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ライトノベルじゃあるまいし  作者: ASK
第ニ章【ゴブリン・パトリダ】
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第31話 2つの機械が示唆する人は

こんにちは、本日も読みに来て下さり、感謝千万至極光栄!


濃い味に慣れた現代っ子だからでしょうか、僕は醤油せんべい以外のおせんべいがあまり好きではありません。

そしてこの情報の価値はセーターの毛玉にも及びません、本編どうぞ!


 ただいま、自由落下中。


 ピズマの提案で、『自警本局』の巨大な中央螺旋階段のど真ん中を、一気に飛び降りることになった俺とアグノス。


 3人で、暗くて全く見えない最下層に向かって落ちていく。


 時々聞こえるうめき声や、「ここから出せぇっ!」という怒号にビビりながら、内臓の浮き上がるような、股間がスースーするような独特の感覚を味わいながらひたすら落下する。


 全身を覆うのは、黄緑色の光。


 それは飛び降りると同時に、ピズマが俺たちに使った回復神法で、この神法がかかってる間は、計算できない速さで回復という名の“完全な身体の生成”が行われている。


 そのため、このまま、落ちた先にある地面に叩きつけられようとも、全身が潰れ、骨が砕けて血液が散らかると同時に、健康診断で医師が微笑むほどの完全健康完璧な身体が蘇る。


 折れるのと同時に治るから腕折っていい?って聞かれたらすげぇ嫌だし、治るから怪我してもいいとは思わないけれど。一応、安心だ。


 そして。


 ──ダグチュッ。


 衝突音と液体の音が混じった音と共に俺は肉片と化して硬い地面に散らばりつつ、元気な体で着地に成功した。


 何言ってるかわからなくても構わない。俺も意味わからんから。



 あたりは真っ暗だ。何も見えない。



「なぁピズマ、いるか?」



 まず、ピズマに話しかけた。声が響いた気がした。



「ええ、ラン様も無事でよかったです、アグノスも大丈夫か?」


「僕はもちろん大丈夫さ。全然怖くなかったし、うん」



 お互いの生存確認が終わり、とりあえず目先の問題点を提示する。



「……で、何も見えないけど、どうする?ピズマにまた回復神法かけてもらって、体を光らせて進むか?」


「いえ、ラン様。ここで神力を使い過ぎると、アマルティア様を救出した後、パトリダに帰る際にほとんど神法を行使できない、なんてことになりかねません」



 この中で唯一、回復神法を使えるピズマを余計に消費させるわけにはいかない、か。



「つっても、俺らの手元にあって光るものって言ったら、この“石”くらいしか……」



 ポケットから青く光る石を取り出す。


 それは無論、レプトスから貰った、“アマルティアが近くにいると反応して光る石”なわけだが……。



「あれ、これってこんなに光ってたっけ?」


「暗闇の中だから、余計に光って見えるんじゃない?」


「いいやアグノス、そんなレベルじゃない。……こんなに明るいなら、これを使ってどうにか進めそうだな」


「アマルティア様に近づけば近づくほど輝きが増す、と言ったところでしょうか」


「それっぽいな」



 ピズマの推測が大方合ってるだろう。


 それにしても。


 石をポケットから取り出した途端、3人の顔が見えるくらいに明るくなった。思ってた以上にこの石は凄い石らしい。


 でも、手に持って移動するには、良くても足元までしか明るくできない。


 例えるなら、豆電球くらいの光なのだが、これではこの先何が待ち構えているのかを、早々に判断しかねる。



「……これをさ、長〜い紐に繋いで、進みたい方向に投げるってのはどうだ?」



 閃いたので提案する。



「まぁ、咄嗟に思いついたにしてはいいアイデアだけど、ランくん。何で紐に繋ぐんだい?」



 デクシアは尋ねる。



「いやさ、もし、ポイッと石を投げた先が、落とし穴というか、地面が無かったりしたら、石を手元に取り戻す術がなくなるじゃん。とりあえず紐に繋いどけば、石が穴に落ちても引っ張ればいいだけだし」


「この建物に落とし穴があるとは思えませんが、そうですね、無いと決めつけて進むには危険すぎる。ラン様の案に乗りましょう」



 ピズマの賛成を得る。アグノスも頷いた。


 その後、紐も無ければ、石とどうやって繋げばいいかわからなくて混乱した俺だった。


 が、ピズマの回復神法は、物質の生成だと、北の海岸で聞いたのを思い出す。


 ピズマの物質生成の能力で、小さな円柱状の棒を、石の中心に作り出す。


 そして、ピズマの神法で作られたその棒を、ピズマからの神力の供給を絶って、消滅させる。


 するとその棒の形の穴が石に開く。


 そこにまた、ピズマの物質生成能力で、やたらと長い紐を作り出し、その穴に通す。


 これで完成!



