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八咫の鴉  作者: 蓬莱さん
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14話 中等部はチュートリアルから・続々/エネミー編



《《 そこのひと そこのひと 》》


俺はその声が頭に響いて聞こえているのに、辺りを見回して声の出所を探す


チリリリーン


今度はその声と同時に鈴の音が鳴る


!神器から?

そういえば、雪椿の時もこんな感じだったか、今よりも聞き取りにくかったけど


《《 あなたから 同胞の残滓を感じる 》》


同胞??


《《 あなたは覚醒者? 同胞が解放されたのね 》》


覚醒者??


《《 覚醒者 どのこが解放されたの 》》


どのこ?何を言ってるんだ?


《《 覚醒者 あなたが解放した子のこと そのこ 会話をしなければ 覚醒者 教え... 》》


その先を聴く前に、声は聞こえなくなってしまった。すると、三条さんが藤霞をケースの中へしまっていた。まるで、電波の悪いラジオで一方的に聞かされてるようで、頭の中で響いている感覚。一瞬で船酔いに一瞬でそれが収まる。とても妙な感覚だった。雪椿の時も似たような感じだったけど、何か違う。

これは、あれだな… んー... よし! このことも聞かなかったことにしよう。


ん?鈴が鳴った?しかし、俺は気づかなかったことにして切り替えることにした



「神器は非常に強力な力をもっている。が、使いこなせなければ宝の持ち腐れとなる。それは通常の疑似神器も同じ事が言える。使い手の技量と相性、適切な調整と管理、状況に応じた選択、それら相乗効果が上手くかみ合い力を発揮すれば神器にも劣らない性能を顕現できる。そのことを肝に銘じ、互いのクラスを尊重試合チーム一丸で取り組む事に努めよ。それでは一旦ここまで。これから、私はラボへ行くのでカリキュラムは他の講師にお願いしている。任務中でもないのに、長い時間この神器を持ち出しておくわけにはいかんのでな。では、解散」


その日の午後は、疑似神器の仕組みや作成過程についての講義が中心で、常に隣でウィザード志望の優弥がここぞとばかりに色々と説明をしてくれたが、俺には全くちんぷんかんぷんな内容で優弥にはわるいが相槌を打って頷く事しかできなかった。努力家で博識なのはよくわかった。ウィザードとしてもかなり優秀なのだろう、これで近接もそれなりにこなせるのだから、将来有望株なのは確定だな。高等科に上がれば各部隊からのスカウトも解禁になるから引く手あまたかもしれない。

ま、俺には関係ないことだけど。


今日一日、非常に頭から湯気が出る内容だった。あの声のことは…。んー、雪椿のことなんだろうか、何か伝えたかったことでもあるのか....。ま、考えても仕方ない。やったぱりなかったことにしよう。

頭を使いすぎたので、部屋ではタブレットも開かず床についた。


気づいたら翌朝になっていた。今日の講義まで時間がない。慌ててシャワーを浴びてタオルで拭いていると、ノックとともに優弥が扉の向こうから声をかけていた。俺は慌てて着替えをし、部屋を出て優弥に感謝をし、二人で共に急いで講義室へ向かう。


何とか間に合ってたんだけど、入ってきた三条が俺のボサボサな頭を見て、挨拶の前に身だしなみを注意された。最近は目まぐるしく環境や状況も変わり、慣れない学園生活の中もういっぱいいっぱいで、身だしなみなんて、と思ったけど。元々身だしなみに興味のない俺には無縁だったな。


「さて、本日は我々ヤタガラスの主任務について改めて説明する。瘴気の発生源は様々で、発生源の可能性がある場所の管理と調査。そして瘴気の浄化が主な任務ではある。が、その瘴気の影響で様々な野生生物や植物、残存思念が残った屍等の魍魎化。最悪な事例で生きた人間が魍魎化することがある。魍魎化は瘴気が核を形成、又は物体の核化をすることで変異する現象であり、こうなると並みのヤタガラスでは対処が難しくなり、ランクの高い部隊でも非常に危険である。それらに対処する為に疑似神器が必要となり、濃い瘴気エリアでは羽織の着装が必須となる。ヤタガラスの人的被害はこの魍魎化した集団である魑魅魍魎が殆どの原因だ。この被害を最小限に抑える為のランクでありクエスト管理、そしてこの育成機関である。さらに災害級としてネストの出現。ここ近年では、その存在は殆どないが、衛星からの監視の結果複数の地点でネスト化の傾向があり、逐次対処している。このネストは植物系が魍魎化し瘴気を纏った大量の胞子が次から次へと周辺を魍魎化していき、その中に侵入した生物をも魍魎化して濃密で巨大な瘴気エリアを形成することがある。こうなる前に管理と調査をし事前に浄化してネスト化を防ぐ。これが君たちが最初に受けるクエストとなるだろう。しかし、いったんネスト化してしまった魍魎域では、黒羽織以上のヤタガラスでなければ灰羽織程度では侵入すらできず体は一瞬で腐敗していく。軍の防護服や宇宙服は全く役に立たん」



