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磯に香る君のそばに海神  作者: 悠鬼由宇
第1章
35/434

第一楽章 Grande Sonate pathetique Op.35


「へええ。駅から恵比須まで歩いてきたん? それもあの格好でぇ? 馬鹿? アホ? きゃははは」


 京は悠人の話が進むにつれ笑いが止まらなくなる。


「何狙いぃ? 天然?」


 悠人は顔を顰め否定するも


「で? そんで?」


「……で、港を出てあの岩場まで来てさ、それからずっと海を眺めてたんだよ。日が沈んできたので帰ろうとしてさ、あとちょっとのとこで足を滑らして」


「そっかぁ。あと二十分遅かったらぁ、顔まで水に浸かってたよん。ギリギリだったねえ」


「ホント、感謝しているよ。ありがとう」


「それもういいから」


「ところで京ちゃん、家の人は? おじいさんがいるんだっけ?」


 悠人は着させられた作務衣を弄りながら京に尋ねる。すると京は急に暗い顔になり、


「いない」



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