「アイデアの勝利だな。よし、さっそくいく……ぞっ!」



 強めた語尾と共に、前方に向かって石を投げる。


 床、天井、壁を照らしながら、石が宙を進む。


 するとすぐに。


 ──カツーン。


 作り出した紐の長さの半分も使わない距離で、石は扉らしき行き止まりにぶつかった。


 アイデアをひねり出してそれが実現して喜んではいたが、そこまでやる必要もなく、ただ数メートル進めば扉があった、というのは、恥ずかしいというか、何とも複雑な気持ちである。


 3人ともクスクス笑いながら、小走りで石の転がる扉の下へ向かう。


 石を拾い上げて、扉に目線を向ける。


 頑強そうな鉄の扉。高さは目算3メートルと言ったところか。大きい上に、重そうだ。開ける時大変そうだな。


 さて、どうしたもんか。



「そうだ、ピズマ、この扉と同じ大きさの何かを、ここに生成して、そんでそれをまた消して、扉ごとここに大きな穴開けてくれねぇ?」


「妙案ですが、ラン様。龍皇りゅうおうとの戦い、そしてその後の北の海岸での乱戦、加えてここに来る前の大勢の人間たちとの追いかけっこで、体力、神力共に残り少ないのです。回復神法もあと何回使えるか、と言ったところでして」