俺は思い起こす。榊さん達が遭遇したのは魍魎化した獣の集団だったんだな、あんなのが町に現れたらとんでもないことになるな。雪椿のおかげだな。


三条が話を続ける


「ネストと同じか、それ以上に危険なのが禍津鬼だ。魍魎化した狂暴な個体が同じく魍魎化した他の個体や生物を大量に捕食吸収しながら瘴気をまき散らし、被害を拡大させる。これも災害級の危険度だ。これに関しては、戦闘能力の高いAクラス以上の部隊にしか対処の許可を出さない。Bクラス以下では損害率が一気に跳ね上がるからだ。人的被害は組織を弱体化させる。魍魎化や禍津鬼化など、危険度の変化は元々の生物の個体能力によって変化するのは皆もわかっていると思うが、核の強さによっても依存する。その辺りは未だに謎が多く、数値だけでは測れないのだと思う。諸君らにはそういった状況でも諦めず生き残る術をしっかりと身に着けてもらいたい。この位なら大丈夫だと判断することが最も危険で、自分たちの力量をしっかりと見定めて、常に最悪の事態を想定して行動することを心掛ける様に。ダメだと思ったら潔く退却する。いいか、何度も言うが、臆病でちょうどいい。そして絶対に侮るな」



みんな、いつにも増して神妙に聞いている。周りにもそういった経験をしている者達からも聞いているんだろう、特に優弥は厳しい顔をしていた。先日、姉が実際に経験していて、それを聞いているからだろう。俺も榊さんの姿を目にしているから、他人事の様には思えない。

あれは、ランクオーバー。CランクやDクラスがいきなりあんな状況になれば生きて帰ることすら難しい。ま、俺は臆病だからそんな危険なことには首は突っ込みたくない。でも...、何故かあの時は体が勝手に動いてしまったな。そういえば、昔爺さんからも、似たような事を何度も何度も聞かされてたのを思い出した。『死んだら終わりだ!逃げる事は決して恥ではない。生きていてこそ次がある』だったな。

なんだろうな...、ここの話を聞いていると爺さんに教わったことが色々と蘇ってくる。


この後、過去の画像や映像を見させられた。かなりの惨状のものもあり、気分が悪くなる生徒もいた。

そして、三条は何事かあったのか、慌てて出ていき、戻ってはこなかった。

窓の外を見ると、学園に常駐しているヘリが飛んでいくのが見えた。何かあったのかもしれない。


午後からは代わりの講師が、実査に修練棟で魍魎化した獣等の生物との立ち回りのレクチャーをした。

しかし、この中でいざ実戦になった時どれだけ動けるのか。

そう思いながら見ていると、同じことを考えていた生徒が講師に質問をしていた。

その為の、クエスト管理であり、部隊制であると。新人でも熟達した者達と行動することで経験を積んでいき。実戦に向かないと判断された者は容赦なくデスクワークや各省庁への配置になるそうだ。それも、人的被害を抑える為のものなのだそうだ。


そんな講義も何故か今日は全く身に入らなかった。昨日のあの神器からの言葉が気になるのか、榊さんや他の隊員が気になるのか、正直わからなかった。

ただ、何故か朝から耳鳴りが収まらず、収まったのは寮に戻る頃だった。




◇◆◇◆◇◆



時は少しだけ遡る・・・


《 内閣特務調査管理局・副局長室 》


管理局の中は騒然としていた。皆慌ただしく動き回っている。


『咲宮耶さま!異常重力振の場所が特定出来ました。場所は・・・やはり本能寺跡です!!』


小日向が叫ぶ。


『みんな!そのまま聞いて!予測より少し早いですが。打ち合わせ通りの行動。各省庁にも、各々通達。総理にはあなたから報告して。そして学園にも連絡を。直接、清音にも向かわせて。私は奥の院へ報告した後、すぐに現地へ向かいます。解っていると思いますが。一刻を争います。連絡は各自蜜に。以上』


咲宮耶は落ち着いた言葉を使っていたが顔には極度な緊張が伺える。



( やはり本当のだったのね... )



咲宮耶は呼吸を整える。一番下の引き出しを開けると、そこには昔の古い黒電話が一つだけ入っている。受話器を上げると、掌に汗が滲んでるのを感じる。


「私です。はい。始まりました」







・・・次回『本能寺・跡』

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