その中にはマルチーザも混ざっており、ギフト使いとしての意見交換を行う。その中には前衛の評価も含まれていた。近くにいる護衛として誰が頼もしいか、もしくは前衛とギフトでの連携がとりやすいか、など様々だ。もちろん人の相性もあるので、ギフト使いによってその評価は分かれる。
「ナダは組みやすいし! なんか視線で指示を感じるっていうか!」
そんな中、ルルドが評価したのは他の誰でもなく、現在の第一部隊のエースのナダだった。特に足場の地形を変えてモンスターの動きを阻害する土のギフト使いによって、前衛の冒険者との連携は必須である。相性が合う合わないによって、土のギフト使いは自身の評価が上下される事もそう珍しくないのだ。
そんな彼女の言葉に、他のギフト使いの目の色を変える。似たようなギフトは他のギフト使いにもあるからだ。
「マルチーザはその辺りどう思うの?」
「私は……あまり分からない……かな? 息を合わせるようなギフトは私にはあまりないから」
第三部隊のギフト使いの言葉に、マルチーザは曖昧に笑った。
彼女の扱える光のギフトは大きく二つ。武器の光のギフトを付加する『光の武器』と振れればモンスターへダメージを与え動きを阻害する『光の帯』だ。だが、前衛が優秀な第一部隊において後者はあまり使わず、前者が主なマルチーザの仕事だった。
「光のギフトって強いもんね! 付与だけで仕事を果たせるから羨ましいな!」
「……そうだね」
マルチーザはなんとも言えなかった。
氷のギフト使いである第三部隊の彼女には、それ以上返す言葉がなかったからだ。
十二あるギフトの中で、光のギフトはモンスターに対して“特攻”があるかのごとく、よく効く。それは全てのモンスターに対して平等であり、火のギフトや水のギフトにはない特徴だった。もちろん特定のモンスターに対しては火のギフトや水のギフトが効くこともあり、一長一短とも言える。
だから、どんな状況でも安定した効力を誇る光のギフト使いに、小細工は求められていない。
付与によって仲間の攻撃力を上げるだけで十分だと言える。だからマルチーザも着実に、付与だけを鍛えて来たのだ。その途中で、別のギフトも使えるようにしてバリエーションを増やしたとも言える。
「ナダ、お前って、今まで何をしていたんだよ? そんな実力なら、どうして名前が全然知れ渡ってないんだよ!」
一方で、今回の功績のエースであるナダの周りにもアーザの仲間達が集まっていた。
これまではナダの実力を疑っていた者達も、徐々に、徐々に、認め始めたのである。その理由としては、“結果”だった。口で語るのではなく、どんなパーティーメンバーと組んでも安定してカルヴァオンを得られると言う結果に、仲間達は評価を変えて行ったのである。
「……マゴスに潜っていたからな」
「ああ。あの“辺境”か! なら、名前を知らないのも当然だなあ。あそこに潜っている冒険者は、宝玉祭に呼ばれても遠すぎてこないって話だからなー」
ざっくばらんに切った茶髪が特徴的な第四部隊の冒険者が何度も頷きながら言った。
新しく出現した四大迷宮の中で、最も人気のないのが『マゴス』だった。
その理由としては、王都ブルガトリオから最も遠い、というのが理由の一つだろう。
またその環境も特殊であり、冒険の仕方を一から変える必要があるためこれまでのスタイルを守りたい冒険者にとってはあまり好まれない。だから集まっている冒険者は四大迷宮の中で最も少なく、話題にもあまり上がらない迷宮である。
「……確かに変わった環境だったな」
ナダは明後日を向きながら言うが、その心境には別の考えが渦巻いている。
(俺が無名な理由には、マナが関わっているのもあるんだろうな)
思い出すのは、国内でも有名な英雄であるマナだった。かつて王都ブルガトリオで会った冒険者である。
彼女は冒険において自分のサポートをする、とナダは聞いた事があった。その一つが“無名”だと言うことなのだろう、と思っている。
冒険者は有名になればなるほど、柵が増えていく。カルヴァオンのノルマ、貴族達との契約や会合、時には冒険者組合から新人冒険者の指導すら頼まれることもあると言う。それ以外にも多くのしがらみが有名冒険者には待っている。きっとフォカオンはそれら全てをこなした上で、あの地位に立っているのだ。ナダは素直にフォカオンを尊敬した。
だが、四つ全ての迷宮の完全攻略を目指すナダにとって、それらに時間を割いている暇はなかった。
だからマナの計らいは僥倖とも言える。
(とはいえ、“名”が知れ渡っていないことには不便もあるがな――)
ナダはアーザに入った時の評価から一変した仲間達へと目をやった。最初はコルヴォのコネとしか思われていなかったので風当たりも強かったのだが、最近になって覆ってきたようだ。
これまでにも何度か似たような目にも会っているのであまり気にしていないナダだったが、最初は仲間へと力を示すことに時間を割かなければいけないのは少しだけ面倒でもあった。
それでも、“有名”よりマシだろう、とナダは自分を納得させる。
そんな考えを抱いていると、新たな者が部屋に入ってきたことによって仲間達が湧いた。
「帰ってきたよ!」
「待たせたな」
アスとナザレが、クランに戻ってきたのだ。
二人はもう怪我が治ったのか、包帯一つ付けていなかった。どうやら完全回復した様子だった。しっかりと休息もとったおかげか、以前よりも凛々しい顔つきになっていた。
これまでにナダ達に注目していたアーザの冒険者達も、久しぶりに帰ってきた第一部隊のエースとリーダーに群がる。やはり関係性も長いだけあって、二人と親しい冒険者は多かった。
いつも感想ありがとうございます。
アス君復帰です。
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