 あちゃー。連戦過ぎたか。


 と、頭を抱えていると。



「じゃあ僕が“斬れ”ばいいよね?」



 ドヤ顔のアグノスが、漆黒の長剣を鞘から抜きつつ、一歩前に出た。


 何だか気にくわないが、いいだろう。GOサインを出す。



「よし、やったれ」


「……ふっ!」



 刹那。目にも止まらぬ速さで空を切った漆黒の刃は、鉄と鋼の摩擦音さえ立てずに、鉄の扉を一刀両断した。


 が、しかし。



「アグノスさ、綺麗に斬りすぎて、扉は真っ二つだけど、開いてねぇじゃん」


「お、押せば倒れますよ……!」



 顔を赤らめたアグノスがヤケクソ気味に、切れ目の入った扉を蹴る。


 重い鉄の扉は、ゆっくりと倒れ、そして光が視界を覆う。



「うぎゃっ!眩しい!」



 手で顔を覆う。待ち望んだはずの照明も、急に現れると目に悪い。


 慣れてきた目をパチパチさせつつ、床に倒れた鉄の扉を踏んで、明るい空間に出る。



「ここは……何だ?宝物庫、とでも言ったところか?」



 宝物庫、という表現は、合っているようで、的はずれのようにも思える。


 俺たちが足を踏み入れたのは、上のフロアまであるのではないかと疑うほどに高い天井。


 そして、大きさは学校の校庭ほどもあるだろうか、恐ろしく広い部屋だった。


 その広い部屋の中に、所狭しと立ち並ぶのは、宝物や武器、鎧。何かを入れた箱の数々。


 見渡す限り、色んなものがある。そしてそのどれもが高級そうなオーラを放っている。



「あ、あれ!」



 嬉々とした声をあげたアグノスが指を指す。俺とピズマはそっちを見やる。



「……あれは、『神殺し』じゃないですか!?」


「珍しいなピズマ。目を輝かせて、どうした」


「あれです、あの大剣!あれは紛れもなく、加護神ベータの加護を受けず、神気を一切纏わない、世界有数の物体、『神殺し』です!」



 興奮するピズマ。まぁ確かに、この世界中でも、未だ10個も見つかっていない代物だ、テンションが上がるのも頷ける。


 あれがこの世界で唯一、デクシアの最強の防御系神法、“アスピダ”に対抗できうる物、か。


 こんなところに置いておくにはもったいない気もするが、使い道がそもそもないのだろう。


 立ち並ぶ、豪華絢爛な武器や鎧の数々に、男心が豪快にくすぐられる。


 しかし目的は宝探しではなく、アマルティアの救出。


 探索もそこそこに、俺たちは違う部屋への行き道を探す。


 どうやらここにアマルティアはいないようだ。



 ──数分後。



「おい、ここ、通れるぞ。この先は……一応続いてるみたいだ」


「でも、ランくん。この大きさじゃ、さすがに……」



 俺とアグノスはピズマを見上げる。


 俺が見つけた通り道は、俺ですら、すこし頭を下げないと通れない高さの道だ。身長が2メートルを超えるピズマには、通るには無理がある。


 そんな空気を読んだのか、ピズマは死んだ目で笑う。



「……2人で行ってください。私はここで、お宝探しでもしてますから……」


「落ち込みすぎだピズマ……まぁ、とりあえず行ってくるわ……って、え?」



 ピズマに別れを告げて、いざ行かんとした、その時。


 その狭い通路の入り口付近の地面を踏んだ刹那、ガコっと。その部分の床が少し沈んだ。


 嫌な予感がして、振り返ると。


 ──ゴゴゴゴゴ………!



 宝の山の奥から、巨大な影が動き始めた。


 そしてやがて姿を現したそれは、天井ギリギリの高さに頭を構えた、1体の巨大なゴーレムだった。



「明らかにやべぇやつじゃん!!プチっと握りつぶされて死んじゃうやつじゃん!!」



 嫌な汗が全身からふきでる。


 が、しかし。ピズマは急に表情に生気を取り戻し、目を輝かせて言った。



「ここは私にお任せをっ!2人は先に!」



 仕事ができたことが嬉しいのだろう。ニートの対極の精神だな。


 俺たちは微妙な表情で、少し屈みながら狭い通路を歩いていく。


 背後から、ドゴーンとかバギャーンとかやばい音と、ピズマの笑い声が聞こえるが、全てを無視して先に進んだ。




❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎




 蛇行を繰り返す通路を進む。


 やがて、行き止まりに当たったが、よく見るとその壁は扉になっていた。



「とりあえずこの狭い道は終わりそうだな」



 そろそろ体勢がキツかったので、ありがたい。


 俺は扉を押す。


 開き始めた扉の隙間から涼しい風が吹き込んできた。


 服を風に揺らされながら、扉を押し続ける。そして、扉は完全に開いた。


 抜けた先は、普通の部屋。


 机と椅子。本棚にゴミ箱。


 机の上には大量の書類とペン。


 あたかも、先ほどまで誰かが居たかのような散らかり具合に、緊張が走る。


 部屋の奥に扉は、すでに開いていた。


 俺はアグノスと顔を見合わせて、無言で頷く。


 部屋を横切って、開いた扉を通って先に進んだ。


 そこにあったのは、どうにも自警軍の関係者じゃないと開きそうにもない白い扉。


 扉だらけだな、と思いつつ、その扉の中央にある、“手形”に、右手を添えてみる。


 が、しかし扉は何も反応せず、開く気配すらない。



「まぁ、とりあえず、斬りますか」


「そうだね」



 もうセキュリティとか関係ない。アグノスに斬らせればいいし。


 アグノスは再び、扉を斬り倒した。


 その先に広がっていたのは。



「……こ、これは……!」



 先ほどの宝物庫らしき部屋ほどではないが、かなり広い空間の中央に、大きな橋が架けられている。


 その橋を挟むように、両隣には、見覚えのある円柱状の機械が、天井近くまでそびえ立っていた。

 

橋の下は深い暗闇で、この先にもとてつもない深さの地下空間があることがうかがえた。


 しかし、そんなことよりも。何よりも。



「この機械は……家にあった……あの……!」



 そう。この、橋を挟むように立つ2つの巨大な機械は、前回の異世界、ラブコメの世界において、この俺が妹の瑞樹みずきとともに住んでいた家の、誰もいない一階と二階の部屋をまるまる使って置かれていた、あの機械と同じではないか。


 以前、その部屋を覗き見した際、瑞樹はその機械に触れて、何らかの操作、作業をしていた。


 そしてその瑞樹は、俺が現実世界で不登校に追いやってしまった立花たちばなミズキで、立花ミズキは、あの異世界の鍵を握る唯一の人間だった。


 俺が過ごした異世界のゲームマスターとも言うべき立場にあった立花ミズキが、こっそりといじっていた機械が、2つもここにはある。


 ましてや、“このフロアの全権管理者”か、人間種族の上層部の一部の人間しか立ち入ることのできないこんな場所に隠されているなんて、怪しいにもほどがある。


 この機械が、この異世界において、大きな役割を果たしているのだとすれば、もしかしたら、ここには──



「立花が……いるのか……?」



 何かとてつもなく大きな真実に、一歩近づいたような感覚。


 それと同時に、自分の置かれた状況が、思っていたよりも多くの謎に包まれていたことに今更気がついた。



「──ん!──くん!」



 立ち尽くす俺の鼓膜に、声が届いた。



「ランくん!何ぼーっとしてるんだ!……それどころではないんだ!」


「ど、どうしたアグノ……!」



 どうしたアグノス。そう言いかけたその時。


 俺はやっと橋の上に立つ1人の人間の存在に気がついた。


 視界の両端を埋め尽くす機械にばかり気を取られていたらしい。こんな大切なものを見落としていたなんて。



「──紀伊(きい)……ちゃん……?」



 橋の中央。剣を片手に立っていたのは、紛れも無い、金髪の剣士。


 俺たちが最下層フロアに降りる直前、中央螺旋階段にあった警軍本局の案内図に書かれていた名前の持ち主。


──『最下層:Xエリア/全権管理者:あかつき隊隊長 桜坂さくらざか紀伊』



「──やぁ、少しぶりだね、アグノス」



 桜坂紀伊が、そこにいた。



「ランくん、君は先にアマルティアくんの救出に向かってくれ。僕は彼女とつけなきゃいけないケジメがあるんだ」



 アグノスはそう言って漆黒の長剣を構えた。



「……へぇ、その子が、ランくんって子?」



 しかし紀伊ちゃんはそんなアグノスを無視して、俺を見る。



「き、紀伊ちゃん……!」



 うまく声が出なかったが、何とか名前を呼んだ。


 しかし。



「ごめんね、ゴブリンのランくん。その呼び方で私を呼んでいい男の子は、この世でただ1人なんだ。……この世でって言っても、前の世界と違うから、どっちが本当の“この世”なのかはわからないけどね」



 紀伊ちゃんは悲しそうに笑ってそう言った。



「いつまでそんなこと言ってる、紀伊。その男はお前が5年探しても見つからなかったのだろう!」



 アグノスの言葉に俺は目を剥く。


 ──5年?どういうことだ。


 それじゃあまるで、少なくとも紀伊ちゃんは5年間、この世界にいた、みたいな言い方じゃないか。


 確かに、あの剣の腕は、数日で習得できるとは思っていないが、まさか紀伊ちゃんがこの世界に来て少なくとも5年は経過していたなんて……。


 混乱が混乱を呼ぶ。渦巻く思考回路。焼き切れそうな神経。頭が熱い、鼻血が出そうだ。


 唾を飲み、舌で唇を湿らせる。


 確信する。


 今の俺には、分かることとできることが少なすぎる。


 ここで紀伊ちゃんと何らかの接触を試みたところで、今の俺には何も成し得ないのだと、そう思える。


 俺は拳を握りしめ、床を蹴り出し、橋を走り渡る。


 紀伊ちゃんは──ただ前を見ていた。


 目は合わなかった。



「見つからないっていうのは、探すのをやめる理由にはならないよ、アグノス」



 紀伊ちゃんは返答しつつ、手を剣に添えた。


 紀伊ちゃんの横を通り過ぎる。背後から、刃を鞘から抜き出す音が聞こえた。


 俺はただ足を回して、橋を渡りきり、正面の扉を蹴り倒した。


 鋼のぶつかり合う音が、背後で鳴り響く。


 俺は、すぐ近くで命のやり取りをする紀伊ちゃんを振り返ることなく、蹴り倒された扉の向こうに足を進めた。


──今、俺はどんな表情かおしてるかな……?



ありがとうございました!!


皆さんお忘れかもしれませんが……大きな機械、蘭と瑞樹の家にもありました。でも今話、登場した同じ形の機械は、ラブコメ世界の自宅にあったものよりもはるかに大きかったりします。

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